第25話 瓢箪から駒ということにしておく。
家に帰って【エルフ村】のサイトを確認すると、アタールの投稿がバズっていた。リアルな街並みや風景と、リアルなコスプレに対しての質問がほとんどだ。クローズドのSNSではないのでサイト外への引用投稿などがあり、バズっている模様。登録人数も大幅に増えている。
内容のほとんどは、ロケ場所に関するものだ。
> 素敵な風景!
> どこで撮ったの?
> まるで本物の中世のよう。
> イタリアじゃね~の?
> ロケ場所を教えてほしい。
などというものだ。中にはセルゲイさんを紹介してほしいなどの内容もあったが、
> Я не понимаю японский.(私は日本語が理解できません)
とロシア語で一行だけ投稿してとりあえず放置した。ちなみにハンドルネームのアタールはカタカナだ。今日は忙しくて、街中も猫耳も撮影していないので、追加写真投稿は無し。システムエラーもなし。とても順調だ。
広告の売り上げも確認してみると、跳ね上がっている。すげえな、リアル異世界。
正直に言う。じつは、スラム地区に興味が移ったのは、猫耳に関する理由が主だったりする。いるんです。猫耳、犬耳、ほかに種族はよくわからないけれども、お姉さんもお子様も。オッサンもいるけどね。
お茶会という円卓会議に集まっていたのは、人間のオッサンお兄さんたちだったけど、比率でいうと、亜人率がとても高い。スラムの方々と仲良くなれば、衣服の寄付という名目で、獣人メイドが実現するかもしれない。
そう、リアル【エルフ村】を作ることができるのだよ。ひとり撮影会も思いのまま、場合によっては、猫耳奥様とかもあり得るかも知れない。純粋に貧困撲滅活動だと思った方、ごめんなさい。オッサンやお兄さん達を前に、目も伏せずにひたすら持論を展開するモチベーションが猫耳の他にあるだろうか。いや無い。
妄想では、将来的に廃村を入手して本当の意味で【村】づくりするところまで視野に入れている。随時計画の変更はなされるだろう。今回のスラムでの強盗傷害誘拐事件など、まったく予定になかった。
こういうのを何ていうんだったか、濡れ手に粟?いやそんな悪そうじゃない。晴天の霹靂?いや違うそんな大げさじゃない。
あ、瓢箪から駒だ。
この駒を最大限に有効利用し、僕は趣味を極めて見せる。すでに仕事だけどね。
特にすることがないので、スラムの改善策を計画する。かといって、何度も言うように目立つ頃は極力避けるので、大きな施設を建設するとか、小屋が新築一戸建てになるとかはない。それでも、衣食住に関しては、充実させる。猫耳お姉さんの美容と健康は大事だ。
今のところお金も複製ばっかりなので、負担はない。ここも改善の余地ありだ。税務官と面会する前に、収入源は提示できるようにしておかなければ。
うん、突発的な計画追加はその後始末が大変だな。日本でも異世界でも同様のようだ。まあ、日本ではのんびり平和な日常がずっと続いているけど・・・。今は魔法による実現性が高くなった分、あまり妄想にふけり過ぎないように気を付けよう。
ネット検索で、生活向上に役立ちそうな情報や物品を検索。水の浄化とか、空気清浄とか、土壌改良。せっかく手に入れた土地だから、環境だけはよくしたい。魔法の実験小屋も作りたいし。
あ、あと紙とペン。住民に読み書きを学ばせる必要がある。とりあえず、必要そうなものをいろいろショッピングカートに入れて、1種類ずつ購入。必要数は複製する。
奴隷の買戻しについて資金は問題ない。いくらでも複製できる。所在の確認や意思の確認などについては、イワン一味の冒険者登録後に、彼らに働いてもらう。そのためには、一度領都に出かける必要もありそうだ。
奴隷を購入するのはほとんどがお金持ち。そのお金持ちが最も多いのが、ジニム辺境伯領においては、領都のジャジルだそうだ。もちろん、まずはサルハの奴隷から開始する。スラム出身でない奴隷については、まだ考えていない。人によるかな。
とにかく、この計画にスラムの方々がどれくらい協力してくれるかで結果は変わるだろう。僕は全身全霊を傾けて、猫耳に尽くす・・・いやスラム地区に尽くすことを誓う。もちろん冒険者稼業も、商人もきちんとこなしますよ。
魔法の実験についても、時間を充分取って行う必要がある。今回初めて防御に関しての魔法を使ってみたが、創作の段階での試行錯誤が必要であることを身をもって実感した。サルハの街から離れた場所に仮拠点でもつくって、各種攻撃魔法などを試す必要がある。街に居るとバイクでのんびりツーリングもできないし。
また種類によっては不本意だが動物実験や人体実験が必要になるだろう。このあたりは、魔物、野盗、盗賊の類に犠牲になってもらうことにする。自己の安寧のためには他人の犠牲はいとわない。ただし、悪人に限る。
冒険者仕事のついでに、このあたりは行おう。魔物の狩りは、魔石入手という目的のためにも、積極的に行う。そうすれば魔道具の作成も捗ることだろう。
異様に増えていく必要事項のメモとネット注文のメールを確認。晩飯のカップ麺を食し、風呂にゆっくり入った後、床に就く。今日はほんとうに怒涛の1日だった。明日からは、ほのぼのとした平和な日々が続くことを願う。
朝はいつもの朝食から始まる。最近思うんだけど、僕の食生活貧しくないですか?まともな食事とか、サシャさんの家で振舞ってもらった昼食だけのような気がするんだけど。インベントリの時間停止機能もわかったことだし、ここはメニューを充実させるべきだろう。
車で、隣町に出かけよう。たまには生きているとこを目撃させておかないと、村中に変なうわさが立っても困るし。早速車庫で車に乗り込み、お出かけする。とはいってもコンビニに行くだけなんだけど。
目的は、スイーツ一式およびお弁当一式。めぼしい物1種類ずつ買い占める。お酒なんかも良いかもしれないね。
魔法を使わず1時間半。念願のコンビニに到着して、早速お菓子、生菓子、弁当、インスタント食品、お酒類の買い出しをする。カウンターにある、おでんや、チキンのから揚げなんかも注文。あ、それとコンビニコーヒー。奮発してラージサイズだ。
サクサクと買い物を済ませ、購入した荷物を何度かに分けて、車に積み込む。あとでインベントリで収納するのだけれども、人の出入りが頻繁な場所では、隠密行動が原則だ。正確には普通の行動だけども。車に乗り込んで早速インベントリで収納し、再び家に向かう。
街ってどこにカメラがあるかわからないから、帰りも普通に運転。夜中なら、どこかの目立たない路地とかで転移もありなんだけどなぁ。
目撃者を獲得するために、村に入ってからは農作業している人を見かけるたびに挨拶しながら家に向かう。爺さん婆さんばっかりだから、その方々の記憶に関してはいまひとつ確実性に欠けるとは思うけど、まあ活動上必要事項ということで。ちょっと神経質すぎる?
程なく家に到着。車庫に車を入れ門を閉め、家の戸締りをチェック。明日以降は宅配や宅配BOX(倉庫)の工事、以前頼んだ荷物の受け取りなんかがあると思うので、今日は1日めいっぱい、着替えて転移したら、異世界で過ごそう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます