仮面執事

Hono🦄

初めまして。お嬢様


「優ー!早く起きないと遅刻するよー!」

という母親の声で目が覚めた。朝からうるさいな。ほんとやめてほしい。渋々起き上がり、自分の部屋を出る。私の父は、医者で、母親は弁護士だった。今は、大学の教師をしている。だから、家には、私以外誰もいないという方が多い。自分でいうのもなんだけど、私の家はとても裕福。広いし大きいし。でも、ひとつ足りないもの。そう。私の家には執事がいない。メイドもいない。だから家之子とは、全部私一人でやっている。正直、こんな家は嫌だ。こんな家族も嫌だ。でも、そんなこと言えない。だから、私は自分の気持ちを隠すんだ。


心の「仮面」に・・。


**


母親が先に仕事にいった。その頃、私はベッドの横にある、小さな箱を見つめていた。これは、亡くなった祖父が大切に保管していたものだ。「何があっても絶対にあけてはいけない」そう言われ続けてきた。でも、開けてはいけないと言われると開けたくなるという人間の心理がある。私の手は、もうその箱を開けようとしていた。蓋に手をかけ、ゆっくりその箱を開けた。すると、そこには、小さなモノクルが入っていた。あの、片目につけるやつだ。・・・これはなんのために・・・。落とさないように慎重に箱から取りだし、掌においた。

「なんでモノクルなんかを大切に持ってたんだろう」

不思議すぎて気づけばそう呟いていた。

「・・まぁ、いいや」

と言って、箱に戻そうとすると、するりとモノクルが私の掌を滑りまっ逆さま。

「あ!!」

といった頃にはもう遅くて、ベッドに座っている私の脛まで来ていた。あー、終わった。そう思って、目をぎゅっと閉じ、耳を塞いでいると、聞こえてくるはずのドンっていう音やレンズが割れる音がしない。ゆっくり目を開けると視界に黒いスーツのズボンを履いた足が。そのまま、視線を上にあげると、あのモノクルをつけた男の人が立っていた。手には、白い手袋をして、黒いタキシードに黒の蝶ネクタイをつけている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る