僕は妹ちゃんのために女学院に女として通うことにします。

ラーア・マリティ・スクートス

通常編

1話 同棲生活数日前

「お兄様、私はアルーラ女学院に行きたいのです。ですが1人だけでのは心配ですので、お兄様も一緒についてきてもらえませんか?」

 

 (ああ~、なるほど。初めに付き添えばいいってことか)

「もちろんいいよ。なんて言ったってしおりの初の高校生活だからな。でも親じゃなくていいのか? 普通だったら、親に頼むもんだと思うんだけど」


「はい! お兄様がいいんです。明日からお願いしますね」


 僕はこの時に気付くべきだった。のが1回であるはずがないこと。そして、アルーラ女学園は全寮制であることに。


▼  ▽  ▼


 時間は数時間前にさかのぼる。


「なぁ、和人。あそこにいるのってアルーラの学生じゃね? ナンパしに行こうぜ」


「いやいや、何言ってんだよ。したいなら勝手に……。ってもう行ったのかよ」


 僕の名前は姫宮ひめみや和人かずと。今は親友の葉山はやま雄太ゆうたとカラオケをしに出てきたはずなんだが……、全然目的地に着かないのだ。

 

(なんでこうなっちゃったんだろうなぁ)


 僕が半分呆れながら彼のナンパの様子を見守っていると、にこにこした顔で葉山が戻ってきた。

 

「いやぁ、まただめだったわ。しゃあないし2人でカラオケにこもるか」


 初めからそうすればいいのにと思いつつ、もう慣れたもので僕は気にせずにカラオケを楽しんだ。


「それにしてもお前ってさ、本当に女性の歌うまいよな。どうやったらあんな透き通った声で高音を歌いきれるのか教えてほしいもんだ」


 カラオケからの帰り道、そんなことを聞いてきた葉山に高音の出し方を教えていたのだが、分かれ道までに葉山が高音が出るようになることはなかった。そのまま一人になった道を歩いていると、今日のカラオケのことが思い出されてくる。葉山は男らしい低音の歌を多く歌っていた。

 

(僕からしたら低音が出るほうがすごいんだけどなぁ)


 そんなことを考えていたら家に着いていた。というよりも家を通り過ぎていた。家の前に引っ越し用のトラックがあって違う家と勘違いしていたようだ。


(え、引っ越し用のトラックがある? なんで……)


 僕の家は少し複雑な家庭である。父さんは海外出張で家におらず、母さんは漫画家としてまだ都会にいるはずだ。今、確認したが間違いない。となると、しおりか? いやいや、それこそあり得ない。体が弱い栞は学校に行かず家庭教師を雇って勉強していたはずだ。もちろん女の家庭教師だ。大切だからもう一度言う、女の家庭教師だ。


(でもだったらなんで……?)


 考えたが頭の中が?《はてな》で埋め尽くされるだけであった。



 



 


 

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