憧れた君

 流行っているらしい音楽を、口笛で奏でながら廊下を歩く君に憧れた。

 陽気な人に気軽に話しかけに行き、ケラケラ笑っている君の姿に惹かれた。

 体育大会でリレーでアンカーを任され、一位を取った君の笑顔に、吸い寄せられた。

 校舎裏でキスをしている君を見てしまって、心が悲しくなった。

 利発的な雰囲気とは正反対の、本を読む君の姿に衝撃を受けた。

 暑いと言いながら変なジュースを買ってきて苦い顔をする君の姿に癒された。

 なぜかひとりぼっちになってしまって、僕しか頼れなくなった君を見て、僕は満たされた。

 高校を卒業できたと、喫茶店に呼びつけて僕に報告する君に、心が優しい気持ちになった。

 同じ大学に通い始めて、喜んでくれた君の姿に喜んだ。

 別々に就職したけど、実質同棲状態になった君に愛情が芽生えた。

 一〇年経っても付き合いがある君と、生涯を共にしたいと思えた。

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