えみりちゃんとシーツ

宮ノ森風茶

第1話

それはある春の風が強い日でした。

桜の木に花びらが咲く頃、私たちは出会った。



冨樫えみりは毎朝8時40分に社長にお茶を入れる。

今日のお茶うけは源氏パイでいいか。そう思いながらお盆に湯呑みをのせた。

毎日同じことの繰り返し。毎朝起きて仕事へ行き、家へ帰り寝る。

えみりはそんな毎日に退屈さを感じていた。

「何か楽しいことはないかなぁ」

えみりの口癖はいつもそうだった。


今日は金曜日。

成田岳正の休みは金曜日と日曜日だ。

3時過ぎに起きてパチンコ屋に行く。

休みの日は大体いつもそうだ。

パチンコ屋に行って勝てば行きつけのスナックに行く。負ければパチンコ屋の向かいのコンビニでビールを買って帰る。あとは寝るだけ。

岳正はそんな生活をもう何年も過ごしていた。

なんの不満もない毎日だった。誰かに合わせるような生活はしたくないし結婚するつもりもない。

一生このままでいいと思っていた。

今日は全然ダメだったな。

そう思いながら岳正は財布に三千円を入れた。

三千円でも勝ちは勝ちだ。ビールでも飲みに行くかと、岳正は換金所を後にする。

「とっち、モンストやってんの?」信号待ちをしていると後ろから声がする。

「前してたけど今してない。でもとりあえずガチャだけ回すの」20代後半くらいの女性2人組とすれ違う。岳正もゲームは嫌いじゃないほうだ。

興味のある話は耳に残りやすい。

風が冷たい。季節は秋をむかえようとしていた。


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えみりちゃんとシーツ 宮ノ森風茶 @mochikozou

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