第16話 銀河統べる王

  1、酒場の荒くれども


 その島では、王が臣民を統治していた。

 荒くれどもが酒場で話しをしている。

「実は、おれは手下が百人いてよお。こっちの男は、手下が二百人いるんだよ」

「おお。おまえらは面構えがちがうと思っていたが、けっこうな豪傑のようだな。実は、おれは手下が四百人いる。そして、あの男は、一人で千人を相手にできる一騎当千の男だ」

「これだけ手下がいたら、国王を襲撃すれば勝てるんじゃねえか。国王がおれたちに勝てるわけねえよなあ」

「面しれえなあ。一度、やってみるか。国王襲撃」

「ああ。そのまま、国を取ってしまおうぜ」

「おれたち四人が手を組めば、国王より強いぜ」

 そして、四人は笑った。

 四人は手下を集めて、武器をそろえ、国王襲撃の計画を練った。


  2、国王襲撃


 四人の荒くれどもは、七百人の手下を率いて国王を襲撃した。

 七百人で攻めれば、国王の護衛の隙を付けるはず。

 国王が何ほどだっていうんだ。

 国王の護衛は、たった二人しかいない。

 絶対に勝てる。

「国王を仕留めろ。絶対に取れ」

 荒くれどもが声を挙げる。

 国王の護衛の二人のうち、一人は動かない。

 国王を守ろうとする者は一人だけだ。

「国王は弱い。絶対に取れ」

 荒くれどもは吠える。

 しかし、護衛のひとりはどれだけ武器で攻撃されても死なない。

 護衛ひとりで七百人を相手に互角に戦っている。

 国王にはなぜか銃弾が当たらない。

 もう一人の護衛は待機している。

 護衛のひとりが口を聞いた。

「おれの星の体(アストラル体)は、星を砕くくらいの一撃でなければ壊れない」

 七百人の荒くれどもは、護衛ひとりを倒すことができない。

 この護衛だけが手ごわいのか。

「星の体(アストラル体)を持たない者たちよ。これ以上の戦いは無駄だ。兵を引き上げろ」

 護衛がいう。

「ひるむな。相手はたった三人だ。攻撃の手を緩めるな」

 荒くれどもが命令する。

「何度いえばわかるのだ。ここに居る王は、銀河統べる王だ。銀河統べる王は、二千億個の星の魂からなる二千億体のアストラル体を統べている。おまえたち全軍を一人で相手にできる者が二千億人いると思え」

 護衛がいった。

 そして、銀河統べる王が口を開いた。

「わたしを倒そうとすると、宇宙人が駆けつけるぞ」

 護衛二人は笑った。

「人類は昔から銀河を統べているのだ。それを知らない愚か者たちよ。この島はその王が住んでいる島だ」

 護衛のひとりがいう。

 天の川銀河の星々の一個一個をみずからの魂として、霊我(星を魂とする自我)である臣民を統治している。臣民のひとりひとりの魂は、星の魂に対応している。銀河統べる王の魂がどの星の霊我なのかは隠されている。太陽ではなく、もっと遠い別の星だという。

 四人の荒くれどもと七百人の手下は、護衛ひとりに勝てずに敗退した。

 やはり、王の護衛は二人で充分だったのだ。

 この島は銀河を統べている島。

 銀河統べる王の島。

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