ワーストワン ”アイデアと生産で逆転勝利”
🈂カマ🈂(サカマサ)
第1章 異世界へ
第0話 プロローグ
臭い。
眠い。
喉が渇いた。
お腹が減った。
朝、日の出と共に起き、夜、月が天辺で輝く時に寝る。
電気・ガス・水道・下水など、この街はとうの昔に使えなくなっている。
ここは中東。近隣諸国との戦争、内戦、反政府勢力との戦闘が耐えない地域の一国、二十数年前には絹織物や観光物産で繁栄し、戦争によって衰退・廃墟となってしまった後に作られたスラム街である。
今、ここで暮らす者達はこの街の過去の栄華を知る者はいない。
今のこの姿の街に住み、渇いた風で砂が舞い、虚しく寂しいここが彼らの世界の全てであった。
それはこの街に住む少年=ラフィーも同じであった。
ラフィー=シェハン
10歳。
この街で生まれ、育ってきた彼は夢も希望もなく、毎日ただ少しでも腹を満たす為に生活していた。
この地域特有の褐色の肌、彫りの深い顔立ちをしているが、身体は痩せ細りガリガリ。
顔は痩けて目の周りが窪み、余計に眼球が出ているように見え、はたから見たらもう死の直前なのではないかと思わせるほどの身体であった。
しかし、ラフィーの目の奥に光る”何か”が、まだ彼は生を諦めていないことを語っていた。
「……まだ……、まだ死ねない……、死にたくない……」
彼の目の奥に光る”何か”は生への執着か、あるいは内に秘めたる野望の光か。
彼の目の光は、その先に何を見るのか。
***********
今の生活に不満は無い。
服も、食事も、住む場所も良い。
学院では学友にも恵まれ、とても良い学生生活を送っている。
だが、物足りない。
生まれた時から私は恵まれていた。
いや、恵まれすぎていた。
私の生きる世界は、生まれた時に女神様から与えられるスキルと、生まれ持った魔力量で”ほぼ”将来が決まる。
例外として、15歳の成人の義で受ける”洗礼”がある。
”洗礼”は本来、女神様から与えられたスキルの強化や魔力量の増加を目的として行われる。
しかし、その中で時たま”神人”と呼ばれる存在から新たにスキルを”貸与”されることがある。この時、新たな進路が啓示される。
そして私、”セシリア=マリカ=フォーリル”は、スキル=”アイデア”を生まれた時に女神様から既に授かり、魔力量は王家に仕える宮廷魔術師たちの長、この国最大の魔力量を誇る人物である魔法大臣に匹敵する程を内包していた。
この為、セシリアの将来は王都にある王立魔法学院に入学し、卒業後は王家に仕える宮廷魔術師となる事が”ほぼ”確定していた。
この事に私の両親、父”デュラン=マリク=フォーリル”辺境伯、母”セリーナ=ベグム=フォーリル”は私が生まれたことをとても喜び、2つ上の兄”ダリル=マリク=フォーリル”は自慢の妹だと領民に自ら伝聞してまわった程だった。
しかし、成人の義当日。
”洗礼”を受けたことによりセシリアの世界は一変する。
セシリアは決断する。
世界を”飛び出そう”と。
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