先輩はメイド様!?
フィオネ
第1章 先輩はメイド様!?
第1話 私のメイド様
私の名前は鏡見咲(かがみさき)。高校一年生の女子高生です。
ちょっぴり伸ばした天然気味の黒髪が特徴の女の子です。趣味は猫ちゃんなどのかわいいもの動画を見ること。背が低いことがコンプレックスです。
そんなことをからかわれながらいつも友達のくだらない話をする普通の学生だ。世間一般と違う点と言ったら私が通っている学校だろうか。私が通っているのは白咲女子学院という地方の女子校だ。周りはもちろん女子だらけで男っ気もまるでない。
いままで共学に通っていたので違和感はあるけど、地道に暮らしています。だけどそんな環境になったからだろうか。私はその学校である人に恋をしてしまったんです。
〜6月下旬〜
「うふふ、やっぱりきれいだな。水瀬華蓮(みなせかれん)先輩」
机に突っ伏しながら、スマホの画面を見てニヤける私。そこにはある女性が写っていた。
「咲、また先輩見てんのあんた?」
「うわわ!!?」
その瞬間、突如として声をかけられた。
「へへ、いっつも可愛い反応するな、咲は」
「って、麻也香(まやか)ちゃん」
その突然の声にびっくりした私は、思わずその場を振り返る。そこには友達である神埼麻也香(かんざきまやか)ちゃんがいた。そこそこ背が高くて、髪も茶髪に染めてギャルっぽい格好をしている。だがそんな見た目とは裏腹に性格はさばさばとしている。
「よ!」
「よ! じゃないよ全く。私の大切な一時の邪魔をしないで」
「一時って、いつものごとく水瀬先輩を見てたんだろ?」
「え、あぁ。ち、違うよ。私はあそこにいる猫ちゃんを」
「ふ〜ん」
私は下手くそな嘘をついて取り繕ってしまう。でも麻也香ちゃんにはバレバレのようだ。それでも嘘をついて隠すのは恥ずかしなってしまうからだ。だけど最後はやっぱり自分からばらすのが常である。
「はぁ、そうだよ。水瀬先輩の写真見てたの。悪い?」
「別に悪くないよ。ただ毎回毎回見てて飽きないの? よっこいしょ」
麻也香はけらけらと笑いながら私の前に席に椅子をひっくり返して座る。そんな彼女の態度にむっとなってしまう。
「飽きないよ。先輩はきれいでやさしくて、それであのクールさがいいの。しかもハーフだからあの美しい銀髪がまたよくて、はぁ❤」
麻也香に反論しようと、先輩の特徴を挙げて行く私。しかしながらその特徴を言う度に私の頭の中の先輩が溢れてきて思わず、頬に手を当てて興奮してしまう。
「はぁ、恋は盲目というがね」
私がある人に恋している。そのお方は二年生の水瀬華蓮(みなせかれん)先輩という人物だ。
先輩は今年の春に転入してきたイギリス系のハーフ方だ。銀色の髪の毛、美しく整った顔立ち、くりくりしたきれいな碧眼の瞳。背も高くてすらっとした体型で、お胸もなかなかにある。
その美貌により、女子高でありながら絶大な人気を占めている。
そして私もそんな先輩を初めてみた時に心撃ち抜かれて、虜になってしまった。それから私はいつも彼女の事を考えていた。先輩とお話してみたいと思うこともあるが、先輩のの回りには人がいつもいる。
小心者の私には話しかける勇気などない。だから私は先輩の写真だけを見て日々を過ごしていた。しかしそんな私の行いに麻也香は不満があるようだ。
「でもそれって盗撮だろ。犯罪だよそれ」
「う、うるさいな。これは盗撮じゃないもん。たまたま風景を撮ってたら先輩が写っただけなの」
「それは盗撮犯がよく言うことだよ、やれやれ。これは没収!!」
「あぁ!!」
先輩の写真が写ったスマホが麻也香に取られてしまう。私はあせり、彼女の手を追いかける。でも麻也香ちゃんは手を伸ばして高く上げてしまう。
「か、返して私の先輩!!」
「だぁ! もう写真じゃなくて直接アタックしろ!!」
麻也香ちゃんは無理難題を言ってスマホを渡してくれない。なんてひどい人なんだ。そう彼女に憤慨しているとまた別の人物が私たちに声をかけてきた。
「あらあら、どうしたのふたりとも」
「あ、天音(あまね)」
「天音(あまね)ちゃん!!」
目の前にいたのは茶色のふんわりとした長い髪のおっとりとした女の子だった。
「そんなに騒いで、なにかあったのぉ?」
「聞いてよ、また美咲が」
「いや、麻也香ちゃんがね」
「あらあらあら。二人とも落ち着いてぇ」
私たちの早口の言葉に落ち着いた様子でゆったりと対応してくれる。
彼女の名前は柊天音(ひいらぎあまね)ちゃん。麻也香と同じくクラスメートの一人で母性たっぷりの女の子だ。いつものんびりしていて話し方も柔らかくそれでいてとてもマイペース。話していてとても落ち着くし、なによりなかなか美人さんなのである。そんな性格や容姿から、クラスの人からは癒やしの女神だなんて冗談交じりに言われている。
「やっぱりぃ、いつものように咲ちゃんが写真を見てたのね。相変わらずだね。本当に好きな気持ちがあるなら写真だけじゃなくて直接話してみたらいいんじゃないかなぁ?」
「うぐ、天音ちゃんまで」
「そうそう、天音の言う通り」
こんなに優しい笑みを浮かべているのに、天音ちゃんも敵だったみたいだ。私がこんなみっともない事ばかりしてるからしかたないんだけど。でも先輩に話しかける勇気が出ないんだよね。
「わかってるよ、そんなこと。私はいくじなしですよぉ。はぁ、もう自分が嫌になる」
そして取り替えそうとしていたスマホもどうでもよくなり、そのまま机に突っ伏したのである。
「あらあら、私は咲ちゃんに同意したほうがよかったかしら?」
「いや、甘やかすのは良くない。これでいいんだよ。とはいえ、こいつはこうなったらこの子はずっとこうなんだよ。めんどくさい」
「ぶぅ〜〜」
私にふてくされた態度を見ても麻也香ちゃんは全く慰めてくれない。こうなったら一生このままでいてやる。私の機嫌を直したければ、大好きな駅前のプリンをおごるしかないもんね。
「ったく、わかったよ。ごめんごめん、機嫌を直せよ。今日、母さんからお小遣いもらえたから、駅前のプリンおごってやる」
(!?)
その言葉を聞いて、思わず私の体はすこしだけ跳ねた。
「あら、反応がありましたね。もしかして今日は一発で欲しい物を当てたのんじゃないかしら?」
「そうかもな。だってもうすでに私の袖を掴んできてるしな。どうする、咲?」
そんなの断れるはずがない。いつもならもっと外して来るのに一発で当てられた。なんだかくやしいがここは麻也香様に従うしかない。
「……行く」
こうして私は欲望に耐えきれず、すぐさま機嫌を直して学校帰りに三人でプリンを食べたのであった。
★★★★★★★★
「ふぅ、やっぱり美味しかったなぁ。今度は自分で来よっと」
辺りはすでに暗くなり始めていた。友達との会話がついつい盛り上がってしまい、かなり遅くなってしまった。スマホの時計を見るとすでに18:50と表示している。
「あぁ、お母さんから連絡いっぱいきてる。遅くなるの伝えそびれちゃったし、心配してるかなぁ」
スマホの着信履歴を見て心配になっていき、少し小走りで家に向かう。
そして数分後に家の玄関の前にたどり着き、私は不安を抱きながらも家の扉を開いた。
「おかえりなさいませ、お嬢様!!」
「ふえ!?」
扉を開いた瞬間、なんと目の前にはとてつもない美人のメイドさんが立っていたのである。
「な、なな、なんですか!? 誰ですかあなた!? ってあれ!?」
あまりの衝撃に驚きを隠せず、狼狽してしまう私。しかしよくよく目を凝らしてその人物を見ると私は余計に驚いてしまった。
「えぇ、ええぇ!? み、み、み、み、水瀬先輩!!!!!??」
なんと目の前に立っていたメイドさんは、憧れの水瀬先輩だったのである。流れる銀髪に綺麗で美しい顔立ちと碧眼の瞳、背も高いモデル体型のこの方を間違いようがない。
「ど、どういうことですか!? なぜ先輩がうちに、いやメイド姿で!? え、え、えええ!?」
理解しがたいその状況に頭がショートしてパニックになって、おかしな声を荒げてしまう。
「あらあら、咲帰ったの!? どうしたの、そんなに大声出して」
「お、お母さん!? これどういうことなの!? なんでここ、ここに水瀬先輩が!?」
私の驚きの声に気づいてか、お母さんがのんきに居間から歩いてきたのである。そして私が水瀬先輩のことであわてふためいていることに気がつくと、ニマニマとした顔で私を見つめてきた。
「ふふふ、驚いた咲ちゃん? すごいでしょ? 実はさっきずっと電話したのはこのためだったのよ」
「ど、どういうこと!?」
「実はね、この家に美人なメイドさんを雇っちゃいました〜〜〜!!!」
母は水瀬先輩後ろに回って両肩に手をポンっと叩くと、嬉しそうにそう言った。そしてそれに続いて水瀬先輩は、私にスカートを軽くまくってお辞儀をする。
「はい。今日からこの家と咲お嬢様のお世話をさせていただく『水瀬華蓮(みなせかれん)』と申します。メイドの仕事は初めてですので至らないことは多々あると思いますが、どうかよろしくおねがいします」
「えぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜!!!????」
何もかもが意味不明すぎて、そして憧れの水瀬先輩のそのメイド姿を見て、私はただただ声をめちゃくちゃに荒げるしかなかったのでした。
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