第20話 先代

 セラに連れられてやってきたのは森の近くにあるちょっとした洋館だった。ちなみに森はなぜか紫色の木々が生えているし、洋館も壁一面に複雑な魔法陣が描かれていて、煙突からは黄色い煙が噴き出しているというちょっと楽しい感じだ。グリム童話とかに出てきそうな魔女の家をもうちょっと奇天烈にした感じではないか。


「あ、勝手に歩いていくと危ないわ」

 不意にセラが私を手で制する。すると私の目の前で不意に地面から青い液体が吹き上がる。どうも地面にも何かの魔法陣が描かれていたらしく、何かが発動したらしい。

「暇なときはこれ全部解除して遊びに行くのだけれどさすがに今はやめておくわ」

 そう言ってセラは指から魔力の塊を放つ。塊は洋館のドア脇にある鈴に当たり、ちりんちりんという音を立てた。遊び過ぎじゃね? すると地面に描かれていた魔法陣が全て消滅した。


「さ、行けるわ」

 私はセラに連れられて洋館に入っていく。

「あれ? セラが他人を連れて来るなんて珍しい」


 中にいたのは私より若く見える少女だった。恰好だけ見れば人間領の村にいる村娘と言われても信じるだろう……右手に身長ほどもありそうな巨大な魔物の腕がついている以外は。家の中は外見と違って普通の民家のようだった。後ろの棚に怖そうな本や怪しげな薬物などがしまってある以外は。意外ときれい好きなのかもしれない。

「私の作品の道具にちょうどいいのよ」

「ふーん? あ、私今年で百七十五歳のミルガウス。小娘と思って侮らないことね……と思ったけどあなたもしかして異世界の?」

 ミルガウスは私をまじまじと観察する。見るだけで分かるってすごいな。私の驚きが顔に現れたのか、

「そりゃ分かるよ。先代の異世界の魔法使いとも会ったことあるし。なんか服が似てる」

「え、そんなに何人もこっちに来てるんですか!?」

 そうか、百七十五歳だともし先代がいるなら見ていても不思議じゃないのか。


「そりゃね。人間は何かあるととりあえず異世界魔術師召喚するから。これはさすがに会ってないけど、先々代が当時の魔王を討伐したあとだったかな。今からでいうと八十年ぐらい前? 

知り合いの魔術師が蘇生魔術の研究に失敗してアンデッドの量産に成功してしまったんだけど。それが逆に気に入ってアンデッドキングみたいな立場になろうとしてアンデッドに殺されるという事件があったんだよね。それで残ったアンデッドたちは大暴れ。

当時魔物陣営は魔王も不在だしそれぞればらばらだったからアンデッドに対抗出来ず、勢い余ったアンデッドは人間領に攻めていったんだったかな。そのときに先代の方が召喚されて、一緒にアンデッド討伐したな。ああ懐かしい」

 ミルガウスは遠くを見るような目になる。先代勇者のパーソナリティには全く興味はないが、どうやって帰ったのかには興味がある。


「それで、先代は無事帰れたの!?」

「いや。そもそも先代は途中で力を振るう快感に目覚めちゃって。それで私もとばっちりが来ないうちに離れたんだけど。その後人間の国で皇帝になったんじゃなかったかな」

「ああ、そもそも帰らなかったんだ」

 確かに私も代償がもっと違うものであれば無双生活を楽しみたかったかもしれない。

「でも今皇帝がいる国なんて聞かないな。どうしたんだろ」

 エリアに聞いた話だとどの国も「~王国」もしくは「~大公国」という名前だったはずだ。

「寿命で死んだのでは?」

 セラが身も蓋もない突っ込みを入れる。まあ、天寿を全うしたのならそれはそれで幸せだったのかな。


 が、そこでミルガウスが不穏なことを言う。

「でも、闇属性魔術師なんて問題起こすって経験してるはずなのに何でいちいち召喚するかな」

「え、そうなの?」

 私は思わず嫌な気持ちになる。

「逆にあなたは問題児じゃないの?」

「……ちょっとコミュ障で社会に適合しにくいだけだけど」

「何だ、普通じゃん」

 ミルガウスはつまらなさそうに言った。その感想はその感想でどうなんだろう。

「先代みたいにもっとぶっ飛んだ感じかと思った。あの人は途中からひどかったなあ。夜になって休む前にちょっとでも魔力が残ってるとその辺のゴブリンの魂を永遠の闇に封印したりしてたし」

「えぇ……」

 それはドン引きだ。やっぱりそいつは天寿を全うしなくていい。ちなみに魔力は寝ると回復するから寝る前は使い放題と思って使っていたのだろう。

「ちなみに先々代は?」

 興味を惹かれた私はさらに尋ねる。

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