ユリウス・フォンテーヌの備忘録 —②

 俺が謹慎部屋へと押し込まれて、もう1週間が経過しようとしている。

生徒会長のこの俺が生徒会役員共にこのような仕打ちを受けるとは一体どういう事なのか?

おまけに誰一人として面会に来やしない。いや、1人来たか。確か天文学の准教授で名前はジョセフ・・・なんだったか?

あの男は得体が知れない。分厚いレンズ眼鏡に伸び切った前髪。あんな外見だから若いかどうかも分からない年齢不詳な男。

ライアンが暴行事件に巻き込まれた時のあの日の俺の行動を根掘り葉掘り聞いてきたな。

だが、俺はここに閉じ込められる前、どれだけ役員共に尋問を受けてきたと思っているのだ。

しかし、あの准教授・・・妙な事を聞いてきた。俺にゴミの焼却を依頼してきたのは誰なのかと・・・。一応名前をあげたが、それを聞くと満足そうに帰って行った。

一体あの質問に何の意味があったのだろう・・俺にはさっぱり分からない。


 しかし全くこの俺がいなくて生徒会運営は成り立っているのだろうか?噂によるとあの女たらしのノアが生徒会をまとめて引っ張っているそうだが、そんなのは出鱈目に決まっている。何せアイツはいい加減な男だからだ。授業に出る事もせず、裏庭のベンチでさぼってばかりいる。何故学院はああいう男を野放しにしているのだろうか・・。本当に理解が出来ない。

暇そうにしている奴をわざわざ、この俺が生徒会に引っ張り込んでやったと言うのに感謝の欠片も見せないのだから失礼な男だ。


 それにもっと失礼なのはジェシカだ。あれだけ色々目をかけてやっているのだから普通は面会に来るだろう?ノアに襲われそうになっていた所を助けてやったと言うのに。でもあの時、何か俺に文句を言ってたな?何故もっと早く来なかったのかと。俺としては十分早く助け出したつもりだったのだが・・・。

 でもあの台詞は助けた俺に恥ずかしさを感じて、あんな事を言ったのかもしれない。面会に来ないのも自分からは恥ずかしくて来れないのだろう。

よし、それならジェシカが面会に来やすいようにこの俺がセッティングしてやることにしよう。そうだな・・・俺が好きなスイーツを差し入れに来るように言えば、ジェシカだって俺に会う理由が出来るだろう。

 さて、どんなスイーツがいいだろうか・・。よし、カフェ『ドルチェ』のアップルパイを持って来るように伝えて貰う事にしよう。我ながら素晴らしいアイデアだ。 


 はあ・・・それにしても退屈だ。何もせずに1日中部屋にいると時間の感覚も分からなくなってくる。本を見るのも飽き飽きした。

一体あいつらはいつまで俺をここに閉じ込めて置くつもりなのだ?一応3食、食事を提供してくれているが、気のせいだろうか?徐々に食事の質も落ちてきている気がする。

 ここから出たら、もっと謹慎室の食事のレベルを上げるように議題を作成しておかなくては。


 よし、まずはジェシカにスイーツの差し出しを持って来るように依頼するか。

待ってろよ、ジェシカ。

  


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