第4話:温かい家族

 家へと辿り着いた。

 家はそれなりに大きく、この周辺で一番大きい。

 樹は小さい頃から不便はしてない。家庭が裕福って事もあり必要な物は一通り揃っていた。


 菜月が家の玄関を開いた。


「お母さんお父さんただいま~!」

「おかえり~。ちゃんと連れてきたの?」


 そう言って玄関に迎えに来たのは、母である楓(かえで)であった。

 楓は樹の隣にいる天宮を見て声を上げた。


「……東さーん! 樹が女の子を連れて帰ってきたわよ!」

「樹が女の子をだと!? 本当か楓さん!」

「ええ、しかもものすっごく美人な子なのよ!」


 その瞬間、扉が開き父である東(あずま)が現れた。

 そして、樹と菜月の間にいる天宮を見て東は頷いた。


「楓さんの言う通りだ。物凄く美人な子だ」

「でしょ?」

「ああ」


 玄関で立ち話もなんので両親に紹介することに。


「父さんも母さんも落ち着け。こちらは同じクラスの天宮真白だ」

「樹さんの紹介にあずかりました、天宮真白と言います。この度はお誘いいただきありがとうございます。折角の家族水入らずの食事なのに私まで参加させていただいて……」

「いいのよー、こっちが誘ったんだから気にしないで」

「そうだ。それに可愛い子なら大歓迎だ」


 両親の言葉に天宮は「ありがとうございます」とお礼をする。


「立ち話もなんだ、天宮も中に上がってくれ」

「はい。それではお邪魔させていただきます」


 靴を脱ぎしっかりと向きを揃える天宮。

 流石、品行方正と言われるだけはあるな、と思いながらも自分も菜月もリビングへと移動した。そして、手を荒っているうちに料理が並べられていた。


「楓さん、私も運ぶのを手伝います」

「いいのよ真白ちゃんは手伝わなくても。そうね~、なら食べ終わったら洗い物でも手伝ってくれる?」

「わかりました楓さん」

「私のことはお母さんって呼んでくれてもいいのよ?」

「俺もお父さんって呼んでくれてもいいぞ」

「いえ。流石に……」


(おいコラ。二人して何言ってんだ。天宮が引いてるだろ)


 そんなこんなで夕食を食べ始めたのだが、両親と菜月がぐいぐいと天宮に質問をしていた。主に天宮との関係なのだが。


「それで? お兄ちゃんと天宮さんはどんな関係なの?」

「天宮とはただのクラスメイトだ」

「あんな時間の公園でただのクラスメイトなの?」

「ああ。そうだな」

「はい」


 天宮も首を縦に振って頷く。

 それを聞いた両親は顔を合わせ楓が聞いてきた。


「じゃあ、どうして二人して公園にいたの?」

「「…………」」


 無言になった二人に両親と菜月の三人は、何かを察したかのようにニヤついた。


「だからただのクラスメイトだって」

「ならなんで公園にいたことに対して説明を出来ないのかしら~?」


 それを説明できないからそう言っていたのに、と内心で愚痴る。

 誤解が解けないまま夕食が終わり、現在は玄関で天宮を見送っていた。


「真白ちゃん洗い物ありがとね」

「いえ。ご飯を頂きましたのでこれくらいは。それと今日はありがとうございました」


 軽く頭を下げて礼をする天宮。

 一人出て行こうとする天宮に声をかける。


「天宮、俺が家まで送って行く。もう外が暗いしな」

「いえ、大丈夫です。家も近くですのでご心配はいりません」


 だが、それに待ったをかける人物がいた。

 両親である楓と東、菜月だ。


「それはダメ。家が近くでも、だよ真白ちゃん」

「そうだ。帰りの夜道に女の子一人はいかせられない。どんな時でもいい、困ったら息子を使ってくれ」

「そうだよ真白さん! お兄ちゃんは便利だよ!」

 

 自分の兄を便利屋呼ばわりするはやめてほしい。


「ってことだ天宮。家まで送って行く」

「お言葉に甘えます。すみませんが樹さんをお借りします」


 こうして天宮の家まで送っていくことになった。三人ともやけにニヤニヤしていたのが気になったが……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る