第30話 最強は撲滅を目指す⑤

 クラン戦開始まで、残り4時間を切った。宿屋の部屋へとたどり着き、さっそく黒歴史を語ってもらう。


[[黒龍] んじゃま、ティタ逝ってこい]

[[宮様] 楽しみにしてるわ~ん]

[[宗乃助] 死地へ赴く戦友を見送る気分でござる]

[[大次郎先生] ティタ。凄いの期待してるから]

[[さゆたん] 楽しみでしゅね]

[[ティタ] くそっ]


 皆ニヤニヤ顔がニヤついてますよ? て言うか、宗乃助に至っては敬礼しつつ、顔は笑ってるから……私も人のこと言えないけど……。


{[ティタ] 黒歴史=中学の時、仲良かった女子が居て……話も合ったし

      ラインとかもしてて正直、絶対俺の事好きだろうって思って

告白した}

{[ウルトラ万] どなたか血盟に入りませんか~?}

{[ティタ] そしたら、返事ラインでいいかな? って言われて

      うんつってさ。その日の夜彼女からラインが届いて}

{[ニーヤ] それで? 凄い気になる!}

{[ティタ] ごめん。本当はティタじゃなくて、ティタの親友の雄介君が

      好きなの。協力して?って言われて、親友と彼女が付き合う

      まで協力した}


[[宮様] 黒歴史と言うより、悲恋ね……]

[[白聖] それ、黒歴史じゃない]

[[さゆたん] どんまい。ティタ]

[[黒龍] お前、黒歴史の意味分ってるか? 

     誰にも知られたくない過去の話しをするんだぞ?]

[[ティタ] こう言うのじゃないの?]

[[大次郎先生] まぁ、違うかな]


 黒歴史の意味を履き違えたティタの悲しい過去が明らかになった。

 お通夜の様な宿屋の一室で、皆が視線を泳がせている。

 そんな中全チャではティタの悲恋を共に嘆いてくれるプレイヤーたちが、励ましの声をあげている……カオスだ。


[[ren] 次]

[[黒龍] そうだな! 次シロ行け]

[[白聖] はぁ。軽いよな……]


 溜息を漏らし、恨めしそうな顔で黒を見つめたシロに、黒はニヤニヤと嫌な笑いを返していた。


{[まなぶ] 俺も似たような経験あるから、ティタ生きろ!}

{[白聖] 黒歴史2番手行きます。学生の頃テスト中時間余って暇で

     解答用紙の裏にボンキュボンのメイドを書いた。

     いつもなら、ちゃんと終わる前に消すんだけど}

{[美祢] ティタさん元気出してください}

{[ニーヤ] ぉ? 新しい黒歴史!}

{[白聖] その日、書くのに集中しててチャイムがなって消さずに

     集められたんだ……。

     テストが帰って来て、裏に書いたメイドの絵に先生が}

{[ジェイド] 痛い。それは痛い!}

{[白聖] 惜しい。先生は程よい大きさが好みです。夢を持つことは大切

ですが勉強の方を頑張りましょう。ってコメントつきで

     三角マーク+1点って書かれてた}


[[さゆたん] やばいでしゅ]

[[ティタ] 草]

[[キヨシ] うけるww]

[[宗乃助] それはまことでござるか?]

[[白聖] マジダゾ。その1点のおかげで赤点免れたけどなw]


 凄くノリの良い先生だったんだろうな……。てか、赤点はまずいよ?

 声出して笑ってる黒、ティタ、先生、キヨシと同じように、ティタに向けられていたコメントが草に変わっている。そこそこうけが良かったようだ。


[[ren] 次]

[[ゼン] はい。と言ってもキヨシ君は知ってるけど……]

[[キヨシ] おぉ~。あれ話すの?]

[[ゼン] どれかわかんないけど、軽いのにする]


 何を話すんだろう? て言うか……そんなにいっぱいあるの? 

 緊張した様子を見せるゼンさんに、心の中でそう突っ込んだ。


{[はるきよ] ヤバイ腹痛いわww}

{[ゼン] 黒歴史3番目行きます。僕が始めて告白した時の話です。

     大学に入って一目惚れして、告白したらOK貰えて}

{[マヒル] っ 正露丸}

{[ニーヤ] それで?}

{[ゼン] 浮かれてたんだと思う。5回目のデートでキスして胸触った瞬間

     ワンピースの裾から、何かがボロボロって落ちて……。良くみたら

     パットで……実は男なんだって言われました……}


[[ren] うわー]

[[黒龍] まじ?]

[[キヨシ] まじだぞ。俺そいつ知ってるもん]

[[ティタ] 俺より酷い]

[[白聖] 初ちゅー?]

[[ゼン] はい……。はじめてでしたね……]

[[宮様] 可愛そうに!]


 痛い、どこが痛いって心が痛い。可愛そうするぎる……。

 ゼンさんの悲壮な黒歴史に全員が、彼の肩を叩き慰めた。全チャも草から、うわーとかにコメントが変わり、余計に悲壮感を漂わせる。


[[キヨシ] それでも半年は付き合ってたけどな!]

[[黒龍] まじで?]

[[ゼン] はい。その……別れたいって言い出せなくて……]

[[大次郎先生] なむ~]

[[さゆたん] 食われたんでしゅか?]

[[ゼン] 秘密です]

[[白聖] そこで秘密とかマジやめて!]

[[ゼン] ふふ……]

[[宗乃助] ちょっと神社探すでござるよ]

[[キヨシ] でも、マジ美人だった~。男の娘でも付き合えるのはうらやましぃ~]

[[宗乃助] キヨシが壊れたでござるよ]

[[大次郎先生] それでも男なんでしょ?]

[[白聖] マジ? そこまで美人だったの?]

[[ティタ] そこまでなの? 見たい!]


 キヨシの一言から、半年付き合っていたという事実が分り、さゆたんの余計な一言で想像してしまったらしい、ティタ、先生、宮ネェ、宗乃助、ヒガキさんがブルっと震えたのも束の間、美人だったことがわかると、シロとティタが食いついた。

 流れを変えようと、ヒガキさんが自ら死地へと向う宣言をクラチャで流し、旅立って行った。


{[ニーヤ] それは悲惨すぎる……}

{[ヒガキ] 黒歴史四番目出撃します。小学1年の頃一人で寝ていたら、

      とても怖い夢を見て両親の部屋に向ったんです}

{[カオスマン] ゼン生きろよ!}

{[ヒガキ] そしたら、奇声をあげる母に父が裸で四つんばいになって

      ケツを叩かれていたんです}

{[クズ] まじでー見ちゃったの!}

{[ヒガキ] 次の日の朝食の時、両親にそのことを聞いたら父が飲みかけの

      コーヒーを噴出し、母は手に持ったパックを落としました}

{[ヒガキ] 慌てた父が、コーヒーを拭きながら俺にこう言いました。

      昨日の私たちの姿は悪魔を払う儀式をしていただけだよ……と}


「ぶほっ」

「ぎゃははは」

「やべぇ~!」


 クラチャを使うのを忘れて、爆笑する黒、シロ、キヨシ。他のメンバーも肩を揺らして笑っている。

 酷い、慌てたからって……悪魔を払う儀式とか……笑える。

 

[[大次郎先生] 最高ですwww]

[[さゆたん] 面白いでしゅww]

[[宮様] ご両親素敵な方ねwww]

[[黒龍] はぁー。腹いてーw]

[[ティタ] 正露丸?]

[[白聖] 久しぶりに酸欠になったわ!]

[[キヨシ] やべ~。最高だぁ~]


 ひとしきり、笑い終わったのかクラチャで絶賛の声を上げるメンバー。

 全チャを見ればそちらも盛り上がっているようだ。

 おおとりを勤めるキヨシへと促すためクラチャで伝えた。


[[ren] ラスト]

[[黒龍] その腹痛じゃねーよ]

[[キヨシ] おう!]

[[白聖] いやー、面白かった]


{[銀善] 父親最強だな! 草生えるわw}

{[キヨシ] ラストいくぜー。つっても黒歴史じゃないんだけど……笑える話だ}

{[ミナ姫] 悪魔を払う儀式……ぷぷぷぷっ}

{[キヨシ] 1ヵ月前の話だ。俺上司が廊下ですれ違いざま、更に上の

      上司に頭下げたんだよ。俺も一緒に頭下げてその人見たら}

{[ニーヤ] 悪魔……笑}

{[キヨシ] その人が被ってた帽子を上に上げて会釈したんだよね。

      そしたらさ、帽子にヅラがくっ付いてあがちゃって

      ハゲが丸見えの状態になったんだ}

{[しゅうえい] ハゲかー}

{[キヨシ] 上司は顔色変えないから知ってたんだなって俺笑うの我慢してさ

      エレベーター乗った瞬間、上司がエレベーターのボタン押して

      階数下がるの見ながら}

{[キヨシ] ヅラかぁ~。って感慨深く言ったんだよね。それ聞いて俺もう

      我慢できなくて、爆笑しちゃったって話。どう?}


 空気が重い……。

 笑える事は笑えるけど、黒歴史じゃないし? キヨシだし……。

 全チャも、冷え切っているのかコメントが帰ってこない。

 唯一あったのが、悪魔……である。


[[大次郎先生] やり直し]

[[キヨシ] えー! 面白くない?]

[[宮様] 面白いけど、自分のことじゃないしね?]

[[黒龍] 却下]

[[さゆたん] つまんでしゅ]


 冷えた視線を送るメンバーに、キヨシは渋々もう1度やり直すことにしたようだ。

 そうこうしている内に、残り2:23となっていた。

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