くしゃくしゃ、ぽい
こたまる
1枚目 おつぼね
よくもまあ、こんなに毎日毎日、雪のように仕事が降ってくるものだ。
力の限り取り組んでいるのに、一行に楽になる気配がない。それどころか、静かに積もって積もって、気づけばこんもり。これがこの先あと何十年も続くのかと思うと、なんだかぞっとする。
社会人になって約半年。入社した会社は、可もなく不可もなく、たぶん一生勤めようと思えば勤まりそうなところ。どんな人生が待っているのかと、希望に満ち満ちたあの頃の自分から、たった半年でこうも考えが変わるものなのか。楽しく生きていければそれでいいのだが、思うようにはいかないものだ。
まあ、なにも嫌なことばかりなわけじゃない。
そうだな、今日は、「お局」の話をしよう。
「お局(おつぼね)」と聞いて、何を連想する?――――
就職前、いくつかバイトを経験したが、「お局」には会えずにいた。いなかったんだ。だから「お局」というのは昔々に存在した者で、現代社会にはもういなくなったのだと、本気でそう思っていた。
ちなみに、当時私の連想していた「お局」像はこうだ。
・独身女性
・プライドが高く、基本的に人を見下し、上司に媚びる
・化粧が濃く、ファンデーションのにおいが漂う
・自己主張が激しい
・気に入らない人にはとことん態度が悪い
…悪い印象ばかりだ。
そして入社後、初めて出会った「お局」は、こうだ。
・独身女性
・プライドが高く、基本的に人を見下し、上司に媚びる
・化粧が濃く、ファンデーションのにおいが漂う
・自己主張が激しい
・気に入らない人にはとことん態度が悪い
・図体がでかい NEW‼
・声がでかい NEW‼
・圧が強い NEW‼
すごい。まさにお局。清々しいほどのものである。当の本人も、お局だという自覚を持っているようで、「私お局だから~」とうたっているのをよく耳にする。そして、そこで浮かんだ一つの疑問。
「それでいいのか???」
前述したとおり、「お局」にいい印象は皆無だ。それなのに彼女は、まるでお局という一種の肩書に対し、誇りさえ持っているように感じる。周りの反応はどうかというと、当然のごとく、歯向かうようなマネをする人もいなければ、意見する人もいない。みんな、ちょっと怖いのだろう。ちょっと恐れられているような具合が、ちょうどいいのだろうか。なんにしろ彼女は、お局であることを嫌がってはいないのだ。
とはいえ、なりたくてなったわけではないと思う。気づいたらそうなっていたのか。長く勤めるうちに力が付き、仲間が増え、仲間が昇進し、自分も昇進し、仲の良い上司ができ、部下が増え、そしたら、お局になっていたのだろうか。
一体いつから、お局なんだろう。
どうなったら、お局は完成するのだろう。
結婚すれば、お局になるのは免れる?
ファンデは薄塗りを意識しようかな。
声は小さく、できれば図体も小さく…
…お局には、なりたくない。
――――――――――――――――――――――――――――くしゃくしゃ、ぽい。
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