第4章 4 デヴィットの尋問
「デヴィットさん、学院に戻って授業に出なくても大丈夫なのですか?」
コーヒーを飲み終えたデヴィットに尋ねると彼は言った。
「ジェシカ・・・。実は・・・今の学院はもう以前とはすっかり変わってしまったんだ。授業内容も魔法や剣術と言った実践的なものばかりで、経営学や商法、物理や歴史・・・・そのような授業は一切排除され、教授は軒並みクビになり、代わりに怪しげな魔術師達が現れたんだ・・。」
「え・・・?そ、それじゃジョセフ先生が辞めさせられた本当の理由って私じゃ無かったのかも・・・?」
「ジョセフ・・・?先生・・・?誰だ?随分親しげな言い方だな?」
「ええ、天文学の講師の方で・・色々と個人的に親しくはさせて頂いておりました・・・ので・・・?」
あれ?何だろう。話しているうちにデヴィットの眉間にシワが・・・。
「あ、あの〜どうかされました・・・か・・?」
「ジェシカ・・・個人的に親しく・・とはどのレベルの事を言っているんだ?」
何故か凄みを聞かせた声で詰め寄って来る。
「あの・・・どのレベルと言われても・・・基準が分からないので何とも言えないのですが・・・。」
「うん・・。そうだな・・・言われてみればどのレベルと漠然とした質問では確かに答えられないな・・・。よし、これならどうだ?」
デヴィットは改めてソファに座りなおすと言った。
「まずレベル1、個人的に挨拶をする程度。レベル2、個人的に会話をする程度。レベル3、一緒に学院で食事をする仲。レベル4、休日に一緒に外出する仲・・・どうだ?ジェシカ?この中ではどのレベルに該当するんだ?」
あまりに真剣な様子で尋ねて来るので・・・ここは正直に答えてあげた方が良さそうだ。
「では・・レベル4・・・でしょうか・・?」
「な・・・何?!レ・・・レベル4だって・・・?!そ、そんな・・・。」
デヴィットはかなりショックを受けたようで、ソファの背もたれにドサリと倒れ込んだ。え・・・?レベル4でそんなにショックを受けるの?それなら私とデヴィットの関係はどうなるの?私達・・・男女の関係を持っていますよね?しかも2回も・・・。
「よ、よし・・それでは次のレベルへ行くぞ・・・。」
「ええ?!まだ続くんですか?!もう・・・そこまで聞けばいいと思うのですが・・。」
それよりも他にする事があるんじゃないのだろうか?こんな会話・・・はっきり言って私には不毛なのだけど・・。
「だ・・・駄目だっ!この際・・・2人の関係を明らかにしておかなければ・・・!ではレベル5・・・。」
「あーっ!もう、分かりましたってば!ちゃんとお話しします。いいですか、よく聞いておいて下さいね。」
「ジョセフ先生とは先生のご自宅に招かれて先生の手作りの夕食をご馳走になるような関係でした。去年の流星群を一緒に見た事もありますし、プレゼントも頂いた事があります。ちなみにジョセフ先生からは告白されていますが、私は返事をしておりません。以上ですが・・・。あ、そういえば・・ジョセフ先生とマイケルさんは親友同士ですよ。」
「ちょ・・・ちょっと待て・・・ジェシカ・・・。」
話を聞き終えたデヴィットは震えながら私を見た。
「ジェ、ジェシカ・・・・。お、お前・・・教師の家に行って手作りの食事をご馳走になってるのか?2人きりで?」
「はい、ジョセフ先生はこの町に住んでる方ですし・・・。」
「流星群を一緒に観たと言っていたが・・・・。」
「はい、途中まで一緒に観ていたのですが・・・マリウスが現れて・・結局私はマリウスに拉致されて2人で流星群を見る事になってしまいましたが・・・。あの時は身の危険を感じて、ちょっと怖かったですね。」
「おい!ちょっと待て!何だ?その話は・・・。マリウスとはお前の従者だよな?あの目つきがちょっとヤバ気な・・・。」
「はい、そうです。マリウスはかなりヤバイ人物です。」
私は即答した。
「身の危険を感じた・・・と言っていたが、ひょっとして襲われそうにでもなったのか?」
「ええ、まあそんな所ですね。」
うん?ジョセフ先生の話をしていたのに、いつの間にかマリウスの話にすり替わってるよ。
「な・・・何だってっ?!くそっ!そうと知っていればあの場で叩きのめしてやったのに・・・!」
ダンッとテーブルを拳で叩くデヴィット。ひええええ・・・相変わらずの熱血だ。
「ま、まあ・・お前の従者の話はもういい。それよりそのジョセフとかいう教師の話だ。プレゼントを貰ったと言っていたが・・・?」
「ええ、それは私の従者・・マリウスを危険視したジョセフ先生がお守としてくれたマジックアイテムのプレゼントですよ?」
「畜生!またマリウスか?!許せん・・・今度偶然会ったらぶん殴ってやるっ!」
悔しそうに唇をかむデヴィット。お願いだから落ち着いて欲しい。
「ま、まあいい。それよりジョセフの話だ。」
あ・・・とうとうデヴィットがジョセフ先生を呼び捨てにしちゃったよ・・・。直接指導は受けていなかったのかもしれないけど・・相手は先生なんですよ?もういい加減こんな話終わりにしなければ、延々と続きそうだ。よし、ならば・・・。
コホンと咳ばらいをすると私はデヴィットの目をじっと見つめて言った。
「デヴィットさん・・・。私は確かにジョセフ先生に(何回か)告白はされましたが・・・付き合った事はありませんからね?あくまで教師と生徒・・もしくは友達のような関係でしたから。むしろ・・・。」
「むしろ?」
そこで私はデヴィットとの距離を詰めて、彼の耳元で囁くように言った・
「デヴィットさんとの方が・・・よほど深い関係ですからね?」
そう言って、サッと身体を引くと・・・デヴィットは耳まで顔を赤く染め・・・
「す、少し外の空気を吸って来る!」
そう言うと部屋から慌てて出て行った。
ふう・・・やっとこれでこの話は終わりにする事が出来た—かな?
そしてそれから約10分後・・・。
「ただいま、ジェシカ・・・。」
デヴィットが何故か憔悴しきった様子でホテルへ戻って来た。
「デヴィットさん、一体どこまで行ってたのですか?随分お疲れの様ですが・・。」
「い、いや。気を落ち着かせるためにホテルの外で、剣の素振りを300回やって来ただけだ。」
「へえ~そうですか。300回・・300回?!」
「何だ。それ程驚く事か?こんなのは当たり前だと思うが・・・?」
「はあ・・そうなんですね・・・。」
300回が当たり前なんて・・・。そう言えば毎朝のトレーニングも欠かしたことが無さそうだし・・。デヴィットはある意味ストイックに生きているのかも・・。
「所でジェシカ。腹が空かないか?朝の食事はどうする?」
言われてみればお腹が空いてる。時間はもう9時になろうとしている。これじゃ流石にお腹すくわ・・。
「この部屋でルームサービスを取る事も出来るが・・・。どうする?」
ルームサービス・・・ああ、何と優雅な響きなのだろう。でも・・・。
「いえ、外で食事をしてこようかと思います。実は朝食の後、役所に用事があって行きたいので・・・。どのみち、マイケルさんは二日酔いが酷そうなので、食べ物の匂いを嗅ぐだけで気分が悪くなると思いますし・・・・やめておきます。」
「そうか。言われ見れば確かにその通りかもしれないな。よし、ジェシカ。それなら俺も一緒に行ってもいいだろう?」
「ええ。勿論です。出来れば・・・なるべく1人にならない方がいいかと思って。何処にソフィーの仲間が潜んでいるか分からないので・・・。」
笑顔でデヴィットに応える。
但し・・・・夜には酔い潰れて頂きますけどね—。
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