第24話
「なんでさ、声で強大な『魔』が反応するように、もっとさぁ、魔術師共は研究しなかったんです?そっちの方が効率良いじゃないですか?」
眼鏡の奥で涼し気な眼差しで猪熊がこちらの意をくむような眼差しで見ている。
松本も同様に僕を見ている。
「だってそうじゃん。そちらの方がバリバリ楽しょう?」
「ですね。声でルーン鉱石が反応して『魔』
が巨大になるほうが。ただ・・ね」
猪熊が言い淀む。
「ただ・・?」
僕の問いかけでごほん、と咳をする。
「こだま君、あなた東北や九州、色んなところに旅行とかしたことあります?」
旅行・・?
まぁ、無いことは無いけど。
「それが何か?」
「各地域に行くと同じ言葉でも内容が違うことはあるでしょう?つまり『訛り』です」
「それが何か?」
「そう、・・神の言葉、つまりルーン言語は一つですよ。だから英語でも例えばウェールズ訛りとか色々あるでしょう。同じ言葉でも発音が違ったり、母音が変わったりすれば全くルーン言語と不整合になる。だから正確なライティングだけにしか反応しなかっただろう・・、だから正確に書きあげることに意味があったんでしょう」
「どんな意味があるのさ、その意味に」
僕は笑う。
ふふ、と猪熊が笑う、。
「つまり神の意志としては、正確な語彙だけ認めたくて、同じ意味でも他の語調や訛りは嫌だったんでしょうね。まぁ日本でも同じ言葉だけど、関西弁や東北弁、九州弁など幅広く地方にはありますし、それと世界に広がった人間の言葉は無数で管理できないこともあって、まぁ何にしても正確にライティングするものだけを認めたかったのでしょう。まぁ神の言葉ですから。神としては正しく発音して欲しい、だから『魔』の巨大な発動は記述にこだわったのかと」
「そんなの、絶対こじつけだわぁ!!」
言って、僕は嘲笑する。
するとおもむろに背後に手を回し、雑誌を僕らの面前に出した。
表紙には何やら賢そうな外国の男性の写真。
なんじゃ、こりゃ・・?
「あ、これ私ども魔女本部発行の機関紙です。この七月号に『神の言葉と訛り』という論文が書かれています。もしよければ差し上げますから、読んでください。とりあえず今の最新の研究です。まぁそんな所です。謎がありますが、その問題はここら辺で」
いるか、阿保っ!!
そんなもん。
馬鹿馬鹿しい。
すると
「あっ、僕それ持ってます。『ウィッチクラブ 七月号』、拝読しました」
松本が言う。
僕は松本を慌てて振り返る。
あんた?
敵の本も読むの?
「流石です。いや、敵ながら恐ろしい。恐れ入ります」
猪熊が頭を深々と下げた。
「どこで買ったん?これ???」
僕の言葉につぶらな目をぱちぱちさせながら言った。
「アマゾンで買いました」
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