ちっさい女子高生とくらす。

かいる

第1話:あたりめ

 1Kの平凡なマンションの一室。そこで俺、志位葛は、身長100cmに満たない女の子と、二人で暮らしている。ちなみに血の繋がりは無い。

 そう聞いて、まず初めに石を握りしめたそこの君。ちょっと待って欲しい。あっ投げるのもやめて。痛いから。ロリコンとゴキブリを見る目で蔑むのもやめて欲しい。興奮するから。


 一つ弁解させて欲しいのは、俺はどっちかっていうと年上が好みだし、より限定するならばちょっと擦れてるえっちなドSのお姉さんが好きだということだ。だから、こんな風にあたりめを片手におっさんみたいに横になっている女子高生は、決して俺の好みではない。だから、そう。ここで君の出番だ。このブログを見ている、女子高生好きのそこの貴方、どうかこの夏休み中の大学生より堕落した人間を引き取ってはいただpppppppppppppp_






 **




「おい、邪魔すんなよ」

 俺はそう言って、ため息をつきながら女子高生をキーボードの上から摘み上げた。女子高生はpを全身全霊で連打して疲れたのか、おっさんのように胡座を掻いて、俺が作ったふかふかクッションの上に「よいこらしょ」と座った。綾鷹のキャップに注いであったお茶を、ぐびりと一杯飲む。あ、こぼした。



「志位さん。一個いいですか?」


 俺がこぼれたお茶の水滴を拭いていると、女子高生は、ぴん、と腕を真っ直ぐに上げて、俺をくりくりとした目で見つめてきた。顔の造形だけはいいので、そのまま動かなければ精巧な人形のように見える。が、残念。こいつは、シンバルを叩く猿のおもちゃよりもよく動く。あと、お前はお茶こぼしたことを速やかに謝れ。



「なに」

「その、わたしの引き取り手募集のブログなんですけど」


 女子高生は、マッチ棒よりも小さな人差し指で、パソコンの画面を指さしたあと、なにか言いづらそうに口をもごもごさせた。


 …その表情に、少し影が落ちたような気がして、俺の胸がちくりと痛んだ。もしかして、自分の行為は、新たな飼い主をペットの前で募集しているのと同じようなものなのではないだろうか。____いくらこいつでも、目の前で引き取り手を探されたら、…そりゃ、嫌な気持ちになるよな。なんだかんだ、大学一年の春から、もう3ヶ月は一緒にいるし。ちょっと悪いことしたかな。



 心の中でそう少し反省していると、俺のそんな気持ちを裏切るように、女子高生は顔を上げてにっこりと笑った。そして、ピンク色のあほ毛をゆらゆらあかべこのように揺らす。あ、言い忘れていたが、こいつの髪色はピンクだ。多分地球外生命体か何かなのだろう。



「あの、募集条件のところに、アラブの石油王で、あたりめをわたしに沢山貢いでくれる人募集中って書いといてくれません?」


 女子高生はキメ顔でそう言った後、綺麗な仕草で手を下ろし、ごろんと机の上に寝っ転がった。


 俺は、あたりめの成分でぎとぎとしているpのキーボードをティッシュで拭きながら、こいつ、風に飛ばされてどっかいかねえかな……、というようなことを考えていた。




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