第25話 最強はクランのLv上げを目論む⑦

 スキル一閃を使用した攻撃で、3人を屠ってほふってしまった私は直にキヨシとさゆたんが狙うPTへと移動しようと動いた。だが、連盟の中に表示されたキヨシ、さゆたん、宮ネェのMPバーの減りが予想以上に早い。

 これでは、私たちが始末を終える前に、黒がキングに押し負ける可能性がある。


[[ren] マナチャいくよ。範囲注意]


 クラチャで、マナ チャージ(+5)――全員の平均MPが40%以下の場合のみ使用可能な魔法で、使えばMPを80%回復させることができる。ただし、適用範囲は狭い。三次職のバッファー職のみが覚えられる魔法で、ディレイ時間180分を必要とする――を使うことを宣言する。


 全員が、効果範囲内に入ったのを確認する。

 即座にマジック オブ スピリット(+25)をかけ直し、マナ チャージ(+5)を発動させた。

 その後、MP回復を認めた黒、宮ネェ、シロ、先生は側を離れ、キヨシ、さゆたん、ティタ、宗乃助、私の5人で、既にメイジが死んだ主力以外のPTを殲滅させていく。

 

 色彩豊かな魔法エフェクトが、飛び交い乱れ反映されていく。まるで、ライブの会場のようなその状況の中で、ティタから次に狙うターゲットの指示がクラチャを通して飛ぶ。


[[ティタ] 次、護衛について弓、アルセオ]


 ティタが、クラメンだけにしか見えないマーカー――クランLv3、部隊長に選任されてはじめて使えるようになる集合場所などを示す印のこと――を使いターゲットを指し示す。

 そのマーカー目掛けて、ブレス オブ アローを詠唱し打ち込めば、キヨシが、アイス ランス、さゆたんが、ダイアモンド ダストをターゲットへと叩き込む。


 間髪おかずに、ティタが正面から切りかかり、宗乃助が隙をついて後方から短剣で攻撃する。

 ティタを狙い、魔法を打ち込もうとするメイジに、サイレンス(+25)を入れ、設置型魔法、バインド(+18)を設置する。


 さゆたんとキヨシを狙い、相手のアタッカーが切り込んでいく。


[[宗乃助] シロ]


 その刹那、宗乃助がシロの名前をクラチャで呼び、反応した白の弓が唸り、二人を狙ったアタッカーへと、矢の雨を降らせた。そこへ、ニッコリ笑ったさゆたんが、サンダーストームをお見舞いすると、キヨシが楽しそうに、アイス ランスを迫ったプレイヤーへと叩き込んだ。

 既に、かなりのダメージを追っていたらしい、プレイヤーはその場に倒れ臥し灰色へと変わった。

  

 ティタと宗乃助の相手をしていた、アルセオもさゆたんたちを見ている間に灰色へと変わっていた。


[[ティタ] 次これ ぐらんじぇいる]


 両手剣を持つ、筋肉ダルマな犬獣人だ。

 マーカーが付き、ティタが剣で打ち合いをはじめ、宗乃助が援護するよう上手く足や手を狙いクリティカルを発動させ、部位硬直させる。それを狙ったようにさゆたんがアイス ランスを打ち込みダメージを与えていく。


 ついでとばかりに、バインド(+25)を発動させる。

 これで、ほぼ全てのプレイヤーは動けないはずだ。

 

 自身のバフを見れば、既に10分以上が経過していたらしく更新時間が近い。

 個別のバフにいたっては、ヘイストⅡ、アブソール以外が切れている。

 こういった乱戦では良くある事だが、バフとしては管理できていなかったことが非常に悔しい!!


 ティタ、宗乃助、さゆたん、キヨシの間に陣取りPTバフ、個別バフを更新する。その後、黒、先生、シロ、宮ネェにも同じように更新する。


[[黒] 宮]

[[宮様] バリアいくわよ~]

[[先生] 範囲くるぞ]


 更新が終わり、離れようとしたところで、黒の言葉を合図に、宮ネェがバリアを発動させた。

 その刹那、先生が注意喚起を言い終える前に、キングが両足を何度も打ち鳴らし、強烈な範囲攻撃アース クエイク――ボスの魔法は、プレイヤーの攻撃の三~五倍相当の威力があるためバリアが必須となる――を発動させた。

 

 宮ネェのバリアがある私たち以外のプレイヤーの8割がその攻撃を受けると同時に倒れ灰色へと変化する。

 

 生き残ったプレイヤーも、戦意喪失したかのようにその場にへたり込んんだ。

 その中に、昼間殺しそこなったドッセイが、ジリジリと下がるように壁際へ寄っていく姿が見えた。

 

 漸く、善悪の塔でのバフォメットを擦り付けられた借りを返せる。どうやって、なぶり殺してやろうか……。奴が死ぬ瞬間を想像するだけで、ただそれだけ楽しい。

 舌で唇を舐め、確実に一歩一歩彼へと近付く。


 残り、10メールと言うところで、ドッセイと視線が交差する。すると奴は、ドサリとその場にへたり込み、必死に四肢を動かし後へ下がろうとしている。

 そんな奴に対し、確認するよう声をかけてやる。


「善悪の塔での貸し、覚えてるよね?」


「……っ!!」


「あはっ。やっと思い出してくれたんだねぇ~」


 残り3メートルの距離になり、杖を取り出しドッセイに、自身が使える。ウェポン ブレイク(+20)、アーマー ブレイク(+25)、サイレンス(+25)をかけてやる。

 奴の頭上に、三つのデバフのエフェクトが浮かぶと弾けた。


 これで、デバフは完了っと……。


 残り2メートル、必死に両手を前に突き出し、手を振り口をパクパクと魚のように動かしたかと思えば。


「わっ、悪かった!! あの時は、行き成りバフォメットが湧いて、PTメンバー逃がすために引いて走っただけなんだ、あんたに押し付けるつもりは無かったんだ!!」


「だから?」


 今更謝るぐらいなら、最初からしなければいいことだ。

 もしこれが、二次職のプレイヤーだったら? お前はその分の経験値を、失ったアイテムを補填するのか? そう言ってやりたい……。


「謝ってんだろ!!」


「逆切れ……。カッコワル」


 ぷっと吹き出し笑ってやる。

 自身にファイアー ウェポン(+25)をかけ、杖から刀に持ち替えゆっくりと鞘から刀身引き抜く。


「さっさと得物抜きなよ。タイマンで殺してあげる」


「くそっ!」


 悪態をつき、剣を構えるドッセイにを見つめる。


「うぉぉぉらぁぁぁぁ!!」


 奴が雄たけびをあげ、動く。

 右手の刀でいなし、左手の刀でその肩から胸にかけ一撃を入れる。

 弾かれた衝撃でふらつく奴に、追撃をしかけるため、一撃を入れた左手の刀でその腹を切り裂く。

 この程度で、倒れこむドッセイに飛び乗りその身体を押さえ込む。


「消えろ」


 右手の刀をその胸へと突き刺すと同時に、精錬でついたサンダー ボルトを打ち込んだ。

 青い光を帯びた、雷が奴の刀を通し奴の身体に落ちる。

 何度か痙攣するように、身体を震わせ灰色になり ドッセイは残像を残しつつ消えた。


[[ティタ] ren。満足したならこっち手伝って!]


 まるで、私の思考をようだかのようにティタのクラチャが入る。

 もう少し、浸らせて欲しかった……。


「チッ」


 つい、舌打してしまうも、直に気持ちを切り替えオークキングの処理に追われる、クラメンの元へと移動する。

 オークキングのHPは既に三割を切っている。

 これならば、次のアースクエイクのタイミングが来る前に、処理できるだろう。

 

 黒、ティタ、先生、宗乃助、シロにウィンド ウェポン(+25)を追加し、さゆたん、宮ネェ、キヨシに、マジック オブ アブソール(+25)を追加する。

 その後、ヘイストⅡ(+25)、アースシールド(+25)を追加で全員にかけ、最後にキヨシ、さゆたんに、エレメンタル アップ(+15)をかけバフの更新を終えた。


 次にオークキングに、アーマー ブレイク(+25)のデバフをかけるも、やはり入りにくい。

 しつこくかけること、7回目で漸くオークキングの頭上に、エフェクトが浮かび、弾ける。

 そこからは、早かった。クラメン全員でたこ殴りし、5分ほどでオークキングが雄たけびをあげ、倒れると黄色い粒子となり消えて行った。


 事後処理を終え、オークの洞窟を出たところでPTを解散すると、皆それぞれ帰還していく。もちろん、キヨシに貸した装備は、その場で脱いで返してもらった。


 やっと、殺せたことに満足を覚えつつ、クランクエストを進行させるため、NPCの元へと戻る。

 ボビーへ近付き、話しかけ【 ボビーの母の形見 鼈甲の髪飾り 】を渡してやれば、クエスト完了の合図と共に【 ヘスティア 】のシスターの元に向うよう、注意事項で表示される。


 帰還の護符を使い【 ヘスティア 】へ戻り、シスターを訪ねれば、たいそうな感謝の言葉と共に【 約束の証Ⅴ 】を獲得できた。

 

 街中にあるポータルに移動して【 ヘラ 】の大神殿へと向い、変態イケメンに話しかける。

 ウィンドウから、クランのLvをあげるを選択しタップした。


【 おめでとうございます。Bloodthirsty Fairy クランのLvが5上がりました。 】

【 新しいクランスキルを覚えることができるようになりました。 】

【 クラン間、戦争が可能となりました。以降、戦争を行うことができます。 】

【 攻城戦への参加が可能となりました。以降、攻城戦を行うことができます。 】

【 同盟主の資格を得ました。以降、クラン間で同盟を組むことが可能となります。 】


 無事クランのLvあげも終わったところで、本日はログアウトすることにした。

 PK開始まで残り15:44――。

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