~異世界帰還者~
もやしP
Prolog
「本当によろしいのですか?」
ローブを深く被った、女神は俺に向かって告げる。俺はその言葉を言われると同時に魔法陣の中心に立つ。
「あぁ、構わないさ。例え力が失われるとしても俺は元の世界に、地球に帰るよ。俺にはまだ向こうでやる事が残ってるからね」
「…分かりました、ですが一つだけ注意の方をさせて頂きます。地球とムゼルガルドの経過時間は同じです…つまり、それは向こうでは…」
「あぁ、俺がこの世界に召喚されて1年と少し…今だと高二になったばかりか?大丈夫だ、この世界で生き抜いた俺なら、遅れは充分取り戻せる。それよりも勇者様方は帰ったのか?」
「えぇ、一足早く帰還なされました。もう時間が差し迫っていますし、せめてのものお詫びにコチラをお渡し致します」
特大宝箱が三個魔法陣の中に出現した。中身を確認すると、箱一杯に詰められた金や宝石の数々が三個とも全てに入っていた。
「向こうに持っていくものにも制限が掛かっているため、コレだけしかお渡し出来ません…」
「いやいや、充分助かるよ。さてあんまりのんびりもしていられないし、そろそろ…」
「畏まりました…最後に一言だけ。ムゼルガルドを救って頂きありがとうございました」
女神様からお礼を言われた直後、地面の複雑な魔法陣が一気に光を帯び、瞬く間に自室へと帰還を果たした。
「俺の部屋か…懐かしいな」
部屋に変わりはなく、ただ分かるのは定期的な清掃が行われていたという事だ。ベッドのシーツも新しい物に取り替えられているし、床や机、窓にも埃は一切なく綺麗な状態で保たれているのだ。
「と言うか、格好は変わらないんだな…。力が失われているか一応確認するか、ステータス」
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名前:
年齢:17歳
性別:男
職業:英雄
Lv312
HP(生命力)76520/76520
MP(魔力) 69950/69950
STR(力) :57490
DEX(器用) :45270
VIT(物理防御):52500
AGI(敏捷) :58350
INT(知力) :45400
MND(精神力) :42790
LUK(運) :300
パッシブスキル
・料理Lv7
・掃除Lv7
・闘技Lv9
・剣技Lv9
・投擲Lv8
・威圧Lv9
・精霊魔法Lv9
・闇魔法Lv9
・光魔法Lv9
・生活魔法Lv9
・四大魔法Lv9
・時空間魔法Lv9
・異空間魔法Lv9
・抜刀Lv8
・隠密Lv9
・盾技Lv6
・跳躍Lv9
・身体強化Lv9
・魔導Lv9
・指導Lv6
・未来視Lv9
・鑑定Lv9
・神技Lv9
・魔眼Lv9
アクティブスキル
・詠唱破棄Lv9
・魔法耐性Lv9
・物理無効Lv7
・魔術耐性Lv9
・恐怖耐性Lv9
・装備作成Lv8
・魔力操作Lv9
・魔力感知Lv9
・気配探知Lv8
・気配感知Lv9
・気配遮断Lv9
・自然治癒力Lv9
・召喚術Lv9
・剣術Lv9
・体術Lv7
・反撃Lv8
・魔術Lv9
・弓術Lv7
・槍術Lv7
・盾術Lv6
・神術Lv9
・錬金術Lv8
・暗記術Lv9
・交渉術Lv8
・読心術Lv9
ユニークスキル
・堕天化
・創造魔法
・言語理解
称号
・死神
・憎悪の化身
・教授する者
・異世界を渡りし者
・人を辞めし者
・偽善者
・神殺し
・神喰い
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ブンッという音とともに、空中に文字が浮び上がる。このステータス表示システム自体失われると聞かされていたにも関わらず、表示されてしまった事から驚きを隠せない。
「どういう事だ?力は失われるんじゃなかったのか…。まぁ別にいいんだけどな」
ステータスを閉じ、財宝の方へ手を向けてインベントリを使う。力の行使も問題無い事を確認していると、隣の部屋から気配感知に反応がある事を確認する。
「隣の部屋って言うと、乙葉の部屋か?早朝だしいるのは分かるが、それにしたってそろそろ起きないと不味いんじゃないか?それにアイツもう高一だろ?」
俺の一つ下の妹、
「一応、挨拶した方がいいかもしれんな…。それにアイツはそろそろ起きないと真面目に遅刻する」
そう思い、自室から出て隣の部屋へ向かう。一応軽くノックをしてみるが反応がないので、そのまま妹の部屋へ入る。女の子らしい部屋に壁際には俺の通っている高校の制服が掛かっていた。ベッドに近づくと1年前よりも可愛さが倍増した乙葉の顔がそこにあった。
「っと、いかんいかん…マジで起こさないと不味いぞ。おーい乙葉、起きないと遅刻するぞー?」
肩を揺すりながら顔を掌でピチピチ叩くと徐々に瞼が開き出す。
「…ん。誰!?」
「誰って傷つくなぁ…お前のお兄ちゃんの優人だよ」
「嘘よ!お兄ちゃんは黒髪だし、もっとヒョロヒョロしてたわ。身長だって精々165cmしか無かったはずよ!」
言われて気づく己の容姿に。そう言えば1年前から身長は異常なほど伸びたしストレスからか、黒髪が脱色して白髪になり更には目の色も碧眼に変わった。体も変わり顔も変わり、前の俺と分からなくても無理はない程に別人だからな。別段珍しくもない、話では無いか。
「そう…だな、分からなくても無理ないか。兎に角お前が元気そうで良かったよ。血を分けた兄妹とはいえ顔を合わせないのは不味かったからな、それじゃあな」
妹の部屋を早々に立ち去り1階へ降りるとキッチンには母がいた。
「久しぶりって言っても分からないか」
母は、俺を見るなりフリーズしたかのように固まるが近づいていくと時が動き出したが如く、話しかけてくる。
「もしかして、ユウ…君…?」
「妹は分からなかったのに、流石だね母さん」
「ユウくーん!!!今までどこに行ってたの!?お母さんずっと心配してたのよ!!」
母さんが涙を流しながら、抱きついてきたので大人しく胸を貸す。母さんは身長が150cmあるかないかの小柄な体格なので、よく小学生と間違われやすいがちゃんとした大人だ。母さんを落ち着かせる為に抱き締め返すと違和感がある。
「母さん少し痩せた?」
「そりゃ、痩せもするわよ!突然ユウ君がいなくなったって聞いて、最初は家出だと思ってたの…。でも時が経つに連れ、家出じゃなくて連れ去られたんじゃないかって思いだしたら居てもたってもいられなくて…。警察にも届出を出して捜索してもらったけどダメで…」
「心配を掛けてしまった様で申し訳ない…」
「ううん…こうして戻って来てくれただけで私は嬉しいわ。それで…ユウ君は今までどこにいたの?」
涙ながらに話す母から、事の詳細を聞かれるが正直に話すべきか否か迷ってしまった。俺は異世界に行くまで、何かを殺したり傷つけたりすることに酷く罪悪感を持っていた。何故なら自分が同じ事をやられたら溜まったものじゃないと思うからだ。理不尽に傷つけられ、痛めつけられ、殺されるなどそんなことが、許されて溜まるかと思っていたからだ。
そんな自分が異世界に行き、殺すか殺されるかの世界で生き延びる為に幾つもの生命を奪ってきた。魔物も人も等しく俺の価値観で殺してきた。今までの価値観を捨て、変わってしまった自分を果たして、家族は受け入れられるのか。
否、受け入れられなくてもいいが、こんな化け物を産んでしまった母さんを周囲が放っておくのだろうか?俺だけならまだいい…、だが母さんに…家族に何かあれば俺は…。
「瞳に迷いが見えるわ、ユウ君は昔からそう。自分がどれだけ辛い目にあっても隠そうとする、誰かが傷ついたら助ける癖に、自分が辛い時は誰にも頼ろうとしない。私はね、ユウ君。ユウ君のそういう所が愛おしいなと思う反面悲しいなって思うんだよ。だから今は話さなくてもいいよ…でもねコレだけは覚えておいて。
「ありがとう母さん…、母さんが俺の母さんで良かったって改めて思えたよ。それでさ母さん、俺これから質屋に行ってきてもいいかな?」
「え!?学校はどうするの?」
「ごめん、今日だけでいいからどうしても時間が欲しいんだ」
そう言うと母さんは、考える素振りを見せると渋々了承してくれた。代わりに条件を出されたけど。数分後、乙葉が制服姿で二階から降りてきた、先程と同じ反応をされたけど母さんが説明をしてくれた。
「本当にお兄ちゃんなの?」
「あぁ、確かにこうして容姿は変わってしまったけど間違いないよ」
疑いの目で俺を睨みつけてくる妹を横目に、おかずを妹の皿に載せる。
「乙葉も少し痩せたね、成長期なんだからちゃんと食べないとダメだよ?」
「余計なお世話よ、それにお兄ちゃんこそ変わったね…」
「そうか?別に変わりないと思うが…っと乙葉そろそろ時間大丈夫か?」
時計を見れば時刻は、8時を回る所だ。俺たちの高校は朝課外が無い代わりに一定のレポートを提出しなければいけないのだが、レポートによっては直接先生を見つけて提出しなければいけないものもあり、あまり流暢に自宅には留まれないのだ。
「そうね、そろそろ行くとするわ。お兄ちゃんこの話は帰ってからまたしましょう」
「お手柔らかに…」
ガチャりという音とともに、乙葉は家から出ていった。俺も準備をするべく一度ベランダに出て、生活魔法を使い身を清潔にしたあと黒のスーツを着用する。次にアタッシュケースの中に貴重そうに宝石を入れる。今回行うのは質屋での宝石の買取だ。とは言っても先程の母との条件で『質屋に連れていく事』という条件を承諾してしまったので、極力母に物が見えないようにアタッシュケースにいれたのだ。
「ユウ君〜?いつの間に着替えたの!スーツなんて着て…お母さんそんなの買ってあげてたっけ?」
「いやコレは自前に用意してたやつだよ、それで母さんは何で、彼氏とデートでもするような格好をしているの?」
「そりゃ、久し振りのデートですもの!」
最後の一言は聞こえないふりをした。血縁関係的に両親共、血が繋がっていないのは小さい時に父に聞かされた。だが、だからと言って母親の彼女とは結婚できない。父が亡くなって七年、母も寂しかったのであろう。こうした大胆な行動が高校進学と同時に度々あった。
「まぁ、冗談はさておき行くよ」
「じゃあ手を繋ぎましょう!はい!」
アタッシュケースを持っている左手とは逆の右手を恋人繋ぎで握ってくる。何故か寄りかかってくるし。
「母さん、流石に恥ずかしいんだけど…」
道行く人々にジロジロ見られながら質屋へ向かうが、警察の方がこちらに気づき近づいてくる。
「あの〜、すいません。失礼ですが身分証を見せていただけますでしょうか?そちらのお子さんは小学生ですよね?」
瞬間、母さんがブチ切れかけるが口を手で塞ぎ黙らせる。
「あぁ〜説明しにくいんですけど母です、少々お待ちください」
怪訝そうに、見てくる警察官の方に対して手短に説明して母さんに鞄から身分証を出すように促す。すると母さんは無言で免許証を取りだし差し出した。
「確認出来ました、すいませんね近頃多いもので」
「いえ、お気になさらず。パトロール頑張ってください」
「えぇ、ではこれで」
それだけ言うと警察官はパトカーに乗り再び、パトロールに向かったようだ。
「それで母さん…」
掌に柔らかいものが当たる。間違いない掌に唇が当たっている、故意にやっているなこの母は。俺が見ていることに気づき強引に恋人繋ぎに戻すと何事も無かったかのように俺の顔を見てくる。
「欲求不満なのは分かるけど、いくら何でも息子を襲うのは止めてね…」
「着いたよユウ君!」
話聞いてないな、この母親。目的地に着いたので、店内での出来事は省くがムゼルガルドで最も価値がないような宝石を出したのだが滅茶苦茶高い値段がつけられる。それもアタッシュケースに入れたのは最下位トップ3だ。
母親にバレたらヤバいんじゃと思ったやつはいるかもしれないが、俺はアタッシュケースを一度手渡し耳打ちで『連れが一緒にいるが、内容物の情報が漏れると面倒なので秘密裏に行って欲しい。出来れば俺個人で応接室に通して頂けると助かる』と言った瞬間、内容物を確認して、事の重要性が分かったらしく理由をつけて俺だけを応接室に通すことに成功した。
その後の流れは簡単だ、宝石の価値の説明から、買取価格などの話。書類の提出やら色々と面倒だったが、交渉術のお陰か割とすんなりと終わり無事終わった。
待たせていた母の元へ戻り、無事終わった事を告げると『映画行くわよ!』とか急に言い出して映画館に連れていかれた。恋愛映画を見させられ、昼にはファミレスに行き、服を買いに行き、母の買い物に付き合わされた。『この服似合うかな?』とか『ユウ君はこれが似合う!』とか言う彼女イベントが発生していて困惑を隠せなかったが、何とか乗り切った。
ランジェリーショップにも付き合わされそうになったが、俺は『そこに行くならもう帰る』と言ったら『そうね、剥いたときに分かっていたら興奮半減だものね!』とか言い出してて正直、母の性格ってこんな感じだったっけ?と疑問を思いながらクレープ屋へと向かう。
母は『食べあいっこしよ!』とか言い出して俺の苺クレープの食べかけの部分を食べて、『関節キスしちゃったね♡』と言われた時、年齢考えてと思ってしまった。
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