デートなのかデートではないのか。それが問題だ

※2-2


 お姫様に広告塔を頼みにいったら、そのお姫様との言い争いに発展し、そのまま終わりとなった前回。

 あの引きでは、「もう無理じゃね?」「終わったな……」「ざまぁ!」とか思われても仕方ない。そんな終わり方だったからな。


 実際、俺も同じようなことを思った。あぁ、最後のやつ以外な。

 そんな前回の結果だけお伝えすると、お姫様の協力は得られたんだ。あの状態から何のダメージも受けずに。拍子抜けするくらい簡単にだ。


「──いいわよ。協力したげる」


 お姫様はこう仰られた。何と優しい。

 俺はお姫様のことをまた勘違いしていた。二枚舌で、腹黒な、容姿だけはいい女だと思っていた。


「マジで!? いいの! 嘘つかない?」

「嘘なんて言ってもしょうがないでしょ」

「よっしゃーー! これでバレンタインは成功だ!」


 しかし、浮かれたのも束の間だった。

 やはりというかそんなにうまい話はなく、お姫様は俺に条件を出してきたのだ。


「代わりに条件があるわ」

「タダじゃないのか……」

「勘違いしないで。こっちは、、、、互いに必要なものよ。それを、どこがいいかしら……」


 で、何故だがお姫様に俺の部屋の間取りを細かく聞かれ、ある場所を片付けるように言われて解散。

 で、俺はセバスによくわからないことをされて、気づいたら元いたところに戻ってきていた。

 で、戻ってきてしまったし、お姫様に言われたこともあるから家に帰ろうとすると、セバスもいて後ろをついてきた。


「ねぇ、尾行だとしたらバレバレだよ?」


「尾行なら姿は消す。これは姫の言ったことに関係あることだ。小僧の部屋に行く必要があるのだ」


「?」


「気にせず帰り道を行け。勝手についていく」


 セバスそう言われ、つっ立っていてもしょうがないので家へと帰った。

 その道中。悪魔は他の人には見えないらしく、セバスは気づかれずに電車をタダ乗りしていた。

 家についたらついたでお姫様に言われたことを真っ先にやらされ、終わったら「邪魔だ!」と部屋から追い出された。


 そんなわけで俺の部屋なのに部屋に入ることはできず、何か言うと立てこもった悪魔がキレるので、いったん諦めて風呂へと向かった。

 そして今は部屋に戻ってきたところだ。その結果。


「なっ──」


 ──なんということでしょう! 匠により、我が家(俺の部屋のクローゼット)が、異世界と繋がりました!


「ぶざけんな! どうすんだ、これ!?」

「お前が啖呵を切ったんだろうが……」


 この惨状を何も言わずに生み出した悪魔に詰め寄るが、セバスはすごく不機嫌だ。

 実はお姫様の部屋から出た辺りから、ずっとそんな感じはしていたけど、やっぱり不機嫌らしい。


「それはそうだけど。これはないわー。ない」

「約束は明日だな。ちゃんとしろよ?」


 それだけ言うとセバスはクローゼットの中に消えていく。

 うん。表現がおかしいことは自分でもわかってるが、そうなんだからそう言うしかない。


「つーか、これどうすんだよ!?」


 俺はこれを家族になんて言えばいいんだろう。

 いや、こんなこと言えるか。「頭沸いてんのか」って言われるわ!

 何故、こんなことになってしまった……。って、どう考えてもあのワガママ姫のせいだな。


 何が、「あんたのとこの世界が見たい。さぞ面白いんでしょう。ずいぶん自信ありそうだったもんねー。まさか、嫌だなんて言わないわよね?」だ。

 あとはそれに売り言葉に買い言葉だ。結果、上手く乗せられてしまったんです。

 策士、策士だった! あの姫はワガママなだけじゃなかった!


 お姫様からの協力の条件は「クローゼットをきれいに片付けろ」ひとつではなく、「協力する価値があるのか証明してみろ」ってのもあるのだ。

 それを、あの姫はえっらそうに上から言いやがった。俺がノーとは言えないとわかっていて、そんな無茶を言いやがったんだ。


 だが、これはチャンスか?

 あの腹黒ワガママ姫を味方にできれば全て上手くいく。つまり、バレンタイン作戦の成功と失敗が明日にかかってるわけか。


 どこをどう案内すれば良い? 好印象を与えるにはどうするのがいい?

 これは何かプランを練らねばならないな……あれっ? これって、いわゆる、デートというやつなのではないのか?

 ……まさかな。そんなはずないよネ?


 ただ2人で出掛けるだけだし、そこに深い意味はないし、むしろ俺は接待をしなくてはいけないんだからな!

 ただ男女で一緒に行動するだけであり。まあ、並んで歩いたりもするだろうだけであり。お姫様は初めての場所だし、単独行動もしないだろうし……。


「つまりはずっと一緒か!? やっぱりこれはデートなのか!?」


 その結果……。


 ……。


 ……。


 ……。


 ……徹夜した。


 デートという言葉が何度も頭をよぎり、何度もプランを見直したからだ。

 しかし見直しを繰り返していくうちに迷走し。終いには行き詰まり。俺は友人たちに相談した。


 しかし、友人たちからの返信は概ね「リア充。氏ね」だった。何の役にも立ちやしない。

 あんな奴らに相談自体が間違いだった。あれらはもう友人とは呼ばない。

 そんな元友人たちの話はいいんだ。きっと、二度と会うこともないだろうしさ。


 そんなことより今はバレンタインにチョコレートの話だ。

 バレンタインというイベントを画策しているからには、その手の場所は外せない。

 チョコレートも食べさせたい。あの食事で満足してる奴らだから、そもそもの味覚が違うかもしれないから。


 あとは町を案内することにした。何故かって? 徹夜したプランは役に立たないからだよ……。

 俺だって出来上がったものを見て驚いたさ。

 しかし、あれは初めて訪れる場所での内容じゃなかったんだ。完全に、ただの、理想のデートプランだった。

 いつか使おうと決め、プランは机に封印した。


 ──そして明日はやってきた。

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