悩みがある

 腹が出ている。


 これは由々しき事態である。


 なーんて堅苦しく書きましたけど、腹が出てるんですよね、わたし、下っ腹。

 あーあ。

 もうねぇ、加齢とか運動不足とか原因はいろいろあるんでしょうが、これがここ数年ずーっと悩みなのです。

 というのもね、わたし自分でいうのもなんですけど、どちらかといえば全体的に細身なんですよ。

 どんくらい細身かというと、20代の頃は、かの有名なジーンズブランド、エドウィンのウエスト55センチの硬めデニムがするんっ! と履けてしまっていた程度。

 (あ、大事なとこ書き忘れてた。

  日本人女性の標準ウエストは64センチです。)

 友人に「骨を折りそうで怖くて膝カックンできない」と言われる程度。

 善意で履かなくなったパンツ類を譲ってくださったお姉さまにそのダボダボの姿を見られて、「あんたそれどうなってんの?」と首を傾げられる程度でした。

 これで胸と尻があれば峰不二子ちゃんボディも夢じゃないんでしょうけど、残念なことにどっちもろくにないので、本当にただの痩せ型なんですよね。


 急激な体型の変化が起きたのは忘れもしない、三十路を迎える年の春先からでした。

 わたしね、胃下垂なんですよ。

 腸のすぐそばに胃がありまして、食えば食うだけあろうことか下腹が出るのです。

 でも時間が経つと消化して元通りなので、あまり気にしていませんでした。

 よくさぁ、テレビとかでさ、「いたたたた……」とか言いながらおなかの真ん中押さえてたりするじゃない。

 「胃が……」とか言って。

 あれ憧れなんですよねぇ、そんなとこ痛くなったことないもん、だってそこにないからさ、胃。

 それがよ、数年前の春先から、なーんか腹がへこまない。

 食ったら食ったまんま。ぽこーん。

 それでもあんま気にしてなかったんですけど、ある日わたしは気づいてしまったのです。

 ウエスト55センチが……入らない……!!

 いやあー、あれはショックでしたねー。

 まあどちらかといえば今まで入ってたほうがおかしかったんですけど、それでもショックでした。

 そんでさ、代わりに履けるものをとか思ってGUとか行ったらさ、ウエスト部分、ゴムが多いんだよね。

 どんな体型でも大丈夫! らくちーん!

 そんなんばっか履いてりゃそら戻らんわな。

 でもそこまではね、別にいいのよ、いや良かないんだけどね、問題はそこじゃないの!

 今はほら、冬だし、コート着たりするからまだいいの。

 でもね、これからあったかくなるでしょ、上着なんて着なくなっちゃうじゃない。

 薄着になるね。

 そうするとね、時々会うくらいの人、幼稚園のママさんとか、ご近所の人とか。

 聞かれるのよ。


「あれ、夏緒さんアナタもしかして……おなか大っきいの?

(意訳:もしかして腹の中に赤子が入ってる?)」


 はいってねえ!!!!


 入ってねえんだよ!!

 だから渋々言うしかないじゃない、

「違うんですー、ただのデブなんですぅ……」

 そしたらもうそこからお互い顔面蒼白よアナタ。

「ごごごごごごめんねえええええ、あんた腹だけ出てるからてっきり!」

「いやいやいやいやいやいや、こちらこそややこしい腹してましてごめんなさいいいいいいい!! なんも入ってないんですううう!!」

の合戦が始まるわけです。

 年に一回誰かとやってんだよね、このやりとり。笑

 こーれがねぇ、なんとかならんもんかな、と。

 まあこっそり面白いと思ってる部分も正直あるんだけど、相手の人に本当に申し訳ないしさ。

 運動か、運動しかないのか!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る