第28話

面会室へ着くと、俺はまず通称ビックリ箱という所に入れられた。

電話ボックス位の大きさの所に椅子があって、その中に入れて待たされるんだ。


何を話そう。許してくれたのかな…どうやって謝ろう…



「四工の1229番!」


『ひゃい…』



メグの事を考えてて急に面会担当の親父に声を掛けられたから、ビックリして声が裏返った。


ビックリ箱が開き面会室に入る前に、小さな小窓から面会室の中を覗いた。そこにはブレイズからセミショートに髪型は変わっていたが、間違い無くメグが座っていた。


「内妻に間違い無いか?」


『…はい。』



ドアが開かれ、俺と刑務官が中に入った。そう、面会は刑務官も横についているのだ。


メグは俺と目が合うと、胸の横で小さく手を振ってくれた。


その瞬間、なんて言って良いのか分からない感情が一気に込み上げて来た。一番は安心感だったのかもしれない。ここへ来てから、一秒も気を抜く事は出来なかった。ここは体験した者しか分からないサバイバルなのだ。俺は涙を堪える為に必死に歯を食いしばった。泣きたいのはメグの方なのだから、あ…歯を食いしばったら話し出来ねぇ…ってかメグの顔マトモに見れねぇ…うわっ、こんなに可愛かったっけ…間違えた?…いや、絶対メグだし…うわぁ…



「…ぷっ」



メグの吹き出す声が聞こえて俺は上を向いた。厚いプラスチックで出来た娑婆とこっちを引き離す境界線の向こうで、メグは笑っていた。


『…えっ?』


「いや…ずっと下向いておっかない顔してるから」


『いや、そんなきょと…あっ』


また声が裏返った。


「ぷっ…あははは」


笑うと大きい口が余計大きくなるって気にしてるメグは、俺の前だけでは手で口を隠さないで笑ってくれた。


変わっていなかった。



良かった。



…本当に良かった。



我慢が出来なかった。俺は声を出して泣いた。鼻水全開だった。ゴメンすら言えない位泣いた。嬉しくて、悲しくて、触れたくて、抱き締めたくて、今にも子供の様に一緒に帰ると駄々をこねたかった。


『…ご…ごめ…ごめ…ん…メグ…メグ…お…俺…俺マジ…』


「TOY、いいよ。大丈夫。大丈夫だから。」


「…そろそろ時間なので。」


無情にもほぼ何も話さず面会時間が終わっちまった…。


「TOY、また来るから頑張ってね!…それと、あの歌有り難う……早く生で…聞きたいよ…」





メグの頬に一筋の涙が零れた。

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