骨折からの

かつてない台風が来るって日に

 記憶が薄れてしまわないうちに記録だけでもしておきたい。

 これは母が亡くなる一か月ほど前からの出来事です。

 後で加筆修正するかもしれません。



 台風が近づいていた。

 お盆前に里帰りしていた妹は、十六日に新幹線の切符をとっていたが、新幹線が止まるほどの大きな影響が出るというニュースをみて早めに切符を取り直し十五日の夕方に帰るという。

 その日は親戚が集まる日。母の妹弟きょうだいが、叔父(母の弟)の家に勢ぞろいする。正月と盆の恒例行事である。妹は叔父の家に顔を出してから最寄りの駅から電車に乗ることにした。

 母を施設(サービス付き高齢者住宅)へ迎えに行き、私の車で妹と叔父の家に向かう。母は、今年に入ってから急に足がふらつきだした(施設内で転倒すること三回。その都度、頭を打っているかもしれないということで病院で検査をしている)。母を車から降ろし叔父の家に上げるのに苦労した。足もあがりにくく、すり足で歩くため、玄関前の二段の階段を上がるだけでも時間がかかる。妹に手伝ってもらって両方から抱えるようにひっぱりあげた。

 施設では、歩行車を使っている。バリアフリーな施設内では有効活用していたが、一歩外に出てしまうと使いどころがない。

 妹の電車の時間を考えて少し早めに来てしまったので、まだ他の親戚は誰も来ていなかった。叔父に挨拶をして、とりあえず母を座らせてから私と妹は仏壇へ向かい手を合わせる。

 叔父が急いで焼いてくれた海鮮バーベキューをほおばっているとほどなくして他の叔父叔母も集まってきた。久しぶりの妹弟きょうだい勢ぞろいに母もニコニコしながら食事をしている。母は七人妹弟きょうだいの二番目である。子供の頃に面倒をみていた妹、弟たちが今度はいろいろ面倒見てくれている。十月には近場ではあるが、旅行に連れて行ってくれる話も出ている。不安要素はたくさんあるけど、なんとかなると叔父が行ってくれているので、よろしくお願いしますと言っておいた。

 台風の影響で強い雨が降っている中、妹を駅に送り、叔父の家に戻る。雨が小降りになるタイミングをみて、今度は母を施設に送り私も家に帰った。


 夏の行事も終わったな。次はお正月か。


 と、一息入れた深夜、突然電話が鳴った。

 律儀な妹の夫のお礼の電話かな(いつも妹が里帰りしたあと家に戻るとお世話になりましたと電話してくるので)と暢気に構えていた私。

 電話に出た夫が私に受話器を差しだし

「施設から」

と言った。

 また興奮しちゃって眠れないのかな…(母はイベントのあと、興奮状態が続いて眠れなかったりすることが今までにもあった)少し落ち着かせるために家族の声を聞かせて欲しい等の電話だと思った。が…


「いつの間にかお部屋から出ていたようで、食堂で倒れていたのですが、足が痛くて動けなくなっているんです。もしかしたら骨折しているかもしれないので救急車をよぶことになりますが」





え?




骨折?




 とうとうやっちゃった。神経内科の先生に転倒にはくれぐれも気をつけてと言われていた。頭部もそうだけど骨折も心配されていたのだ。特に足腰の骨折は寝たきりになる可能性が高い。

 とにかく救急車。施設の方に救急車を呼んでもらって私も施設に直接行くと伝えた。家から施設までは車で十分ほどで行けるはずなので。


 施設に着くと救急車はすでに来ていて、ストレッチャーが中に押し込まれるところだった。続けて私も乗り込むと隊員さんとのいくつかのやりとり。病歴、かかりつけ医院などなど。状況は施設の方から聞いているようだった。

 そして受け入れてくれる病院探し。

 まずはかかりつけの病院に確認したが、当直が内科医しかいないということでアウト(ここはいつもタイミングが悪く、内科でかかりたい時は脳外の先生しかいないというし、脳梗塞を疑った時は耳鼻科の先生しかいないという。わざとではないんだろうけど…とにかくタイミングが悪い)

 次に名前があがった病院にはトラウマがあり不安になる。しかしお盆休み中のため贅沢言ってられない。以前、叔父が骨折した時は、受け入れ先がみつからない場合、もしかしたら県外の病院になるかもしれないと救急隊員に言われたことを思い出した。痛がっている母を早く楽にしてあげたい。治療をして欲しい。県外まで運ぶのはみているのも辛い。でもその病院は…


―――――


 まだ私が独身で実家に父母と兄の四人で住んでいた時のこと。(妹は専門学校から家を出てそのまま就職)

 突然電話が鳴り父が救急搬送されたと告げられた。

 近くの病院だったので母といっしょにかけつけた。

 病院に着くと、ストレッチャーの上に横たわる父。額には擦り傷があった。どうしたのか本人に聞くと

「車をよけたら足元に乗り捨てられた自転車があって足をとられて転んだ。

と言う。すかさず隣にいた看護師が

「酔っぱらってるからねー(笑)」

の顔は一生忘れない)

 確かに少しお酒の匂いはする。飲み会だとは聞いていた。が、そんなに泥酔するタイプではない。足も手も折れてるわけではないらしい。なのに動けないという。

 

 看護師が電話で医者に指示をもらっているらしい。

 とりあえず部屋を用意するから

 部屋へ入ると、父は首の痛みを訴えたので看護師に伝える。医者に確認して戻ってきた湿。母が父の首の後ろに湿布を貼ってやる。

 このまま母は付き添うというので、私は一度家に戻った。

 次の日は休日だったので寝坊した。電話がなって目が覚めた。母からの病院に迎えに来いという催促の電話だと思ったら、父を転院させるという。

 どういうことか理解が出来なかった。父の酔いが冷めたら帰ってこれると思っていた。

 すぐに搬送された病院に行くと救急車が待っていた。もう出発するからと詳しくは聞けなかったが、今朝、検査してみたところ重大な怪我をしていて今の病院では看ることが出来ないので大きい病院に紹介状を書いたということらしかった。

 転院先の病院を聞いて、私も自分の車で向かった。そこで、やっと詳しい説明を受けた。


 、首から下の神経が麻痺。今後回復の見込み無し、つまりということだった。


―――――


 母が搬送された病院は、父が最初に搬送された病院だった…

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