第13話 公爵令嬢は5歳になる 1
フィアンマ公爵家は、アースフィールド王国でもトップクラスに権力を持つ程の大貴族。
歴史も古く、この国が出来る前からフィアンマ家は存在し、建国の際にも大きく貢献したそうな。
そしてどんどん領地を広げ、その規模は王都に次いで国で2番目に大きい。
フィアンマ公爵家当主、つまり私の父 アーノルド・フィアンマは、18歳の時に私の祖父に当たるフィアンマ公爵家前当主を亡くしてから15年、領主としてフィアンマ公爵領を統治している。
その腕は祖父に劣る事のない名君で、先進した農業・工業・商業と安定した治安を保っている。
子供の教育にも意欲的で、7年前に学童院を発足、6歳から14歳までの間に最低2年間の義務教育を設け、更に勉強を続けたい優秀な者には職業別の専門知識を身につける機関への推薦を斡旋している。
そのため、フィアンマ公爵領の識字率は他を圧倒している。
見た目は私とそっくりで、凛とした顔付きに濃茶の髪と瞳をしている。
フィアンマ公爵夫人、つまり私の母 ミリアン・フィアンマは、社交界でも中心的な人物。
知識が豊富で 常に流行の最先端、交渉が得意で カリスマ性が高いオーラの塊のような人物。
実家はアンタレス侯爵家という、商業が盛んな領地のご令嬢。
ブリキッド商会を作った張本人。
見た目がやや幼く、くりっとした大きな藍の瞳と、ふわふわサラサラな金の髪、透き通った白い肌に薄桃色の頬と瑞々しい紅い唇。
エレメント魔法学校在学中に、既に婚約者がいたお父様が、お母様に一目惚れ。
卒業後、第3夫人として結婚したのだけど、2年ほどでお母様一人になってしまったそう。
理由は知らない。
と言うか、聞いても教えてくれない。
元第1・元第2夫人は、お二人ともご健在で、別の方と結婚をされているので、何か政略的なものがあったのだろうか。
フィアンマ公爵家次期当主、つまり私の兄 レイジ・フィアンマは、国内でも指折りの魔力量保持者。
50年に一度と言われるほどの魔力量も然り、剣術にも秀でていてその戦闘センスは14歳にして騎士団の一員として活躍している程。
何でも、魔法学校入学前の騎士団入隊は12年ぶりの快挙だそうで、卒業後は小隊長の座が約束されているらしい。
見た目はお母様似の整った可愛い系の顔、背が高く、訓練で鍛え抜かれた筋肉、国内でも有数の魔法と剣の実力、騎士団小隊長と公爵家次期当主の座が約束されている兄に、それはもう国中のありとあらゆる女性が結婚を申し込んでいる。
そんなお兄様の婚約者は何と隣国の第二王女様。
このようなすごい家族に囲まれている私 フランドール・フィアンマは今日で5歳になる女の子。
最近、揚げると言う製法でポテチを作った。
…肩書き少ねぇ。
まぁまだ5歳だもんな。
今日はそんな私の誕生日パーティーが開かれる。
普通は社交界デビューは10歳前後かららしいけど、5歳の誕生日と言うのはこの国でも特別扱いで、殆どの貴族の子は5歳の誕生日パーティーをするらしい。
で、今日は国内でもトップクラスの大貴族のご令嬢のアニバーサリーバースデー。
もうね、誕生日パーティーと言うような規模じゃない。
それこそ、お城の舞踏会レベル。
改めて思い知らされる、我が家のデカさ。
書庫で見た国の貴族一覧表に載ってた人達がわんさか来てる。
別室には、私宛のプレゼントがこれでもかと運ばれているらしい。
このような状態で断言しよう。
主役の私、完全に父、母、兄のオマケである。
3人のオーラが濃すぎて、私が霞んで見えなくなりそう。
ぶっちゃけ、招待客はこの3人に会いに来て、ついでに私に「おめでとう」と言ってるだけだと思う。
因みに、今日のドレスはフリフリ。
ドレスはもうね、仕方ないのはわかるんだよ。
既に今日のためのドレスを作っていたのに、作り直せとか失礼でしょ。
しかも、もうすぐ成認式もあるし、パーティーの1週間にドレスを作り直せとか「このクソ忙しい時に何ふざけた事ぬかしとんじゃこのガキ」とか誰だって思うよ。
それ以前に、この3人に並ぶのに、ドレスどうこうとか言うレベルじゃないから。
はぁ…肩身が狭い。
「どうしたの、フラン。
折角貴女の為に大勢の方々が来てくださっているのよ。
そのような暗い顔して皆様にお会いするのは失礼よ。」
皆様は貴方達に会いに来ているのですよ。
「初めての社交場で緊張するのはわかるが、そこまで気負いする事ない。
主役はお前なんだ、フラン。
堂々としていなさい。」
緊張しているのではなくて、堂々としても貴方達程華がない事にがっかりしているのです。
「折角の誕生日パーティーなんだから、楽しまなきゃ損だよ、フラン。」
お兄様は流石だなぁ、14歳にして社交界慣れしてる。
入場の時間がもうそこまで来ている。
お兄様の言うように楽しむ余裕はないけど、腹を括るしかない。
場違いだろうが何だろうが、今日の主役は私だ!
堂々と主役面してやる!
そして開かれた大きな扉を
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