第6章 1 それぞれの見解
じっと見つめる私とダニエル先輩。
その時・・・・
「お嬢様~っ!!」
うん?何やらあの聞き覚えのある声は・・・・?嫌な予感がする。振り向いた私の眼に映ったものは・・・。
「お嬢様!ジェシカお嬢様!!」
何とこちらへ向かって物凄い勢いで走って来るのは美しき銀の髪、眉目秀麗変態M男マリウスではないか!!
「ああ、やっとお会い出来ました、ジェシカお嬢様。さあ、貴女のお顔をよく見せてください。そして『この馬鹿男!いつまで私を待たせていたのよ!!』と激しく罵って下さい!」
ハーハー息を吐きながら瞳をキラキラ輝かせて言うその姿は正にM男だ。
嘘だ、どうしてマリウスが?だって今は合宿中で山籠もりをしているはずでは・・・
ゾワワッ!背中に鳥肌が立つ。久しぶりの感覚だ。でも、冷静さを取り戻し、私はマリウスに尋ねた。
「マ、マリウス?!な、何でここに・・・・?!」
と、その時だ。
「ジェシカ!一体誰なのだ?その男は!!」
う・・・・そ、その声は・・・。
「ア、アラン王子様・・・・。」
燃える様な鋭い瞳でアラン王子はダニエル先輩を睨み付けている。
「な、何故こちらにいらっしゃるのですか?まだ合宿中でしたよね?」
しかし俺様王子は私に目もくれず、ダニエル先輩に激しく詰め寄っていた。
「おい!誰だ貴様は!よくも俺のジェシカに手を出してくれたな!!」
ダニエル先輩の襟首を掴んで、頭から湯気が出るのではないかと思う位、激怒している。え?あの~いつから私がアラン王子の物になったのですか?そ、それよりダニエル先輩が・・・・。何とかしなくては!
「お、おい。ジェシカ・・・お前、さっきその男と何してたんだ・・・?」
呆然としているのはグレイ。
「ジェシカ・・・もしかして俺達がいない間に・・・?」
ルークの顔色は真っ青だ。ああ、もう何でよりにもよって、こんな時に!!あ、そうだ!この二人にアラン王子を止めてもらおう!
「ジェシカ!そんなに俺がいなくて寂しかったのか?だから手近にいた男に手を出したのかあ!!」
その時、突然ガバッと後ろから抱き付かれた。ギャーッ!!生徒会長だ!何故?何故抱き付いてくるのよっ!!
「く、苦しいですってば!ユリウス様!離してください!」
それを見たダニエル先輩の顔色が変わる。
「生徒会長!ジェシカから離れろ!!」
アラン王子の手を振りほどくダニエル。しかしアラン王子に羽交い絞めにされる。
それでも必死で私に手を伸ばそうとするダニエル先輩。
「ダ、ダニエル様!!」
私もダニエル先輩に向かって手を伸ばす。
「生徒会長!お嬢様から手を放してくださいっ!!」
生徒会長を私から引き離そうとするマリウス。よし、マリウス!頑張れ!
「お・・・お前ら・・・絶対に俺は2人を認めないぞ!!」
アラン王子はダニエル先輩を両手でがっしりホールドしながら言う。
「く・・は、放せ!アラン王子!」
「何してるのよ!グレイ!ルーク!アラン王子を止めてよ!!」
「「え・・・?俺達が・・・?」」
何故か綺麗にはもる2人。ああ、なんて使えないのよ!
こうなったら・・・・大声で叫んだ。
「私は今、ダニエル様の恋人(仮)なのよ!!」
「「「「「え・・・・?」」」」」
ああ、言っちゃった・・・。
私とダニエル先輩以外、全員その場で凍り付いたのは言うまでも無かった・・・・。
<スクープ倶楽部の新聞より一部抜粋>
―女子学生Aの証言―
ええ、勿論見ましたよ。あの騒ぎ。だってあれだけ人目に付く場所で騒いでいたら誰だって見るじゃないですか。それにしても意外でした。まさかあの女性嫌いで有名なダニエル様がジェシカ様のハートを射止めていただなんて・・・。アラン王子は手が付けられない位暴れていましたよ。何だか少し子供っぽいなと思いました。そうですね・・・例えば、お気に入りのおもちゃを誰かに取られてしまったかのような、そんな感じです。あ、でも失礼ですね。大国の王子様に子どもっぽいお方なんて言ってしまうのは。どうか、今の話はここだけにしておいて下さいね。
―男子学生Aの証言―
今朝の騒ぎ?あれは見ていて面白かったな。だって女一人を6人の男が取り合ってるんだぜ?まあ相手はあのジェシカ嬢だから無理も無いけどな。俺だって縁があればお近づきになりたいって思ってるくらいだし。それにしても流石王子に生徒会長だよ。ジェシカ嬢を襲ったノアが停学処分が明けて今日から登校するって話を聞いただけで、強制的に合宿を終わらせてしまうんだから。でも他の学生達にとっても喜ばしい事なんじゃ無いかな?何て言ったってあの合宿は本当に辛いからな。あーあ。今年の新入生がほんと羨ましいぜ。
―女子学生Bの証言―
ねえ、これって絶対顔写真載せないって約束して下さいね?え?安心して良いって?それならこちらもお話いたしますわ。私、実はジェシカ様とダニエル様が抱き合ってるところから見てましたの。ああ、2人は本当に愛し合ってるんだと思い、陰からこっそり観察していたのに・・・それをあのお邪魔虫たちが・・あ、今のお邪魔虫ってところは絶対カットして下さいよ、お願いしますからね?!
え?もうお話結構ですって?まあ。なんて失礼な人なんでしょう!
―男子学生Bの証言―
もう今朝は大変だったんですよ。僕たちはいつものように朝6時に起床して早朝訓練を始める予定だったのですが、突然先生から今回の合宿はこれで御終い。後1時間でここを出るって言うんですよ。理由ですか?そんなの聞ける雰囲気じゃ無かったですよ。だって全部アラン王子の指示なんですから。僕たちがそれに逆らえるはずが無いでしょう?その後は大変でしたよ。皆で必死になって後片付けをして、転移魔法で全員一気に学院へワープですからね。あの魔法に慣れてない学生は気分が悪くなってついた途端、医務室に運ばれた学生がどれだけいると思ってるんですか?あんな思いするのは二度とごめんですね。あの・・・そろそろいいですか?僕すごく疲れているので、少し寮へ戻って身体を休めたいので。え?お大事に・・・ですか?はい、ありがとうございます。では、失礼します。
―女子学生Cの証言―
愛の力って凄いんですね。だって皆さんノア様からジェシカ様をお助けする為に先生方を説得して、急遽合宿を強制終了させたのですから。大勢の男性から愛されるジェシカ様って凄い方なんですね。え?羨ましくないのかですって?そんな事ありませんわ。だって私にも愛する殿方がいるんですもの。あの方々のお陰で半月ぶりにやっと彼に会えますわ。本当なら後半月は会えないはずだったのに、本当にアラン王子様達には心から感謝申し上げたいです。
―男子学生Cの証言―
今日は久々に凄い物を見たよ。そりゃ、この学院は色恋沙汰の激しい学院だけど、今回のような騒ぎは初めてだったな。歴史に残りそうだよ。それにしても、あのジェシカという女はなかなかやるな。流石は魔性の女だ。え?その呼び名は初めて聞いたって?マジかよ。あんたらスクープ記事ばかり書いてるのに知らなかったのか?
え?ああ。お前らの倶楽部、ゴシップ記事ばかり発行してるから学院から正式な倶楽部として認められてないんだっけ?でもよ、こんな記事発行してみろよ。あっという間に潰されてしまうぜ?何て言ったって王子が今回の件に絡んでいるんだからな。
部を存続させたいなら、今回の記事は没にした方が良いぜ。これは俺からの忠告だ。
諸事の理由により、今回の記事は見送りにする事を通達する
スクープ倶楽部より
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます