9 電子的消尽
「消費資本主義的消尽」は、つねに需要(欲望)のフロンティアを開拓していないと動的安定性を維持できないシステムです。
ぼくが若かりし頃は、宇宙開拓や海底開拓がまことしやかに語られていました。宇宙移民とか、海底での生活とか・・・・・・そんな漫画もたくさんあったかと思います。
それは、帝国主義的に領土を新規開拓していった資本主義的運動が飽和点に達し、新たなフロンティアを見失ったがために、それを宇宙または海底に求めたものでした。しかし海底への進出はコスパが悪く、周知のとおり、頓挫しています。
ちなみに宇宙開発はというと、ロケットに核弾頭を積めばミサイルになるわけですから、米ソ冷戦時代に競って宇宙開発をしていたのは、じつは軍拡競争の側面をもっていました。また、人工衛星を使っての地表監視が軍事的意味合いをもつのは当たり前のことです。つまり宇宙開発については、単にコスパの問題ではなく、軍事的意味合いが強いですね。
ので、宇宙への投資は、資本主義的投資と利潤の回収、というよりは、やや軍事的消尽に近い色彩がかかっているものと思います。これについては、宇宙空間への消尽、とでも名付けておきましょう。
さて、教科書的な説明になりますが、そもそも資本主義システムは、①財市場、②労働市場、③金融市場の3点セットにより編成されています。
資本主義のエンジンは「欲望」であり、常に「欲望のフロンティア」へ「投資」し、「利潤」を回収することによってドライブしていく、ということについては繰り返し説明しました。
現在、なぜ‘資本主義が危機!’とか言われたりするのかというと、順番にいきますと、まずは、①財市場における「欲望のフロンティア」がすでに飽和しています。
財=モノは行き渡り、モノへの欲望は飽和しています。財には土地も含まれます。が、土地=フロンティアへの投資=収奪の運動は、植民地主義(帝国主義)の終焉と共に終わっています。海底の開拓は進まず、宇宙開発という名の軍事開発が一定度進んだにすぎません。
次に、②労働市場におけるフロンティアの開拓(収奪・搾取:安い賃金労働者を求める運動)は、これもご存じのとおり、爆発的な非正規雇用の増加と格差・貧困、社会的分断を生むに至り、座礁します。もっとも、最近の日本は実質的移民解禁にフロンティア幻想を抱いていたりしますが・・・・・・
最後に、③金融市場のフロンティアですが、ここに目をつけたのが、いわゆる新自由主義、徹底した金融規制緩和によるフロンティアの開発でしたが、これもご存じのとおり、リーマンショックに至ります。金融危機を招きました。
つまり現代資本主義には、‘もはやフロンティアがない!’かもしれないという危機感があるのです。
と、言いつつも、じつは、フロンティアがないわけではないでしょう。
じゃ、どこにフロンティアがあるのかというと、簡単に言うと、「人間の想像力」です。人間の想像力は無限であり、そこには無限のフロンティアが広がります。
たとえば、電子世界です。電子的土地は無限に広がり、電子的想像力もまた無限、電子的欲望もまた無限なのです。
海底でもなく、宇宙でもなく、いわば電子の世界が新しいフロンティアになる、というか、すでになってきていますね。
これをぼくは、電子的消尽、と名付けておきます。
あるいは、「電子資本主義的消尽」とでも呼びましょうか。
「消費資本主義的消尽」から「電子資本主義的消尽」へ、というのが、資本主義的消尽の延命策、なのでしょう。
「電子資本主義的消尽」の実態分析については、いずれ稿を改め、記してみたいと思います。
さて、バタイユに戻りましょう。
さしあたり『呪われた部分』は終了です。
次に、2作目とも言える『エロティシズムの歴史』へ入っていきましょう。
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