第3話 身の丈プロポーズ

私の夫にティファニーの買い方を教えてくれないだろうか?


これが私の欲しいブツだという写真をLINEで送り、店舗が渋谷にあることも教えた…が,



私はまだティファニーを手に入れてない。


果たして,一ヶ月後に迫る結婚式で,ティファニーに身を包みたい私の夢は叶うのか…!?


セールでだけど,君の欲しがってたネクタイは買ったよ。さぁ!私が欲しいものを思い出し,渋谷のデパートに乗り込み,カウンターの店員さんにおずおずと話しかけ,困りつつ,店員さんに導かれ,ティファニーのダイヤを手に入れるがよい!








という妄想はさておき。





なぜ,こんなにこだわっているのだろう?






昔は,当たり前だと思っていたのだ。





彼から指輪をもらえることが。

指輪をもらえたことで、結婚できると思っていたのだ。



指輪っていうイメージは漠然とあったけれど,婚約指輪とか結婚指輪が別の物だとか,正直なところ,結婚が夢じゃなくなって、現実としてそこにあるものになってから知ったのだ。




彼からどういうプロポーズをされたいかっていう友達との話も,夢の話じゃなくなって,現実味を帯びてきたのは,25歳くらいだろうか。








「夜景の見えるレストランで,『結婚しよう』って言って,指輪をパカってしてくれるやつ」

を,叶えてる人が実際にいること。



でも,いつものデートの帰り道の公園でとか,

成り行きで,とか,プロポーズなんてされてない,

人もいること。


それでも,結婚はできること。


結婚は、届けを出せばできること。


結婚という契約を結ぶこと自体には、お金がかからないこと。



現実を,知ってしまったのだ。

指輪の箱をパカってされなくても、結婚できる。

結婚をどれだけロマンチックなイベントにするかは,人それぞれなのだ。






「結婚」というイベントが,彼にとっての彼女の価値をはかる指標のように洗脳されてしまっているんだろう。


それでも,私が,夫にそれといったプロポーズをしてもらえてないこと,婚約指輪を持っていないという事実は,

私が,その程度の価値の女だってことを,痛感せざるを得ない。





確かに、私はこれまでの人生で,女としての価値を高めるためのことをしてこなかったと思う。


デパートの化粧品売り場には行ったことがない

エステにも行ったことがない

ネイルもしたことがない

髪だって毎朝巻いてるわけじゃない

時々,ムダ毛の処理をし忘れる

女磨き,何それ,美味しいの?というレベル




だから、仕方ないのだ。


私はそもそも夜景の見えるレストランでプロポーズされるような女じゃないのだ。

そして、そんな女の好きになる男は、プロポーズができない男なのだ。








わかってるよ。

わかってる。

それでもいい,と思える何かを探しているのだ。

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