第2章 2 大金ゲット!
その後、ライアンとケビンからしつこく夕食を一緒に食べようと誘われたが、精神的に疲れた等と適当な言い訳をして、今私は大人しく自室の寮へと引きこもっている訳だ。
「はあ~・・・マリウスと一緒に実家へ里帰りするのは気が重いなあ・・・。」
それにジェシカの家族とも今迄一度も会うどころか、手紙のやり取りすらした事が無かったので、全く人物像と言うものが掴めない。
いざ、私を目の前にしたときのジェシカの家族の反応が・・・はっきり言って怖い。
一目で外見は同じでも自分たちの娘では無いと見抜かれてしまうのでは無いだろうか?
なのではっきり言ってしまえば里帰りなどしたくはない。けれども実家へ行き、ジェシカの私物を(私好みでは無い衣類やアクセサリー)持って現金化して、一刻も早く何処か遠くへと逃げなくては。
逃げる・・。でも一体何処へ逃げれば良いのだ?女1人でも生きて行けるような国がこの世界には果たしてあるのだろうか・・。
「そうだ・・・エマだ!エマに聞いてみよう。そしてついでにさり気なくお別れを告げれば・・・。」
でも帰省するまでにあと3日はある。それに明日はジョセフ先生と流星群を見る約束をしている。そうなると・・エマに話をするのは、明後日の方が良さそうだ。
となると、今私がするべきことはただ一つ。
「よし、さっさと荷物整理をして趣味の悪いアクセサリーや衣類はまとめて売りに出しに行こうっ!」
それから私は大急ぎで荷造りの準備を始めた。
「うわ、何よ。このドレスは・・っ!これじゃまるで露出狂女じゃ無いの!それに何なの?このネックレスは・・・大体、いつネックレスなんかする機会があったっていうのさ。」
ブツブツ独り言を言いながら、いるもの、いらないものを仕分けし終えると、トランクケース3つ分も不必要な衣類やアクセサリーが出てしまった。
「これでよし・・・と。時間は今何時だろう?」
部屋の時計を見ると時刻は午後5時になっていた。辺りはすっかり暗くなっているし、外はとても寒いのは承知の上。
「う~外に出るのは辛いけど・・一度に売りに出せないから、今日の所は1つだけ売りに行こうかな。」
私は分厚い防寒コートに、本日ケビンがプレゼントしてくれたマフラーを首に巻くと、重いトランクケースを引きずって、セント・レイズシティへ続く門へと向かった。
大きなトランクケースを引きずって歩いている私を途中何人かの学生達が不審げにこちらを見ていたが、そんな事いちいち構ってはいられない。
「あら?ジェシカさんではありませんか?」
もうすぐ門へ到着と言う所で、不意に背後から声をかけられた。その声に振り向くと、そこにいたのはリリスだった。デートの帰りだったのだろうか?見知らぬ男子学生と一緒に寒空の下、立ち話をしていた。
「あ、こんばんは。リリスさん。」
私は愛想笑いをすると、一緒にいた男子学生はペコリと頭を下げてきた。
「ジェシカさん、そんな大きな荷物を持って今から町へ行くつもりなのですか?」
リリスは驚いた様に私を見ている。
どうしよう、まずい、非常にまずい!
「え、ええ・・・。ちょっと急用を思い出して・・・。」
冷汗をかきながら愛想笑いをする。
「え・・?今から・・・ですか・・?」
首を傾げているリリスだが、一緒にいた男子学生が何事かリリスの耳元に囁いた。
途端に顔を赤らめるリリス。
「あ、あの・・ごめんなさい。余計な詮索をしてしまって・・・。どうぞ今夜はごゆっくりしてきて下さい。それじゃ私達はもう行きますね。」
そう言って頭を下げて学院へ帰って行く2人。
はて・・・?今のは一体なんだったのだろう・・・?私は首を傾げた。
でも知り合いに見つかればあのような反応をされる事は分かった。
一刻も早く町へ行ってさっさとトランクケースごと売りに出さなくては!
私は必死でトランクケースを引きずって門をくぐり、町へと向かった。
しかし・・・まさか彼に見つかり、後を付けられていた事には全く気が付いていなかった。
「お待たせ致しました。素晴らしい品々をどうも有難うございました。」
私は今リサイクルショップへ来ている。ここは以前にも訪れた場所で、道順も把握していたので迷うことなく店へと来ることが出来た。
私にはこの世界の物の価値の値段が未だにあまり分かっていない所があるのだが、今回は店側との交渉を頑張った。頑張って頑張って、思った以上の値段で売る事が出来た。
「衣類17点、アクセサリー28点でお値段はだ・・・大金貨5枚と・・金貨8枚になりま・・す。」
店主の若い男性が引きつったような笑みを浮かべながら私に金額を告げながらお金を手渡してきた。
この世界では金貨10枚で大金貨1枚となる。大金貨1枚の値段は大体日本円に換算すると20万円で、金貨1枚は10万円位・・・となると今私は180万円の大金を手に入れたことになる。
「ありがとうございました・・・。」
若干やつれ気味の店員の声に見送られて、私は店の外に出た。
コートの下に隠す様にしまった金貨の入ったショルダーバックを肩にかけ、私は白い息を吐きながら夜空を見上げた。
今、私の手持ちのお金は180万円・・そして自室の金庫にしまってある50万円と合わせて230万円。明日もトランクごと不要な物を売り払えば少なくとも300万円以上にはなるはず・・・。そのお金を逃亡資金に充てて、後は自分の住む場所を見つけるまではどこか安い宿を借りて、そこで仕事を探さないと・・・。
そんな事をブツブツ言いながら考え事をしていたので、私は自分の背後に近付いてきている人物に全く気が付いていなかったのだ。
「・・い。おい、ジェシカッ。」
「!!」
いきなり肩に手を置かれ、私は飛び上がりそうになるくらい驚いてしまった。
恐る恐る振り向くと、そこに立っていたのはグレイだった。
「グ、グレイ・・・・。」
私のあまりの驚き様にグレイも戸惑っている様だった。
「あ・・・わ、悪い・・・。いくら呼びかけても気付きもしなかったから・・。まさかジェシカがそれ程驚くとは思いもしなかったよ。驚かせて本当に悪かった。」
驚くも何も、腰が抜けてその場にへたり込んでしまった。
「グレイ・・・こんな時間まで町にいたの?」
私は助け起こして貰いながらグレイを見上げて尋ねた。
「何言ってるんだジェシカ。それはこっちの台詞だよ。お前こそどうしたんだ?
もうすぐ夜になるって時間にあんな大きなトランクケースを引きずって町へ来たんだろう?・・・あの姿を見かけた時は正直驚いたぞ。だから・・悪いとは思ったけど心配だったから後を付けてきたんだ。」
気まずそうに言うグレイ。
ええーっ!み、見られていた・・・。まさかグレイに見つかり、あまつさえ後までつけられていたなんて・・・。
私が呆然としている所を、グレイが質問して来た。
「なあ、ジェシカ。どうしてこんな時間に町へ1人でやってきたんだ?それにあのトランクケースはどうした?ひょっとして、そこの店で売ってきたのか?」
立て続けに質問してくるグレイ。
う~ん・・・まあ別に話しても差し支えは無いかな・・?でもその前に・・。
「ねえ、マリウスには会ってないよね?」
「え?マリウスにか?アイツの姿は見かけていないけど?」
そうか、ならマリウスには見つかっていないと考えて大丈夫かな・・・。
「それじゃ今から言う事は絶対にマリウスには内緒にしておいてね?」
グレイに念押ししておく。
「ああ、分かった。」
「あのトランクケースの中身はね、私の衣類やアクセサリーが入っていたの。でも正直言って趣味が合わないから売りに出す事にして、今運んで来た訳。」
「ふ~ん・・・そうか。でもこんな時間にわざわざ来る必要があったのか?売りに出すならいつでも出来ただろう?」
中々食い下がって来るわね・・・。私はグレイをチラリと見ると言った。
「ま、まあまあ。ねえ外は冷えるから2人で何処か温かいお店でちょっとお酒でも飲んで行こうよ。私が奢るからさ。」
よし、お酒に誘って有耶無耶にしてしまえ。ついでにグレイには尋ねたい事が山ほどあるし—。
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