河合さん

住所不定無色

第1話 おはよう、河合さん。

 青年はカーテンの隙間から漏れる朝日で目を覚ました。まだ眠っていたい体を無理矢理に起こして、カーテンに手をかける。

 薄暗かった部屋に光が差し込み、部屋の様相が顕になった。明るくなった部屋にはダブルベッドが鎮座している。窓際には良く手入れされているであろう観葉植物がある。

「おはよう、河合さん……」

 青年はダブルサイズのベッドの脇を見ながら微笑みかけた。「河合さん」と呼ばれる人物は目を覚ましたようだった。

「あ、寝癖」

 青年は茶化すように笑った。白い肌に少しだけ皺が出来る。

「そうだ、シャワーでも浴びてきなよ。その間に僕が朝ごはん作っておくから」

 青年はドアの向こうへ消えていく、階段をパタパタと降りる音がゆっくりと小さくなり、やがて消えた。

 部屋に残された「河合さん」は、まだ眠っていたいのか、布団から出てくる様子は無かった。

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