みによむ1/2・異世界テーマパークのバイト姫

山岡咲美

第1話「私只のバイトなんです!」

 一夜城いちやじょう、その城はそう呼ばれていた。


「無理です!」

ファンタジー世界の姫君ひめぎみと言ったそのひとは姫らしからぬ動揺どうようを隠しきれない。


「無理じゃねーんだよ!やるんだよ!」

その姫君の騎士と思われる男が騎士らしからぬ口汚い言葉使いで姫をののしる。


「まあまあ御二人とも姫もまだまだ経験不足の外交デビュー、御心配も有りましょう」


「大臣さんもこんなの無理って気づいて!」

城の一郭いっかくで三人が不毛な争いをするなか、各国の王公貴族おうこうきぞく達が城の大広間おおひろまへと集まり始める、皆一様に緊張している。


「皆さん、本日は本当に良くお集まりいただいた」


先程さきほどの姫君が彼等かれらの前で言葉をつむぐ、その言葉は丁寧ていねいではったが冷たく彼等に突き刺さる、姫にさき面影おもかげはない。


「皆さんがここにおでと言う事は、我が帝国とともに生きると言うことです」


彼女は彼等の顔を見渡し、言葉を続ける。


「我々六稜郭ろくりょうかくパーク帝国は貴殿方あなたがたが帝国に帰属する事を歓迎いたします!」


この物語は半径50キロメートルに渡り異世界へと転移したテーマパークと、その周辺都市の物語である。


「私ただのバイトなんですーー!」


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