シガーキス

 煙草に火をつけゆっくりと吸い込み、息を吐き出すと小さなワンルームに煙が充満していく。机の灰皿に灰を落としながら笑う。


「もう最後なのね?」

「そりゃあ君が浮気したからね」


 口を一文字に閉じる彼女を眺めながらもう一度紫煙を吐く。濃い紫煙が昇り色が薄れていくのと同じように、彼女との記憶が湧き上がり消えていく。

 彼女が静かに煙草を一本取り出す。僕は何も言わずに咥えている煙草を彼女に突き出す。彼女も煙草を咥え、僕の煙草に合わせる。

 お互い何も言わずに煙草を吸う。彼女が涙を流しながら笑う


「君のそういうきっぱりしたところ好きだよ」

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