第15話 神社を思い出す散文

 ずっと神社について書きたいと思っていた。だが、神社に強い興味を持って日本で数十年を生きたおれにも、神社とは何なのかわからなかった。それくらに、日本神道とは適当なものであるらしい。

 鳥居は鳥がとまるから鳥居という。ということは知っていても、社殿の名前は、もりかやしろかわからない。

 近所にある神社は庶民の神社で、とても簡素に作られている。むかし調べた神社の様式も、その様式をぜんぜん守っていない神社がたくさんあり、神社の様式も結局は適当であるらしい。

 もう神社は必要ないという意見も聞いたが、わざわざ壊す必要もないと、誰も壊さない。ならば、神社で何が伝えられているのか。

 うちの近所に神社はあったが、誰が神主なのか子供の頃から何十年たっても知らなかった。巫女などいるのを見たことがない。近所の神社は社格が低いので、庶民でやっている。いや、庶民ではなく、名家だという声もあるが、先祖の名など聞いたこともない。

 数十年の人生で、近所の神社が社殿を開けたのはおそらく、二回である。それくらいに、たまにしか機能しない。それが日本の神社だ。

 日本神道とは何かわからないが、神社は日本のそこら中にあり、これは確かに日本独自の宗教だ。近所の神社は八百万の神を祭らない神社だ。

 神社は、結局、貴族が庶民を支配するための仕組みなのだろうか。おれは、日本は儒教でも仏教でもキリスト教でもなく、日本神道だろうと長年思っていた。だが、わずかに知りえた日本神道は失望するものだった。非科学的な魂を崇め、強気に威張る日本神道はおれの好むところではない。

 近所の神社は御神籤などやってないが、運勢は神社関係者の支援のことであり、御神籤はそれを知るヒントである。大吉のない御神籤が引きたい。

 むかし、男に秘密を教え、女に秘密を教え、男と女が秘密を交換すると仕掛けがわかるという行事があったが、あれが日本神道なのだろうか。

 男女に教える秘密は、こういう秘密が面白いというのを神社ごとに持っていて、それぞれの神社が秘密の面白さを競っている。男と女が秘密を交換して解にたどりつく。それは文章である。そんな謎解きを千年以上もつづけてきたのが日本民族なのだ。

 適当に伝承される日本神道は、こんな感じでしかおれは知らない。

 男女がこれはこういう意味だと相談などしてしまい、神社にやって来るのは良いものだ。

 これは神社とは何かわからなかったおれが書いたものなので、これを読んでも神社が何かは当然、わからない。

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