悪役令嬢はまた落ちていく……

ニート

第1話

 管制塔、管制塔!! どうなってるんだ?」


ピーピーピーピーッ!!


「高度340へただちに降下してください!」


「TCASは上昇しろって言ってるじゃないか、どっちなんだよ!?」


「もう時間がない、今すぐ降下しなければぶつかってしまいます!!」


「おい見ろ!」


「あt・・・・・・ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!




「おはよう、おはよう!」


バッ!


「ハッ・・・・・・」


ベッドから跳ね上がるようにして目を覚ました。


「あぁ、ママおはよう・・・・・・。」


「あんた今日から旅行なのにそんなんで大丈夫なの? うなされてたわよ」


「うーん、なんかちょっと変な夢を見てたみたいだけど大丈夫だよ!」


そのまま立ち上がり着替え始めることにした。


ああいう夢を見るのがはじめてじゃないのは事実だ、ただママにはわざわざ言うほどのものでもないだけである。


「朝ごはん出来てるから支度して降りて来なさい!」


「はぁーいママ!」


ママはそう言って階段を下りて行った。


私もしばらくしてそれに続く・・・・・・そしてそのまま洗面所へ向かった。


リビングへ向かうとすでに弟が朝食を食べ終えようとしているところだった。


「ねーちゃんおっせぇ・・・・・・寝坊かよ?」


「うっさい、今日はたまたま私より早く起きれただけでしょ!」


「朝から喧嘩してないでさっさと朝食べて行きなさいな」


「はーい!」


私もすぐに朝食を食べ終えると歯磨きして荷物の最終確認をし始めた。


今日から待ちに待った合宿である。みんなとしばらく寝食をともにするとなると不安もあるが楽しみで仕方がない


のだ。そのためにもらった航空券のチケットを握りしめわくわくを必死で押さえながら忘れ物がないかチェック


していくのだった・・・・・・・・。


今回の合宿で私の運命は決まるかもしれない・・・・・・そうそれだけ私にとって重要なものだ。


気合いを入れてキャリーケースに詰め込めるだけ荷物を詰め込み今一番流行っている(と自分では思っている)


服を着て地元の空港へと向かう。昨日まで学校があったので長く練れたわけではない、だからあんな変な夢を見た


のだろう、そう私の人生は今日新たなステージへ進むはずなのだ!


「じゃあママ、行ってくるね!」


「気を付けてね!」


キャリーケースを引いて最寄りの駅へ向かった・・・・・・。


空港は思った以上に混んでいるようだった。


週末だがスーツを着たビジネスマンが異様に多くせわしなく歩き回っていた。


私の搭乗する便はヤ・・・・・・カンエアー1620便か・・・・・・。


歩いていると航空会社の従業員がプラカードを持って立っている。


手配してもらった航空会社はLCC,いわゆる格安航空というやつだった。ん・・・・・・よりにもよってその


プラカードを持っている会社じゃん・・・・・・無料でチケットもらったわけだし断るわけにはいかないが


見るからに予算削ってそうなとこだなぁ・・・・・・。


この便は遅れている……悪天候のためである。


しかしそれは仕方がないとしてだ、この航空会社はLCCの中でもとびきりケチなのか重量計測を市販の体重計を


使って行っていた……どんだけ原始的なんだよ?


せっかく大手の芸能プロダクションのオーディションに合格したというのに手配してきたのがこんなのとは


まだまだ私たちはまともに扱われてはいないということなのだろう、この世界は厳しいのだ……。


「こちら機長です、悪天候により遅延しましたが当機は間もなく離陸いたします。シートベルトをお願いします」


2時間遅れでようやく出発するようだ……


「フラップオーケー!」


「これで離陸前チェックリストは全部だな、じゃあ行くか」


「機長は今日で勤続20年、その前は自衛隊でイーグルドライバーでしたっけ、F15とこの883どっちが快適


ですか?」


「もちろんこっちさ! そして今日は妻との結婚記念日でありもうすぐ娘の誕生日だ。早く仕事を終わらせて


家に帰ってやらなきゃな。」


ゴゴゴゴゴゴ……


「……V1……」


「ローテート!!」


「V2……」


ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ……


「おかしい、エンジンの出力が足りていない……」


ピーピーピー!!


主警報音がけたたましくなりながら方向舵が振動し始める。スティックシェイカーである。


「どうなっているんだ!?」

プルアッププルアップ……テレインテレイン……

警告音はしだいに増えて大きくなってきている。

「わかりません、あぁーもうだめだああああああああああああああああ!!」


きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!


ズドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!


地上に大きな爆発音が轟きまわりにいた住民が驚いて集まってくる……。

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