第58話 ハロウイン②

 バフを貰いに来ると言っていたメンバーが、その後どういう風に話し合ったのかを知らない私の元へ、第一陣と思われる、黒、ティタ、さゆたんの三人が部屋を訪れる。


[[黒龍] すげー狩り方してんなー]

[[さゆたん] renちゃんと狩りした方が、絶対種多いでしゅよ]

[[ティタ] あれだけのモブ引いて、POT無しなのか……]

[[ren] バフ。PT]

[[黒龍] あり]

[[さゆたん] ありでしゅ]

[[ティタ] さんきゅー]


 モブの処理中に来た三人が、それぞれクラチャで感想を陳べてくれているが……褒めてないよね?

 処理が終わり、PTへ加わると同時に三人へバフを入れた。

 バフの代金代わりなのか、30本の高級MPPOTがトレードで渡される。


[[ren] あり]

[[ティタ] ren。補給の時は呼んで。その間狩場維持しとく]

[[ren] 三時間後ぐらいになる]

[[ティタ] k]


 補給の心配をしていたところにティタから維持の申し出を受け、感謝しつつPTを抜ける。

 モブの湧きを確認して引きにいけばそれに合わせて、黒たちもこのchで部屋を探すつもりなのか入り口から出て行った。

 

 次に訪れたのは、シロ、宮ネェ、宗乃助の三人だった。

 クラチャで話しを聞けば、三人が狩場を離れる間、黒たちがその狩場を押さえる事になっていたらしい。モブの処理が終わり、PTに入るとバフ入れる。


[[白聖] うまそうだ……]

[[宗乃助] まことに……]

[[宮様] この火力が、私たちにもあれば……]

[[ren] ティタ、宗乃助がPT交代すればいいのに]

[[宮様] あぁ、確かに!!]

[[宗乃助] 盲点でござった!]

[[ティタ] まぁ、とりあえず戻ったら交代するか~] 

[[キヨシ] うはは~]

[[大次郎先生] キヨシィィ]


 PTを抜けモブを引きに行きまとめて処理をはじめれば、涎を拭くかのような仕草した三人からの羨望の眼差しを向けられた。


 引き役が居ないシロたちのPTと黒たちのPTを見て、ポロっと交代すればいいのにと告げれば、盲点だったらしい……いや、普通に気づくよね? と言いたいのをグッと堪えつつ、三人を見送りMPPOTをがぶ飲みしてMPを回復した。

 キヨシと先生については、絡むと面倒なことになりそうなので放置する。


 一日目の狩り時間は、計15時間……社蓄より働いた気分で、収穫した種を確認した。

 ・劣化した種 1973

 ・普通の種 821

 ・黄金の種 268

 ・劣化したお菓子の箱 110

 ・普通のお菓子の箱 35

 ・黄金のお菓子の箱 7

 と言う結果だった。


 最初にとったのが大部屋だったこともあり、なかなかの成果となった。

 早速、開けるメンバーも入れば最終日に纏めて開けるメンバーもいる。私はどちらかと言えば最終日にまとめて開ける。


 落ちる前に取引所を覗き、オニキリとオニマルクニツナの売りが無いかを確認すれば、オニキリが二本、オニマルクニツナが四本売りに出ていた。


 一本300Mの売りに衝動買いしそうになる手が止まり、どうするか……考え込んでしまう。

 どのゲームでも同じ傾向にあるのだが、初日から三日あたりまでは、真新しいこともあり諸々が非常に高額設定で売られる傾向にある。


 四日目辺りでその値段が下がるか、上がるかが判るのだ。

 今回はどうしても欲しい武器であり、強化することを考えれば何本あっても問題は無い。

 計六本購入し、総額1.9Gの支払いを済ませ、倉庫へと武器を預けハローウィンイベント初日が終了した。


 ログアウトすると同時に、リアルで生きる為に必要なことを済ませ、目覚まし時計をAM4時にセットしてその日は眠りについた。

 寝て直に目覚ましがなった気がして、虚ろなまま目覚ましを止めた。顔を洗い、食事と水分補給にトイレを済ませれば、早速病ゲーへログインした。

 

 街中では、このイベント専用の魔女、カボチャ、フランケン、蝙蝠の羽を着けたメイド服など様々なコスプレをしたプレイヤーが見受けられた。

 収集癖のある私も後で、材料を調べようと思い遠目にそれを眺めた。 


[[ren] ノ]


 誰も居ないだろうと思いつつも ”挨拶は大事なコミュニケーションだ!” そうゲームの中で、元クラメンに言われたため流してみれば……。


[[キヨシ] おはっ]

[[ゼン] おはようございます]

[[キヨシ] ren。イベント一緒にいこうぜー!]

[[ren] 眠くないの?]

[[キヨシ] 大丈夫。おれまだ余裕でいける]

[[ゼン] キヨシ君、寝落ちだけは気をつけてね]

[[ren] そう]


 面倒なのが起きていた……嫌な予感をヒシヒシと感じクラチャを見れば、見事に予感が的中している。

 挨拶はコミュニケーション……コミュニ……ケン坊めっ。

 心の中で元クラメンに毒を吐き、無言で通せばよかったと激しく後悔した。


「はぁ~」


 溜息を吐き出し、気持ちを切り替え了承すれば、ゼンさんもラチされたのか、キヨシに引きづられるような体勢で連れられ姿を見せた。

 PTを組み、NPCに話しかけランダムでプレイヤーの少ないchへと移動する。


 キヨシに、ゼンさんを守るよう伝え、洞窟の中へと進み大部屋二つの続き部屋にたどり着いた。

 ディティクションを打ち上げ、部屋の使用者がいないことを確認して、装備を変更するとバフをかけた。


[[ren] 棒立ちで]

[[キヨシ] え?]

[[ゼン] え?]

[[ren] 狩るの私。キヨシとゼンさんは見てて]

[[キヨシ] マジ?]

[[ren] y]


 キヨシの火力が私より高く、タゲを固定できる職がいないためそう言うしかなかった。

 顔を引き攣らせる二人を置いて先に中へと入り、部屋の中を端から端へ走り回り、モブを引きつれ部屋と部屋の間に陣取る。


 設置型魔法バインド(+18)、フレイム サークル(+20)、ホーリーフレイムレイズ(+20)を設置し、モブの到着を待つと発動させる。

 そのまま、ドラゴン オブ ブレスを2回入れたところで、キヨシがサンダー ストームを叩き込んだ。


 タゲの取れていない、フランケンとゾンビがキヨシへと流れ右往左往すれば、もう一つの大部屋から新たなモブが寄って来てしまった。


[[キヨシ] ぎゃぁぁぁぁ。hhhhh]

[[ren] モブいない方に逃げて]

[[キヨシ] わかっつーあ]


 シネと思いながらも見捨てるわけにはいかず……走り回るキヨシにタゲを移したモブに、ドラゴン オブ ブレスを何度も発動し処理を終わらせた。


[[ren] キヨシ]

[[キヨシ] 悪い……いけるかと思ってww]

[[ren] サンダー ストームは、効果範囲広いから、設置型の方にして]

[[キヨシ] わかった。タイミングは?]

[[ren] ブレス2発目でいい]

[[キヨシ] kk]


 大量に減ってしまったMPをPOTをがぶ飲みすることで回復して、中途半端に残る隣の部屋のモブを引く。二度目の引きでは、学習したらしいキヨシの働きもあり、すんなりと狩り終る。


 そうして交互に狩りをすること3時間、眠気が限界に達したらしいゼンさんが、落ちると言い残し帰還した。

 キヨシと二人で狩りを3時間が経過する頃、ログインしたメンバーたちが次々クラチャで挨拶を交わす。


[[黒龍] おは]

[[大次郎先生] おー。黒おはよ]

[[キヨシ] 黒おはー]

[[ティタ] ノ]

[[宮様] おは]

[[ren] ノ]

[[宗乃助] おはでござるよ]

[[さゆたん] おはでしゅ~]

[[黒龍] ren。暇?]

[[ティタ] 狩場どうかな?]

[[キヨシ] 続き部屋でrenに寄生中だぜぇ~!]

[[ren] ?]

[[黒龍] ……キヨシ。シネ]

[[キヨシ] 黒……来ればいいじゃん]

[[黒龍] いいの?]

[[キヨシ] いいぜ~。さっきまでゼンいたし。な~ren]


 存在を消したはずの私へ、キヨシが良い笑顔を向けてくる。

 イベント中は不在だと言ったはずなのに……。

 仕方なく、黒へPTを飛ばせば秒で了承し、即座にPTチャットで補充分を聞いてきた。


 黒とキヨシならば、殲滅速度があがるだろうと考え、気持ちを切り替える。バフに必要な魔石を2500個頼み黒の到着を待つ間も、休まず狩りを続けた。

 黒が合流すると、狩り速度があがりキヨシと二人の時よりも、MP的に楽になったのを実感した。


 20分置きにバフを貰いに来るクラメンたちに配り、その日落ちるまで黒、キヨシ、私の三人で狩りをこなした。

 明日の準備を行い、落ちる直前ティタから密談が届く。


”ティタ” 明日俺らねー!

”ren” ??


”ティタ” 何時?

”ren” ……は?


”ティタ” シロと俺の番!

”ren” 番? 日替わり?


”ティタ” y で、何時?

”ren” 4時半ぐらい


”ティタ” 了解。シロにも伝えとく~。


 意味が判らず聞き返せば、どうやらいつの間にやら、クラメン同時の話し合いの末。

 順番制で一緒に狩りに行くことになっていたらしい。

 明日は、シロとティタが一緒にいくとが決まった瞬間だった。

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