辺境神官は出世したい!

Y氏

第0話 最悪のエピローグ

「腰が痛い」

馬車に揺られながら寝起きだろうか、欠伸を堪えながら青年はそう呟く。

彼の着ている服はシワの付いているものの

汚れなどは全く付いていない純白の法衣であり、

彼の身分を表すのであろうエンブレムが金糸によって編まれていた。


いったい何故彼のような麗しきものがボロ馬車に乗っているのだろうか。


それは1月も前のことであった。

時は女神フェリテの復活と豊穣を願う一年に一度の三日三晩続く大祭。

女神フェリテを祀る宗教都市、聖フェリテ教会の神官であり

女神フェリテの名を与えられた青年アリアス=フェリテは誰よりも忙しそうに働いていた。

彼は元来決して働き者では無いが、この祭りでは彼は成し遂げたいことがあった。

それは『出世』である。彼の役職は二等神官、20歳にしては優秀であるが、

後ろ盾のない彼にはそこまでが限界であった。

彼のような身で出世し大神官の道に進むには、

このフェリテ祭で結果を残し是が非でも法皇猊下の目に止まる必要がある。



「アリアス二等神官、ユダ一等神官殿がお呼びです。至急聖務室に出頭せよとのこと」

言伝であろう、神官見習いがアリアスに伝える。


「一体、このフェリテ祭のクソ忙しい時期にわざわざ俺を呼び出すとは、あの能無し目いったい何を考えてやがる」


彼、はさも苛立たしげにそう呟き、

自身でも自慢にしている鈍く銀に輝く髪を掻き毟りながら言う。

そう言いながらも教会は実力主義、2階級上の神官に逆らう権利は彼にはない。


「ただいま二等神官アリアス、ここに出頭致しました。何用でしょうか。

ユダ一等神官補佐殿。」


アリアスとユダは神官学校同期であったが今では一等神官と二等神官の差である。これはユダの父が大神官であるためか、アリアスと違いユダは順調に出世コースを進んでいるようである。アリアスは自身の優秀さ故にユダに恨まれている事を知っているが、ユダは彼の上司である、命令には逆らえない。いつもは不機嫌そうに命令するユダはさも嬉しそうにしている。


「ははっ、喜びたまえ。君の出世が決まった。君もは今日から一等神官補佐である。

ただし任地はトライアムだよ。君は今日から司祭だ。おめでとう。はは」


高笑いしながら彼はアリアスに伝える。


トライアムそこは迷宮と呼ばれる魔物が現れるダンジョンのある街、無作法者共が集う街、魔族の国に最も近い街。そして、そこは聖フェリテ教会の勢力外。


つまり彼は左遷されてしまった。



「この恨み忘れないぞユダ、絶対に返り咲いてみせる。俺は誰よりも優秀な神官。ここで終わるわけにはいかないのだ、たとえどんな街であろうとも俺の出世コースの邪魔なんかさせない。ユダ貴様を潰して見せる。そして大神官にきっとなってみせる。」


彼の決意は固い。魔都トライアムでの彼の出世ライフが今始まった。


「やっぱそれよりも腰が痛い。」


まだまだ先は長そうである。


*****


今晩は!はじめまして、はじめました。

推敲もせず、唯々書き連ねた作品ですが、

どうぞ目に留めて戴ければ幸いです。



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