第3話 鈴、愛香、桜

私達はここにいるよ。

ずっとずっとずっと。


ずーっとみてた。


たまに支配した。


外の世界は楽しいから。

悪さもした。


咲が一途なのを知っていたけど

何度も何度も他の男と咲になりすましては

体を重ねた。


羨ましかっただけ。

本当のぬくもりに触れられることができて

いつでもろくでなしの男ばっかりよってくるのに

気付かない咲さえ、羨ましかった。

だって私達は体を持ってない。

ぬくもりを味わうことなどできないから。


嬉しいことに咲にはいつでも彼氏がいた。

その度に邪魔をしてやった。

中には咲の味方もいたけど。

かならず権力のある愛香にはいつも

だれも勝てなかった。


愛香には演技の才能があった。

まるで完全な咲を演じることができる。

そして男を惑わす魅力も持ち合わせていた。

簡単だった。

バカな男は簡単に咲を抱いた。

愛香だとは知らずに。

ただ、愛香には欠点が一つ。

咲を知らないこと。

でもそれもすんなりいった。


助手をつけたのだ。

指名されたのは鈴。

頭がよくかつ、唯一咲の過去を

みることができる。

部屋と外の世界を行き来することができた。

咲とも仲がよく、話をすることができた。


鈴はそれが間違いだとは知らずに

権力のある愛に従った。

ある事件で外されてようやく

咲の本当の味方になったけど

未だまだ本性はわからない。


桜は鈴が失敗を犯したあと

あてがわれるようになった。

純粋そうで計算高い。

欲がなくただ愛されたいと

抱きしめられたいと

ぬくもりがほしいと願うそれだけ。

その為に愛香に尽くした。


咲が、本当のことを知って傷ついても

みな、いいじゃん。うらやましいんだから。

ぬくもりくらいわけて。

そんな気持ちだった。




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