第56話 最強は撲滅を齎す〆

 あの後どうなったかは言わずもかな……的な状態だった。

 クラメンとGMの青木さん以外全員が死体となり、そのまま残像を残しログアウトしていった。

 GMの青木さんは、激しく動揺しつつ【 わっ、私……むっ、無敵で良かったです。 】と言い残し消えて行った。


[[大次郎先生] 帰るか]


 先生の言葉に他のメンバーが頷き、帰還の護符を使う。

 最後に、ディティクションを打ち上げ私も帰還の護符を使った。宿屋へ帰る前にポータルで、拾った装備を預かり倉庫へと向う。


[[ゼン] こんにちわ~]

[[ヒガキ] こん。ゼン]

[[大次郎先生] ノ]

[[ren] ノ]

[[黒龍] ノ]

[[キヨシ] よぉ~]

[[白聖] ノ]

[[†元親†] よっす~。しかし、あの魔法すげーなぁー!]

[[宗乃助] こんでござるよ]

[[宮様] こんにちわ]

[[さゆたん] こんでしゅ。もうrenちゃんバフって思っちゃだめでしゅ]

[[ティタ] ノ GMですらびびってたぞwww]

[[ヒガキ] GM?]

[[ゼン] GM見たんですか?]

[[大次郎先生] うーん。なんと言えばいいかな……]


 そうして先生がことの顛末を全てチャットで流せば、ゼンさんとヒガキさんが無言となりクラメンからは何度も溜息を吐かれた。


 いい訳をさせて貰えるのならば、私はこう言いたい。

『あの場ではカリエンテ召還が一番全員を殺すのに最善だった』と――。


 どうせ、誰にも理解されることはないだろうが、私の中で運営の判断よりもあの場でグランドロールに対して、殺すことの方が優先だったのだから仕方ない。

 

 そうひとり脳内でいい訳をしつつ、クラン倉庫に皆から預かった装備を突っ込めば、いつの間にやらク

ラン倉庫内にお金が入っていた。


 誰が購入したのだろうか? と思いクラチャで確認すれば、さゆたんがドロップ品のローブを先生から売ってもらったらしい。値段的に、通常価格な気もするが、さゆたんが納得しているようなのでそこは何も言わず、そっとしておいた。


 そう言えば、コンビニ行くんだったと思い出し宿屋へ戻り、そのまましばしログアウトすることを伝え、現実へ戻った。

 財布を持ち、コートを羽織って……ふと、机の上に充電したまま放置されたスマホが点滅しているのに気づき誰かを確認してみれば、兄からのメッセージが届いていた。


 内容は、PK邪魔してゴメンね。だけだった。

 運営のせいで邪魔された腹いせに、課金アイテムを要求するむねのメッセージを送り、そのままコンビニへと向った。




 20分ほどして戻リ、食べたかったエビの奴を手に取り開封して、口へ含みつつ、公式掲示板を覗き込めばそこには、騒然と並ぶグランドロールのクラメンたち謝罪文。


「ぶほっ……」


 その余の多さに、つい口に含んだはずのエビのお菓子がディスプレイへと飛び出した。

 いやいや……幾らなんでも多すぎでしょ? 何この多さ……カリエンテはやりすぎたのだろうか?

 不安になりつつ、ディスプレイを拭きその内容を読んでいけば、明らかに前者の文を真似して張り付けただけと思える文章が並んでいる。 


「これじゃぁ、だめだよね? ていうかこの程度で許すと思ってるのがおかしい」


 ブツブツ独り言で愚痴を零しつつ、公式掲示板の画像を取り謝罪文と名をつけたフォルダーに入れ込み、ギアへと送る。

 開けたばかりのお菓子の袋を近くにあったクリップで挟み、皆に知らせようとギアを被りゲームへと戻った。


 一瞬の浮遊感を感じ、瞼を開けば宿屋の天井が視界に映る。

 クラチャで戻った旨を伝え、さっそく掲載されていた謝罪文をゲーム内で皆へメールで送った。


[[宮様] 何これ、コピー?]

[[宗乃助] ペーストでござるな]

[[黒龍] ありえねー]

[[大次郎先生] 根本的に、最後まで居た奴を謝罪文だけで許すはずないだろw]

[[ティタ] うわー。ありえねー]

[[キヨシ] 流石頭悪いやつらだぜww]

[[さゆたん] 無いでしゅね]

[[ren] これが20個ぐらい載ってた]

[[白聖] 名前変えただけじゃねーかw]

[[†元親†] やっちまおうぜぇ~!]


 チカはほっといて、やはり皆もこれでは納得できないと言う判断をくだしたようだった。

 先生が言うとおり、初回のみ仕方なく参加したけど……とかならまだ、謝罪文掲載のみで許せるし、理解もできる。


 だが、ほんの一時間ほど前まで、自分たちから攻撃を仕掛けるPKをしておいて……不利になったら、謝罪文を掲載し許してもらおうなど、甘いといわざるを得ない。

 それに、今更なのだ、とうに許せる範囲を超えている相手を、文章を複製し名前だけを変え、掲載した謝罪文ごときで許せるはずもない。


[[黒龍] 全チャで名指しするしかねーな。これ]

[[大次郎先生] 20人も? 考えるだけで時間の無駄でしょ]

[[宮様] じゃぁ、どうするの?]

[[白聖] 無言で殺せばよくね?]

[[さゆたん] シロの案でいいと思うでしゅ]

[[ren] 無効って全チャする]

[[大次郎先生] わかった。もしむちゃくちゃ言ってくるようならこっちに回して]

[[ren] k]


 黒の言うとおり全員名指しするのが一番効果的なのだろうが、ぶっちゃけそこまでやってやる義理も無い。お節介にそれをしたとして、じゃぁどうすればいいの? と言われたところで、別に……としか答えられない。


 私たちの目的は、あくまで喧嘩をふっかけられたから、PKでやり返すだけである。極論を言ってしまえば、それを楽しむことが目的なのだが……。

 そんな訳で、とりあえず猛獣でのPK後に行った、善悪の塔以降に掲載された謝罪については無効だと全チャで宣言する。


{[黎明の君主] お暇な方は是非、猛獣へ参りましょう~!

       PTM募集中~}

{[歴代最強魔王] きけー! 俺は最強だーwwwww}

{[ren] 元グランドロールのメンバーに告ぐ。

    宣戦布告後善悪60FでのPK以降

    公式に掲載された謝罪文に関して

    我々はそれを認めない。

    よって以降もPKされる覚悟をしておけ}

{[イム] お前が最強なら、このゲーム最強しかいない。草}

{[ニーニャ] おぉぉ! まじですかっ!?

      謝罪文却下キター!}

{[グランゼス] 横暴すぎだろ。ren}

{[黒龍] まじまじ、公式にのったやつ見てみろ

    全部複製だぞwww}

{[ティタ] あっ、ゼス相変らず弱いの?}

{[ドリアンナ] それはあんまりです}

{[ヒュージュル] 謝り損じゃないか!}

{[白聖] いや、お前ら考え方おかしくね? 

     不正ツール使ってまで、うちのマスター

    殺そうとしたのにコピーして

    名前変えただけの謝罪文で誰が許すの?}

{[黒龍] つーか、ゼスお前は永久PK対象だからな?}

{[†元親†] うおぉぉぉ。ゼスじゃん!

     相変らず効率厨してっかー?}

{[ニーニャ] え? 不正ツール??}

{[大次郎先生] シロ、それ言っちゃだめなやつ!}

{[キヨシ] 神の目使ったんだよ。グランドロール}

{[月下] それは、マスターたちが勝手に使っただけで

    私たちは知らなかった}

{[大次郎先生] キヨシー!}

{[白聖] とにかく、あの謝罪文で許されると思うな。

    逃がすつもりねーよ?}

{[ニーニャ] まじかよ……神の目はあかんで~}


 全チャで全部語ってしまったクラメンをジト目で見つめる、宮ネェと先生、宗乃助の視線を逃れるようシロ、キヨシがスゥーと残像を残して消えた。


 未だに全チャは盛り上がっているが、許さないと宣言したからには今後も、個人個人を狙ってPKしていくことが決定した。


 数日後、グランドロールに対するクラン戦? は、すっきりしないまま、公式の発表によりアクセル以下神の目を使用したメンバーの永久アカウント凍結、以降二年間はアカウントの取得禁止と言うオチで終了した。


 同じ日、PKを中断したため兄に集ったたかったはずの謝罪の意味をこめた課金アイテム要求に対する答えがゲーム内のメールで届いていた。


 この度は――から始る文章の一番したに、今回のお詫びといたしまして体力回復ポーション5と魔力回復ポーション5を送らせていただきますと書いてあった……その他には一切何もない……。


 マジ、シネ(怒 そうリアルでメッセージを送った、私の気持ちをきっと同じ内容のメールを受け取ったクラメンも感じたことだろう……。

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