第45話 それは、言ってはいけない言葉 二
「あ、お待たせ、翔真!待った?」
「ううん、待ってないよ。僕もさっき着いた所だから、亜紀。」
「そっか~良かった!」
僕たちは、お互いのことを「亜紀」「翔真」と下の名前で、また呼び捨てで呼ぶことに決めていた。
その日の亜紀は秋らしく、キャメル色のコートを着ていた。ただ、まだ真冬ではないので、コートも薄手のものだ。
そして僕の方は…、最近黒のテイラードジャケットを買ったものの、似合っているのかどうかがいまいちよく分からない。(実は、これは達紀の薦めで買ったものである。)
…そんな僕は、彼女を「おしゃれでかわいらしい」と思うと同時に、彼女と僕とのファッションレベルの差に少し気後れした。
すると彼女は、そんな僕の心理を知ってか知らずか、こう言う。
「翔真、その黒のジャケット、よく似合ってるよ!
私も新しいジャケット、買おっかな~。」
「恋愛には慣れていない。」と前に言っていた彼女であるが、いざ付き合ってみると、とてもそうは見えない。それくらい彼女は饒舌であった。
「あ、ありがと。
でもね、これ実は…。」
僕は彼女に嘘をついているような気分になったので、正直に達紀に薦められたものであることを言う。
「へえ~そうなんだ。
翔真ってホントに達紀くんと仲いいんだね!」
「うん。ただ、僕はファッションには疎い、って言うか何て言うか…。」
「そっか。もしかして翔真、ちょっと自信なくしてる?」
「うん…ちょっと。」
そう答える僕を見て、彼女はニコリと笑う。
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