第59話 ハロウィン③
イベント三日目の早朝、指定した時間通りに病ゲーにログインし、クラチャを流せばティタとシロが起きていた。二人共今日のために早起きしたらしく、洞窟への移動中やたらと眠いと零していた。
昨日使った大部屋の続き部屋に着き、ディティクションを打ち上げ中の様子を確認する。
はやりこの時間は人が少ないおかげか、今日も同じ部屋を陣取ることができた。
バフを入れ、ティタに引きを任せ私とシロはその後をついて中へと進んでいく。
この二人ならば、かなり私も楽ができるはず……だった。仮装の大樹が現れるまでは――。
狩りをはじめて5時間が経過した頃、突然モブを処理したばかりの大部屋に枯れ木のオブジェクトが現れる。その名前が仮装の大樹だった。
[[ティタ] なんだあれ、とりあえず引く?]
[[白聖] いいねぇ~。ボスかな?]
[[大次郎先生] 何? 何か湧いたの?]
[[黒龍] ボスならいくそ?]
[[キヨシ] ぼすだーーー]
[[ティタ] 仮装の大樹っていう、デカイ木にプレゼントの箱がついたやつが湧いた]
[[宮様] 見たい]
[[さゆたん] あたくちも]
[[宗乃助] ボスなら行きたいでござるよ]
クラチャにボスかもと言う報告が入れば、食いつくのが当然だ。
狩場放棄で皆が集まるのをモブを引きながら待つこと、15分全員が集まりバフをかけ直した。
[[黒龍] うんじゃまー。引いてくるわー]
[[大次郎先生] アレ動くのか?]
[[宮様] エントみたいに、足が動くんじゃないのー?]
[[キヨシ] まぁー全員で囲めばいいだろー?]
[[ティタ] うん。キヨシの意見に賛成]
[[ren]
[[さゆたん] キヨシがまともでしゅ!]
[[宗乃助] 楽しみでござるな]
[[白聖] うんじゃー。俺もren
シロが私を見つつニヤっと笑う。
どうやら、私と同じ考えに至ったらしかった。
モブの処理と言う普段なら面倒なことを自分からやると言った理由……それは、皆がボスを囲み倒すまでに
ボスを倒す時間獲得できないはずの、イベント専用アイテムを
張り切ってシロと二人、モブを釣りにいく。
黒たちが攻撃をはじめればそちらに、ウィンド ボールを投げ込む予定だ。
もう片方からモブが流れないように、両方を釣るといい訳しつつ狩りを続行する。
先生の指示で、黒が位置につくと攻撃がはじまった。
モブの処理を終え、私とシロも遠距離攻撃で1回ずつボスにダメージを与える。
[[大次郎先生] 宮もなんかしらダメージ入れて]
[[宮様] k]
攻撃を与え終われば、黒たちのいる方のモブを引きに走る。
そうして、交互にモブを引き倒すこと4回「ギギャアアア」と、仮装の大樹が断末魔の悲鳴をあげる。
大きなクラッカーのような音がなり、色とりどりの紙吹雪や、色テープが天井から降り注ぐエフェクトがあがる。
【 仮装の大樹 が討伐されました。 】
【 黄金の種 20個を獲得しました。】
【 黄金のお菓子の箱 2個を獲得しました。 】
【 仮装の大樹 を討伐した効果によりこれより24時間
※ 一部スキルの仕様が制限されます。
※ 仮装中特殊スキルを使用することが出来るようになりました。 】
仮装の大樹は、厄介なデバフをばら撒き。その命を枯らした――。
[[黒龍] ふざけんなー!]
[[宮様] イヤアアアア]
[[さゆたん] 終わったでしゅ]
[[ティタ] あー。武器もてねー]
[[大次郎先生] ……罠だ。運営の罠]
[[キヨシ] うおぉぉ。足おせー]
[[宗乃助] まさか、こんな所に罠を仕掛けるとは……ちょっと切腹してくるでござるよ]
その後流れたクラチャで、黒がキレ。宮ネェが絶叫し、さゆたんとティタがガックリと肩を落とす。
キヨシが喜び、先生が運営の罠だと気付く……宗乃助は誇りを傷付けられたらしく、切腹すると言いはじめた。
皆を見る限りどうやらダメージに応じて、相応の仮装が割り当てられているらしく。
ティタが、フランケン。
先生が、ジャックオーランタン。
キヨシ、宗乃助がミイラ。
黒が、黒猫。
さゆたんが、お化け。
宮ネェが魔女。
ダメージ量が一番少なかったらしい私とシロは、蝙蝠の羽が背中に生えただけだった。
[[白聖] これはヤバイな]
[[ren] ウン]
記念にと皆の仮装SSを、撮影していればシロが、阿鼻叫喚のメンバーを見つめ。
唇を噛み締め、鼻をヒクヒクさせている。
必死に笑ってしまいそうになるのを、堪えているのだろうと思いつつ、クラチャで棒読み同意をしておいた。
シロと私以外誰も使いものにならず、全員で狩りをすることになった。
狩り中どうせならと変身したメンバーに、固有スキルを使ってもらい検証してみる。
・フランケン――怪力。一体のモンスターへ、怪力パンチを繰り出す。
・ミイラ――包帯。一体のモンスターへ。包帯を巻きつけ動きを阻害する。
・ジャックオーランタン――投攻。一体のモンスターへ、カボチャを投げつけ攻撃する。
・黒猫――引っ掻き。範囲内最大五体までのモンスターを、爪で引っ掻き攻撃する。
・お化け――念動力。範囲内全てに有効。念動力で、10秒間だけ拘束し動けなくする。
・魔女――変化。一体のモンスターを、お菓子に変える。
・蝙蝠――超音波。範囲内全てに有効。音波を飛ばし、5秒間だけ混乱させる。
正直、使えるスキルがあるのは、私とシロ、さゆたんぐらいで他はゴミと言っていいレベルのスキルだった。
何故こんなスキルにしたのか?
今回のイベントは、これまでのイベントよりもドロップ率が高いことなどを鑑みて、その効率を落とす狙いがあるのかもしれない。流石、病ゲーと言うべきなのだろう。
それでも、運営の方向性が理解できるかと言われれば、全く理解できないと思ってしまう。
その後5時間ほど、狩りをしたところで魔石が底を尽く。
黒猫になり移動速度だけは上がった黒が、街へ戻り魔石と矢の補充をしてくれた。
そんなこんなで、三日目も終わりに差し掛かる。
いつもなら、四日目あたりなのだがいくらぐらいになっているかを確認するため、落ちる前に取引所を開く。刀の項目を見た私は、その場に崩れ落ちた。
なんと……50Mまで値下がりしている。
「……まじか……」
流石に落ちすぎじゃないの?
安くなったおかげで強化し易くなるし、300Mは早まった自分のせいだと割り切ったつもりになるも、やっぱりムカつくものはムカつく!
腹いせに売りに出ていた、オニキリ十五本 オニマルクニツナ十二本を全て購入して留意を下げようと試みる。
が、下がるわけも無く倉庫に入っていた、アスクレピオスが視界に入る。
宮ネェに頼まれ集めていたが……アスクレピオス10本を消滅するまで強化しようと思い立つ。
早速、別キャラへ移動する。倉庫からアスクレピオスを全て取り出し、両手杖用の強化の石を持つと強化をはじめた。
一本目―― +4から5で消失。
二本目―― +1から2で消失。
三本目―― +7から8で消失。
四本目―― +11まで成功。
五本目―― +1にすらならず消失。
六本目―― +2から3で消失。
七本目―― +6から7で消失。
八本目―― +9から10で消失。
九本目―― +10まで成功。
十本目―― +1にすらならず消失。
+10と+11になった、アスクレピオスを交互に強化する。
まずは、+11の方から……失敗。
次は、+10……成功。続けて強化すれば、キヨシに渡してある+19を超え+20まで育った。
これを売れば、初日に出した1.9G差額を回収することができるのと考え、強化を中断する。
倉庫へ出来たばかりの杖を預け、メインキャラへとキャラチェンする。
早速、欲しいと言っていた宮ネェにこれを売りつけることにした。
[[ティタ] なぁ。これ残り時間ログインするなって意味かな?]
[[ren] 宮ネェ]
[[宗乃助] 街歩くだけでもストレスを感じるでござるよ]
[[宮様] どうしたの?]
[[さゆたん] あたくち、移動する度吐き気が……]
[[キヨシ] ふよふよしてるもんな~]
[[ren] +20 アスクレピオス いる?]
[[黒龍] 移動に関しては文句ねーけど、装備全部剥がれてる……]
[[ティタ] 何その1G越えの高額商品]
[[宮様] 買う! 残りは借金でよろ~]
[[ren] k 倉庫]
[[白聖] ……クソ。GMに愛されやがって……]
[[大次郎先生] なんでそうも成功するんだろうね~?]
[[キヨシ] なんでだぁぁぁ! 俺なんて……俺なんて……TT]
[[黒龍] renはGMの回しモンだと思うことにするわ]
初日に使ったお金のこと知らないメンバーから、クラチャで散々
宮ネェと倉庫でトレードすれば、前金として400Mが渡された。
イベントが終わるまでにできれば、各百ずつは欲しいところだ。
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