第14章 カリスマ

ある日、若い女性のカリスマの様な存在の女性有名人が妊娠を発表した。


マスコミは華やかで喜ばしいニュースだとばかり騒ぎ立てたがそれは思いもよらない方へ向かって行く。


彼女は会見を開きこう言った、


「結婚相手は居ません。私は未婚を選択しました。お腹の中にいるベビーは匿名の精子バンクを利用して、人工的に受精しました。あと3ヶ月が待ち遠しいです。」


激しいフラッシュとともに記者達が一斉に手を挙げる。


「匿名の精子バンクを利用したのは何故ですか?」


彼女は美しい笑顔で答える。


「結婚に対してポジィティブに思えなかったからです。でも子供は産みたかったので、その選択をしました。」


他の記者がすぐに手をあげる。


「なぜ結婚に対して良いイメージが無いのですか?」


彼女は眉を上げると、


「皆んなスグに離婚するじゃないですか。私の両親もそうでした。

結婚は苗字を変えたり、誰かと生活するのも気を使う。別居婚をしてたら記事に何かと書かれそうだし…。

とにかく色々面倒くさいから、私には向いてないと思って。」


カメラのフラッシュが焚かれる。


「それは愛する人とでもですか?」


彼女は少し首を傾けて、


「その人をずっと好きで愛し続けて居られる自信がありません。いずれ同士のような関係になってお互いが尊重できる間柄になっても、相手の家族の事までは分かりません…。

私は8歳の時からこのお仕事をさせてもらって、恋愛はほとんどして来ませんでした。私の年齢を考えた時に、今から相手を探して、アプローチをかけて色んな努力をして結婚出来たとしても、妊娠までには更に時間もかかってしまう。

ちょっと良いなって思う人が居ても、スグに世間にバレてしまって先に進めませんでしたから、もう疲れてしまって…。

でも子供だけはどうしても産みたいって思ったから。かわいい子供とならこの先の人生をずっと一緒に過ごせそうなので。」


「匿名の精子バンクを利用する事に不安などありませんでしたか?」


「出産に不安は付き物ですし、私は他のお母さん達と何も変わらないと思います。」


「戸籍の父親の欄が空欄になりますが、その事を将来お子さんにどう話されますか?」


「子供が自分のルーツに付いて疑問に思った時に、その時その時、時間をかけて話します。戸籍に空欄がある事は、子供に対する愛情も空っぽ、という訳では無いと思うので。」


「子育てをしていく中で父親の存在が必要だと思う事も出て来ると思いますが、どうされますか?」


「今の時代は、国がたくさん助けてくれますから、上手に利用して楽しく子育て出来たら良いです。」


彼女の発言は年配者には批判され、若い女性からは支持された。


3ヶ月後、彼女は無事女の子を出産した。


肌が白く、瞳の大きな明るい茶色の髪を持つ女の子だった。




女の子は首が座らないうちから、ベビー雑誌の表紙を飾り、わずか5ヶ月であらゆるベビーブランドのモデルを務めた。


まるで天使のようなその姿に日本中の若い女性達は

【私もあんな子を産みたい】

そう思ったのだった。

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