転載戦争

異常な世界

　ダウンロード、ダウンロード、ダウンロード

ダウンロードダウンロードダウンロードダウンロードダウンロードダウンロードダウンロードダウンロードダウンロードダウンロードそしてこのままアップロード、アップロード、アップロード

アップロードアップロードアップロードアップロードアップロードといきたいところだがちょっとここで待ってほしい。落とした時の勢いはそのままに、だが冷静に落ち着いて考えなければならないものがある。

それはタイトル、そしてサムネイル。この二つの調和でゴミも宝石に、また逆もしかりだ。

内容より釣りと言われても良い、まず見てもらわなければ話にならない。勝負の９割はここで決まる、

人は見た目が十割というがそれと同じなのだ。

キャプチャー、キャプチャー、キャプチャ、これもキャプチャ、あれもキャプチャ、それもキャプチャ…

ダウンロードできない動画、アップロード者本人、もしくはその動画を転載したものが後からつけたロゴマークがあるために丸ごと保存できないものはこのやり方にするのが無難だ。

どれくらいの動画をダウンロードしてキャプチャしたであろう？別のところにアップロードし直すたびにこまめに消しているつもりだがPCが重くなっていくのを感じる…

仮想通貨を採掘するわけではないがやはりスペックは高いに越したことはないのだろう。

アップするたびに仕事をしたという充実感とともに自分の中のなにかが

すり減っていく感じを受ける。もちろん転載だって一つの作業であり神経が磨り減るのは

当然だろう。PCとにらみ合いしてるだけで目は疲れ体がだるくなる、がそれとは違う何か……

何か自分の中の大事なものを失っていくような感じ…

何度この馬鹿気たことをやめようと思ったことか。

これほどまでになんの生産性もない作業がほかにあろうか？いやない、

あってはならないのだ。何から何まで腐れたゴミのような所業をそもそも仕事はおろか

作業として扱うことすら愚かしい、あってはならないことだ。

けれどやめられない…

もちろん対価を得られるからだ。

対価といっても自分のやったことを考えれば言うまでもなく不釣り合いなほど(実際そうだが)

のものをもらってると言えよう。

しかしそれだけなのだろうか？

幸いにも自分はそれほど衣食住に困っているというわけではないし物欲もそれほどない。

ならほかに何があるのだろうか……こんなことを続ける理由とは一体なんなのであろうか……

余計なことを考えてしまっていた。

転載は質より量、とにかく手をマウスを、カーソル、ショートカットキーを押すことに

すべてのリソースを費やすべきであった。

まだ今日のノルマに達成していない、アップした動画の再生数も気になるところだが

それよりもやるだけやらないとなにもはじまらないのである。

いや、何がはじまるのだろうか？

一通り動画をアップし終えると次は挙げた動画の管理作業に移る。

動画の再生数とチャンネル登録者のチェック、コメント欄の検閲などをする。

しかしこれら動画の管理者ツールでできることだけをするわけではない、一番大事なのは

自分の転載動画を守ることだ。

自分の動画と同じまたは似たタイトルを動画内、もしくは検索サイトなどで探して回る。

同じ動画を見つけたら即通報、複数ある場合はそのチャンネルの所有者の情報ごとしらべて

然るべき手段をとる。転載とは食うか食われるかのゼロサムゲーム、すぐに潰さなければ逆にこちらが潰される。

たとえこちらが本家オリジナルだったとしても、そう奪ったもの勝ちの世界だ！

こんなことを毎日何時間も繰り返していると頭がおかしくって来る。いや、おかしくなければ

決してやらないようなことではあるが…

ひたすら負の感情しかおきない世界での戦い…なのだろうか？

自分の動画のコメント欄-叩きと荒らしと何の脈絡もなくされる自分語りがほとんどではあるが

時折される感謝のコメント、もっとも感謝される対象は自分ではないはずだが

なぜかそれがやる気を引き出させる。収益化されていない動画シリーズをアップロードし続ける人間の

モチベーションはこれなんだなぁと歪んでいながらもわかる自分が情けない…

何の許可も取らず他者が作った作品をさも自分のもののようにする-それは元の世界にいたころには著作権の侵害と言われ刑事事件として罰せられ民事でも裁判沙汰になることであった。著作権を取っているまたは自動的に著作物と認められる者の場合だが。

しかしこの世界で生きていくには関係ない。他者のものであろうと自分のもの様にふるまう。他者のものに平気で自分のものだと主張するために自分のロゴマークを付ける。それをパクられれば訴えてつぶしに行く。それがこの世界のルールだ。

抜け出さなくてはならない。

こんなことをずっとやっていけるはずがない…でもそれはいつだ？

考えたって始まらない、一度染みついた手癖はそう簡単には抜けない。

この世界に入ってしまった以上、この生活からは逃れられないのだろうきっと…

こんな世界に入ってしまった以上、抜けれれない以上、もう選択肢は一つしかないのではなかろうか？

そう、この道を極めるこの世界で一番になるのを目指すのである。

好きなこと(ではあってほしくないのだが)で生きていくというのもまた人間の生き方だろう。

一番ってなんだよ？と突っ込みたくなるがどんな世界でも人が複数いれば頂点は存在する-そうこんな世界にだって

転載世界のトップに位置する者たちすなわち上位投稿者、上位登録人-神とまで言われる者たちは確かにいる……

見方を変えれば底辺の中の底辺、クズの中の屑ということになるのだが…というかそれこそが普通の人間の考え方なのは言うまでもないか……