第3章 2 彼の行方
ええっ?!そ、そんな・・・。貴方に将来を捧げます?知らない、私はそんな話は全く知らないっ!!
「ま、待って下さい。私がダニエル先輩に通帳を預かって貰った時、先輩はそんな話一言も持ち出しませんでしたけど?」
「それは・・・ひょっとすると・・・。」
マイケルさんが再び意味深な事を言って来る。
「ああ、ひょとするかもしれない。」
デヴィットまで・・・!
「あの、もったいぶっていないで教えて下さいよ。ひょっとすると・・・ってどういう意味ですか?」
「それは多分、ダニエルは通帳と引き換えにジェシカに結婚を迫ってくるかもしれないって事だ。」
デヴィットが言うと、マイケルさんは腕組みをしながら頷いている。あのダニエル先輩が?はは・・まさか・・・。
「嫌ですね~。2人とも・・・考え過ぎですよ。ダニエル先輩はそんな人では無いですよ。」
掌をヒラヒラさせながら私は言うが、2人は至って大真面目だ。
「いいか、ジェシカ。もしダニエルが結婚の約束をしなければ通帳を返さないと言って来た時には必ず俺に相談しろ。俺があいつを倒してでも取り返してやるからな。・・・それでダニエルは強いのか?」
デヴィットは何やら物騒な事を言って来る。
「駄目ですよ、倒しちゃ・・・。ダニエル先輩が強いかどうかは分かりませんけど。」
「俺もその時は及ばずながら力を貸すからね。」
「マ、マイケルさん・・・。あまり妙な考えは起こさないで下さいね?そんな事よりも・・・ノア先輩は今何処にいるんでしょうか・・・。」
「よし、俺はあいつの寮の部屋番号を知っているから様子を見て来る。この場所は人目に付きにくい場所だから、ここ2人は待っていてくれ。」
言うが早いか、デヴィットはすぐに転移魔法を使ってその場から消え去った。
そしてその様子を見ていたマイケルさんが言った。
「いや~。初めて転移魔法と言うのを見たけど・・・凄い物だね。目の前でパッと人が消えてしまうのだから・・。それでお嬢さんも転移魔法を使えるのかい?」
マイケルさんが目をキラキラさせながら尋ねて来た。
う・・・何だかものすごく期待に満ちた目を向けて来るのだけど・・・・私が一切魔法を使えないと分かったら・・・幻滅されてしまうかな・・・?
「い、いえ・・・。お恥ずかしながら私は魔法を一切使う事が出来なくて・・・。」
「ふ~ん。そうなのかい?だとしたら・・お嬢さんはその内、誰も使えなかったようなすごい魔法を使えるようになるかもしれないね。」
意外な事を言って来た。
「え・・・?まさか・・・。何故そんな風に思ったのですか?」
「うん、実は・・・。」
そこまでマイケルさんが言いかけた時、突如としてデヴィットが私達の目の前に現れた。
「デヴィットさん、どうでしたか?ノア先輩は寮にいましたか?」
「いや・・・いなかった。だが・・・。」
何故かデヴィットの表情が優れない。一体どうしたのだろう・・・?
「デヴィットさん。ノア先輩について何か・・・情報を得られたなら教えて下さい。」
「あ、ああ・・・。実は・・・男子寮の寮夫に念の為、尋ねてみたんだ。そうしたら教えてくれたよ。『ワールズ・エンド』で忽然と姿を消したノア・シンプソンは再び『ワールズエンド』で頭から血を流した状態でソフィーと聖剣士達によって発見されたって。そしてその怪我を負わせたのがジェシカ・リッジウェイだと言ってるんだ・・・。どうやら、たまたま見回りをしていたソフィーがジェシカが石を振り下ろして、ノアの頭に叩きつけたのを見たと証言したらしい。それで今は絶対安静で療養の為に神殿に運ばれて手当てを受けている・・・そうだ。」
え?ノア先輩が大怪我・・・?しかも怪我を負わせた人物が私だとソフィーが証言を・・?!挙句に治療の為に神殿に運ばれて、今は会う事すら出来ないなんて・・・。
「そ、そんな・・・。」
私は絶望的な気分になり・・・・俯いた。
「お嬢さん。・・・大丈夫かい。」
マイケルさんが心配そうに声を掛けて来た。
「非常にまずい事態だな・・・。今や神殿は完全にソフィーの物と化してるんだ。聖女の奇跡の力と称して、あの神殿では連日ソフィーが聖剣士や神官・・それに兵士達の前で自らの聖女の力とやらを披露しているらしいが・・・俺はそれがどんな物なおのか見た事も聞いたことも無いから、全く分からないが・・・。恐らくそれは真っ赤な嘘だと思う。」
デヴィットが声を潜めながら言う。
「・・それはどういう事なのかな?」
「実は・・・聞いてしまったんだ。神殿で何が日々行われているのか気になって一度だけ神殿に忍び込んだことが一度だけあったんだ。だが生憎・・・結局ソフィーの奇跡の力とやらのお披露目はこの日は無かったけどな。その後、俺はソフィーの後を付けた。するとソフィーが誰かと神殿の中庭の方に行くと足を止めて・・・こんな所に何の用事があるかのと思って隠れて様子を見ていたらローブを羽織った人物が現れて、会話を始めたんだ。相手はフードを被っていたせいで男なのか女なのかも分からなかったが、その相手にソフィーがこう話していた。やっぱりお前が作るお香は催眠暗示をかけるのにすごく有効な手段だ・・・と。」
お香・・・催眠暗示・・・?・・ひょ、ひょっとして・・・!
「それじゃ、恐らくその聖女が催眠暗示をかけて自分があたかも奇跡を起こしている姿の幻覚を彼等に見せていただけなのかもしれないね。」
マイケルさんが素早く答えた。うん、私も今同じ事を考えていました。
「デヴィットさん・・・。ひょとするとソフィーはその手を使って聖剣士や神官達を暗示にかけて自分の支配下に置いていったのでは無いでしょうか?」
「ああ、多分そうだろうな・・・。ノアの事も・・・催眠暗示にかけるつもりなんだろうな・・・。いや・・もうかけられているかもしれない・・。」
言われて見れば確かにソフィーはノア先輩を気に入っていた。それじゃ・・ひょっとするとノア先輩はもう・・・?!
「そ、そんな・・・何とかしないと・・・。こ、こうなったら私が直接神殿に行って・・・。」
「「そんなのは駄目だっ!!」」
・・・2人から怒られてしまった。
「ジェシカ、焦る気持ちは分かるが・・・・一旦ノアの事は置いておこう。代わりにダニエルを訪ねてみたらどうだ?」
デヴィット言った。
「そうですね・・・。どのみち以前からダニエル先輩には魔界から戻ってきたら真っ先に、会いに行こうと思っていたので・・・。」
すると、途端に機嫌が悪くなるデヴィット。心なしか・・・マイケルさんも何となく面白くなさそうな顔をして私を見つめている。
「ジェシカ・・・それ程までにダニエルに会いたかったのか?・・・昨年の事だったか・・少しの間だっだけど、ジェシカ・・・お前ダニエルと恋人同士だったことがあるんだろう?あの時は物凄くその話でもちきりだったからな・・・・。だからなのか?・・・だから・・あの男に通帳を預けたのか?かつてはお前の恋人だったから・・?」
「ええ!お嬢さん・・・そうだったの?」
「ち・・・違いますよっ!一番通帳を預かって貰うのに適した方だと思ったからです。ダニエル先輩は・・・ノア先輩の親友だったんですよ?だから私は魔界へ行く前にノア先輩の事を伝えたんです。・・・・最も・・・その時はダニエル先輩は既にノア先輩の事を忘れていましたけど。」
「おい、ちょと待て・・・。ダニエルはノアの事を忘れていたって・・言ってたけど・・考えてみるとジェシカ、何故お前はノア・シンプソンの事を・・覚えていたんだ・・・?」
声を震わせながらデヴィットが私に尋ねて来た。
あ・・・こ、これは・・・非常にまずいかも―。
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