第7話 公爵令嬢はポテチを作る

「ねぇ、私も少しだけ料理をしてみてもいいかしら。」


「し、しかし、お嬢様は料理はおろか、包丁すら使ったことがありませんよね?」


そう答えるのは総料理長のダン。


「料理ごっこはした事があるわ。

もし危なそうだと思ったら、貴方が私のする事を代わりにしてくださいな。」


私がそう言うと、ダンはかなり困った顔をしている。


「誰だって初めてと言うのは経験するものでしょう?

それとも、私には料理をする資格がないとでも仰るのかしら。」


そう言うと、諦めた様子で渋々了解してくれた。


うーん、さっきの私って、ネット小説とかによく出てくる悪役令嬢みたい。


ちゃんと「意地悪な言い方をしてごめんなさい。」と謝って、何かあってもリッカや皆んなには責任取らせないと言うと、「何か問題が起こらないように私どもが見守ります」とフォローしてくれた。


ダンは優しいなぁ。





さて、これでやっとポテチにありつけるぞ!


まず、調理でどんな油を使ってるのかを聞いてみたところ、オリーブオイル、菜種油、ごま油を使っていると教えてくれた。


よし、じゃあ菜種油で作っていこう。


食材と食器を用意してもらったけど、菜箸、網杓子、温度計がなかった。


菜箸はトングで、網杓子は小さいざるで代用する。


温度計はなくても何とかなる。


調理開始!


最初はじゃがいもの皮むきから。


ピーラーなんてもちろんないから、包丁で。


ただ、皮を剥こうとするのだけど、5歳弱の私には包丁が思った以上に重たくて、じゃがいもが固く感じた。


後ろのリッカと横のダンが物凄く不安そうな目をしていたので、今回はプロに任せた。


次に、じゃがいもを薄くスライス。


ついでにこれもやってもらったけど、さすがプロ、スライサーなしで薄ーく均等にどんどん切っていく。


当然、俺の現役(?)の時より上手い。


薄切りしたじゃがいもは、綺麗な布で水分を拭き取っていく。


これなら私でも出来る。


スライスされたじゃがいもは結構な量があったから、他のコック達にも手伝ってもらった。


さぁ、ここからが大事。


加熱した油にじゃがいもを入れていく。


油に食材を入れると言う発想のないこの世界の人たちは、ジュワジュワと音を立てるじゃがいもを見ながら固唾をのんでいる。


早すぎるとベチャベチャになるし、少しでも遅れるとすぐ焦げてしまうから、タイミングを見計らって、ざるですくい上げる。


油を切って、トレイに移して、塩で味付けをすれば、ポテチの完成!


出来立てのポテチを一枚、味見をする。


パリッ、サクサク…


うーん、これこれ!


やっぱりポテチは美味しいねぇ。


あたりを見回すと、周りの皆んなが、ポテチと私を見比べながらポカーンとしていた。


そりゃそうだ、料理をした事がない5歳児が、新しい調理法で創作料理をスイスイと作ってるんだから。


俺でもビックリするわ。


ポテチを食べたいあまり、自然な流れとか完全に考えるの忘れてた。


どう誤魔化すかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る