独裁者宣言

 ふと、ボールペンで余白に落書きしたときのように、あっというまに終わってしまえたらいい。鮮やかな夜明けも、デミグラスソースハンバーグも、精神的左利きの憂鬱も、ぜんぶぜんぶ嘘であればいいのに。

 人生がめんどくさいので死にたい。直線をひく。電信柱のように立っているだけで肯定されたい。駄目だよって言われても、生きてたって駄目だよって言われるのに、どうすればいいの。だから、雪がふることを祈っている。まっしろ。冬がきてほしい。

 新雪をふみあらすには、とほうもない繊細さが必要で、だから、握りしめた心臓も、つぶれた空き缶も、夕焼けの街並みも、ぜんぶぜんぶ君のものでいいよ。ぜんぶ嘘だから、好きにしたらいい。

 独裁者になろう。今ここで宣言しよう。やわらかさにためらい、冷たさにおびえようとも、大丈夫、世界は君のものだ。君は君を独裁して、どこまでも踏み荒らせばいい。

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