第9話 Nostalgia(なつかしさ)
山田はようやく到着したという様子であった。僕自身、いつまでバリ島へ来れるかはわからない。チャンスがある時は、そのチャンスを生かして行きたいと思った。
僕と山田は、ホテルのロビーでチェックインをした。改めてエディに明日のスケジュールを確認した。明日、朝9時にロビーでエディと待ち合わせとした。その後はまずは、ヒーリング予約を入れたバリアンの元へ行く。その後、ブサキ寺院とルンプヤン寺院へと向かう予定だ。
エディが、僕と山田を部屋へと案内してくれた。僕と山田のルームは、26号室だった。部屋のドアを開けると、目の前にプールがある。部屋も結構広くとられており、ベッドルームとリビングルームが別々のものだった。ベッドもセミダブルのベッドが2台部屋に収まっている。
フロントから部屋までの道のりにあるプールサイドを通って行く。その小道にはランプがともされており、その光がさらにバリ島の夜の妖艶さを増していた。プールサイドには、カウンターバーがあり。そこで4名の滞在者が、ドリンクを飲んでおり、バリ島の夜を仲間と一緒に楽しんでいる様子だった。
僕と山田が滞在する部屋のドアは、バリ島の伝統的な木製のドアの作りになっていた。バリ島に滞在しているって雰囲気が出て、僕はかなり気分上々になった。山田もこのコテージタイプの部屋をかなり気に入っている様子だった。
山田「酒井さん、この滞在コテージタイプの部屋っていい感じですね。バリ島の雰囲気が出ていますね。トラディショナルな感じですね。」
僕「そうでしょ。こんな感じがバリ島にきたって感じですよね。なんだか落ち着くんですよねこのコテージのつくりはオールドバリニーズの建築をまねたもののようですね。独特の雰囲気が出ていますね。」
山田「酒井さんが、バリ島に何度もお越しになっている理由がなんとなくわかる気がします。俺もこのバリ島の空気感、大好きです。直感ですけどね。」
山田もこのバリ島の雰囲気?というか空気感に、かなり酔いしれている様子だった。僕の好きなバリ島を山田も気に入ってくれてうれしく思った。
僕と山田は、早速、ベッドの振り分けをした。山田がドアに近いベッド、僕が奥の壁側のベッドとした。山田は窓際のが落ち着くらしい。もちろん、僕はいつものように部屋の奥のベッドが何となく落ち着く。このパターンは前回のシェムリアップと同じものだった。それぞれ荷物をスーツケースから出し、12日間の滞在開始となる。僕はいつものようにバスタブにお湯をはり、入浴の準備をした。また、部屋は1Fのため蚊取り線香を取敢えず炊いた。虫よけである。特に蚊はいろいろな病気の媒介者であるため、念には念の注意が必要である。
僕「山田君。先にバスタイムにしますか?僕はバスタイムとしちゃいますけど。」
山田「酒井さん、お先にどうぞ。俺はスーツケースから荷物を出しておきます。酒井さんの後に、俺もバスタイムにしちゃいます。」
僕「了解です。湯船に体を沈めると、本当に疲れが取れますからね。それと気分がリフレッシュされますしね。」
僕は、早速、フライトの疲れをとるためにバスタブのお湯を入れ始めた。お湯が湯船にたまるまでは、バスタブの縁に座り、足を湯船のお湯に下していた。足の脹脛の張りがほぐれていく感じがした。
ちょうどいい具合の温度でお湯がたまった。僕はそのお湯の中へと、体を沈めていった。フライト中は、汗をかいていないように思っていたが、汚れは体に付着している。僕は体を湯船に沈めながら、今回のマルチンへの供養をどうすればよいのかを考えていた。
まずは、マルチンと初めて出会った場所を訪れてみたい。その後、マルチンとよく行っていた場所を訪れてみたいと思った。そうこう考えていたら、あっという間に時間が過ぎていた。僕がバスタイムを終了し、ベッドルームへ向かった。
山田は、スーツケースから荷物を出し終わっており、ベッドに寝転がりガイドブックを読んでいた。山田にとっては初めてのバリ島だから、興味津々な思いと、若さからあふれ出るその好奇心で満ち溢れているに違いない。その空気感が伝わってくる。
僕「山田君、お待たせ。バスタイムどうぞ。お湯を新しく張っていたから、すぐに入れますよ。」
山田「ありがとうございます。酒井さんって気づかいがすごいですよね。もてますよね。じゃ、今から俺のバスタイムとします。俺がお風呂から上がったら、食事でも行きませんか。」
僕「そうだよね。なんだかお腹すいちゃったよね。夕食もきちんと取りたいしね。おすすめのレストランがホテルの近くにあるのでそちらへいきましょう。ゆっくりとバスタイムにしても丈夫ですからね。」
山田「了解です。酒井さんの行きつけのお店ですね。そんな話をしていたらなんだかおなかが本格的にすいてきちゃいました。俺、ちゃんとした食事したいです。インドネシア料理といえば、ナシゴレンとかですかね。」
僕「そうですね。ナシゴレンは有名ですからね。ミーゴレンもおいしいですよ。ナシチャンプルもおいしいですよ。」
山田「そうなんですね。楽しみです。とりあえずはお風呂入ってきますね。」
山田はバスルームへ向かった。僕はスーツケースから荷物を取り出し、滞在の準備を部屋に整えた。ベッドに横になり地球の歩き方に目を通していた。そういえば、バリ島はこの時期は乾季だから、雨は滅多に降らない。湿度も低いため過ごしやすい。念のために、蚊取り線香は常時、部屋の中で焚き続けておこう。虫よけスプレーは、もちろん必需品だ。
僕は山田が入浴中に、夜のレギャン通りへ繰り出す準備をしていた。そうしたところ、空耳なのか「JYUZEN。」と僕の名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。僕がだれか呼んだかなって思っていたところ、それと同時に山田がバスルームから出てきた。
山田「すごく気持ちよかったです。フライトの疲れが取れましたよ。バスタブも大理石風になっていて、かなりゴージャスなつくりになっていて満足です。お湯の温度もちょうどよく、シャワーの水圧もよかったですよ。実のところ、シャワーの水圧にはあまり期待はしていなかったんですけどね。」
僕「山田君、お気に召していただき何よりです。一通り準備できたら、夜のバリ島の世界へと出かけますか。この時期は、夜中にバルンという獅子舞のような被り物をした夜の祭りのようなものもありますから。路で突然出来わすって感じですよ。」
山田「そうなんですね。俺、すごく楽しみです。バリ島って感じでいいですね。神事が身近にあるんですね。さすが神様の棲む島ですね。」
僕「そうですね。バリ島は信仰深い人々の島ですからね。日本も昔はそうだったんでしょうけどね。現代はそういったものを敬う気持ちが少なくなってきていますね。じゃ、夜食をきちんととっていないから、僕のお気に入りのレストランで食事でもしましょう。」
山田「OKです。すぐに準備しますね。」
こんな会話をしていたら、時刻が現地時間の20時30分になっていた。食事には、いい感じの時間であった。僕が先ほど耳に入ってきた声って、マルチンからのメッセージだったのかどうなのかわからないが、僕にはなんだかマルチンからの声に思えた。
山田「酒井さん、お待たせいたしました。俺の準備はOKですよ。酒井さんはいかがですか。」
僕「僕もOKですよ。じゃ、今からバリ島の繁華街のジャラン・レギャン通りへ繰り出しましょう。」
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