帰り道は長い

 6月から学校と幼稚園が再開されたので、幼稚園児を幼稚園まで送り迎えをしなければなりません。

 朝から大量の雷を落とし、衝撃で家が破壊されると怯える旦那を放ったらかしにして小学生を家から追い出し幼稚園児を幼稚園まで連れていきます。

 小学生って楽よね、ひとりで学校行ってくれるんだもん。

 帰りは寄り道してなかなか帰ってこないけどね。

 幼稚園児はそんなわけにいきません。

 うちの幼稚園はバスとか使ってなくて、近隣の家庭がメインターゲットでママさんたちの交流も積極的に行っているところなので、必ずオカンたちが朝昼に送迎をします。

 オトンは圧倒的に少ないです。

 試されるわたしの社交性……!!

 いやまぁそれはいいんだけど。

 そうでなくて、その送迎にさ、今までは自転車をメインで利用していたんだけど、今月からは歩いてんの。

 一番の理由は子どもが大人しく自転車に乗ってくれないからなんだけど、わたしの運動も兼ねるかなとか、歩いたらほら、いろんなものが目につくじゃない。

 季節によって見るものも感触も温度も変わるし、観察眼とか、感受性とか、そういうのが育つといいなーってのもあるわけよ。

 ねことかスズメとか葉っぱとかダンゴムシとかいっぱいいるからね。

 行きが15分くらいで、帰りが40分くらいかかるかな。

 わたしがひとりで歩いたら10分くらいなんだけどね。

 同じ道を歩いているはずなのにこの時間の差。

 不思議だよねー。

 帰り道はなかなか進みません、誘惑が多いので。

 立ち止まっちゃってぜーんぜん進まないの。

 なににそんなに誘惑されてるかって?

 今の時期はねぇ、やっぱこれよ、誘惑の王者『ダンゴムシ』。

 こいつは手強いのよ。

 なんたって「探す」「つつく」っていう手間がついてきますからね。

 アリんこも同レベルで手強いなー。

 まあダンゴムシと違って連れて帰ろうとはしないから、ちょっと劣るけどね。

 飽きるのを待ってるわたしは午後の降り注ぐ太陽光の下でもう汗だくですよ。

 日傘がなかったら溶けて消えてるわ。

 集中し始めるとテコでも動かないもんね。

 雨の日には側溝に流れる水をひたすら眺めてみたり、秋にはトンボ追っかけてあさっての方向に走ってみたり、ねこが通りかかったら居なくなるまでずーっとしゃがみこんで見惚れてるし、なかなか進みません、帰り道。

 かと思ってたら急に走り出してすっ転んで膝擦りむいて号泣、もう歩けない……とかもあるしね。

 この忍耐がいつか何かに昇華されるに違いないと頑なに信じてないと発狂してしまいそうです。

 一緒に楽しむにも楽しめない、だってこっちは楽しくない。

 でもほら、こっちもね、事務連絡とかあって話し込んだりする間は帰るのを待っててもらってるわけだから、こっちも多少の我慢はしないわけにいかないよね。

 育て感性。

 母ちゃんもあとちょっとくらいなら耐えるから。

 しっかしあの降り注ぐ陽射し……。

 手強い……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る