第5話 プロローグ 五
「えっ、フランスに留学!?」
そのことを聞いたのは、年が明けた2月14日、バレンタインデーの時であった。
その前日、亜紀は、
「私、パティシエ目指してるじゃん?だから、まあ本当はちょっと違うんだけど、翔真へのチョコレートも、手作りで作るからね!
翔真が私の、初めてのお客様になってくれたら嬉しいな!」
と電話ごしに僕にそう言い、僕は、
「もちろん!亜紀の初めてのお客さんに、僕を選んでくれてありがとうございます!」
と、冗談交じりでそう言っていた。
また、その時、
「あと、翔真に重大発表があります!
まあ私個人のことなんだけど、それは、明日のお楽しみ~!」
と彼女が言うので、
「えっ、何だろう!?
分かった。楽しみにしておくね!」
と、僕は亜紀に伝えたのであった。
「でも、何でまたフランスに…?」
「やっぱり、パティシエの本場はフランスだし、私、本格的に勉強がしたいから…。
あと、私フランス文学を専攻してるじゃん?だから、本当にちょっとだけだけど、言葉には自信がある、からかな…。」
「なるほど…。」
僕が驚きのあまり曖昧な相槌しか打てないでいると、さらに彼女は続けた。
「私、今まで将来のこととか真剣には考えてこなかったけど、『パティシエになりたい』って私の気持ち、本物なんだ。だから私、本格的にお菓子作りの勉強がしたい!
だから、『退路を断つ』って意味も込めて、日本とは違う環境で、1からお菓子作りを勉強したいんだ。」
一旦こうと決めたら最後までやり抜こうとする所も、彼女の魅力の1つだ。
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