創造と科学

yasu

Blattella germanica

第1話 誕生

 トクン・・・・・・。


 トクン・・・・・・。


 ガタッ!ドンッ!


 トクン・・・・・・。


 ガチャガチャ。


 「・・・・・・?」


 トクン・・・・・・。


 (ここは、どこ?)


 トクン・・・・・・。


 ガチャガチャ。


 (どこで音が鳴っているの?)


 トクン・・・・・・。


 (あれ、何これ?足?)

 時間の感覚があるわけではないが、さっきまで感覚の無かった足が存在していることに気付いた。


 ドンドン。


 トクン・・・・・・。


 (どこで音が鳴っているんだろう?怖いな)


 ・・・・・・・・・・・・・。


 あれからどのくらい時間がたったのか、私には私という意識がある。外の騒がしい音も私に危害があるわけではなさそうなので、気にしなくなっていた。


 足も全てできており、頭には敏感なチョロチョロしたものもついている。私の周りには硬い壁が覆っていて、私は外に出ることができない。


 周囲を壁に覆われているが、壁の向こうには私と同じように閉じ込められている者もいるようだ。


 一体、どうして集団でこんなところに閉じこもっているのかわからないし、どのくらいの時間が過ぎたのかもわからないが、そろそろ外に出たい。


 パリッ。パリッ。


 誰かが壁を破ったようだ。


 (私も壁を破ってみよう)


 壁を顎を使い、足を使い破いた。


 ベリッ!


 外に出ることができた。しかし、ここがどこだかわからない。程よい湿気があり、周囲は真っ暗である。


 頭にあるチョロチョロで、周囲に似たようなのがたくさんいることに気付いた。特に敵意は感じない。むしろ、お互いに触れている方が安心するくらいで、みんなで一か所に集まっていた。


 意思疎通の図り方もわからないので、特に動かずにジッとしている。周りのみんなも同じような判断をしているようだった。


 カサカサッ。


 足音が聞こえた。一斉にそちらを振り返る。


 そちらも敵意を感じない。今までで最も安心感のあるニオイがした。


 暗くて姿ははっきりとは見えないし、私の何倍も大きいのがわかる。


 姿かたちは違えど、まぎれもなくお母さんだと気づいた。私たちは、これから産まれてきたのだと。

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