第43話 ダブルデート 十六
その「デート」を終え家に帰った後、僕はお風呂に入り、1人考えごとをしていた。
ちなみに僕はもちろん女子ではないが、半身浴が好きだ。しかし今日は、秋の寒さがやって来たのと、長くお風呂に入っていたい気分であったのとで、全身をお湯につけていた。
『今日の亜紀、めちゃくちゃかわいかったな。
…やっぱり僕は、亜紀のことが好きだ。その気持ちは、ずっと、変わらないだろう。
でも、僕は決心したんだ。やがてフランスに行く亜紀を、僕は笑顔で見送らないといけない。
僕はもう亜紀には逢わないって決めているから、その笑顔は亜紀に直接届くことはないだろう。でも、僕はたとえ心の中でだけでも、亜紀を見送らないといけない。
そう、僕は心の中で笑顔で、『さよなら』を言わないといけない…。
だから…。』
そう思うものの、僕の「決心」は揺らぐ。
『そうだ。亜紀に、『フランスに行くのは止めて欲しい。僕と一緒に、いつまでもいて欲しい。』って、言えばいいんだ。
そうすれば、僕の『決心』もなかったことになるし、2人は幸せでいられる。
…でも、それなら亜紀の夢は、どうなるんだろう?亜紀の『決心』は、どうなるんだろう?
…やっぱり僕は、亜紀の夢をつぶすことなんてできない…。』
…人間というのは、欲深い生き物だ。誰だって自分が不幸になるのは嫌だ。他の人はどうであれ、自分だけは、幸せであって欲しい、そう思ってしまう。
しかし、それではいけない。少なくとも自分にとっての「大切な人」には、幸せになって欲しい。大切な人を、泣かせるようなことをしてはいけない。
たとえそれが、自分の気持ちを押し殺したものであったとしても。
だから僕は決めた。僕は、やっぱり「決心」を貫く。
亜紀と逢うのは、今日で最後だ。
僕はそう考え、長かったお風呂場を出る。
そして、おもむろに携帯をチェックする。すると…。
亜紀から、メールが届いていた。
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