<第6部 エピローグ> ~会いたかった~

 

 カルラはしばらく、医務室で眠ることになった。

 原因はもしかしなくても、あの無邪気な少女の抱擁が原因である。

 毒の面は問題ないにしても、外の傷ばかりはどうしようもなかったのだ。


「……」

 病院の屋上で、レイブラントは空を見上げている。


 オルセル・レードナー。メージを恐慌に陥れた謎の商人。

 そして……”政府の腕章”を身に着けた謎の集団に指示を送っていた黒幕。


 「奴は政府とも繋がりがあるのか……?」

 ジャイロエッジ。処刑人達は本当に政府に所属する特殊部隊だったのか。それとも名を語るだけの偽物だったのか。

 謎は深まるばかり。その後も彼は街を見回ってみたが、オルセル・レードナーらしき人物は見当たらなかった。ジャイロエッジが爆散したのを確認した後、その場から立ち去ったのか。

 或いは元よりその場にはおらず。遠距離から高みの見物をかましていたのか。


「おい、レイブラント」

 屋上に顔を出す。フリーランスのリーダーであるアキュラが。

「お前の話、本当なのか」

「聞いていたか……君の耳に通すつもりだったが」

 廃れ切った村を屋上から見下ろすレイブラント。その横に缶コーヒーを持ったアキュラが並んだ。

「またすぐにでも会える。そう言っていた」

「そうか」

 また近いうちに、彼らの魔の手が迫ってくるであろう。

 安息できる時間はしばらくの間はない。身構える日々が続くだろう。



「そりゃぁ、ありがたい」

 アキュラは缶コーヒーを握りつぶす。

 まだ中身が入っている。アルミの缶は彼女の手のひらでスクラップにされる。

……ッ!!」

 ついに、その瞬間が来た。

 そう言わんばかりの表情でアキュラは笑みを浮かべる。コーヒーまみれになった片腕になど見向きもしない。

(アキュラ……)

 彼女の手のひらにあったスクラップの空き缶は。

(君は一体、過去に何があったというんだ----)

 破片一つ残らないよう、炎で溶けて蒸発してしまった。


<第6部 完>

 

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