印象に残る出会いを研究

仲仁へび(旧:離久)

シーン01 窮地にかけつける少女



 身を横たえた冬の地面が、容赦なく熱を奪ってくる。

 思考の流れが途切れ途切れになって、意識が浮上したり再浮上したり。


 自分の魂がどこかに連れ去られる様な感覚を味わいながら、俺は自分の体の下敷きにしてしまったのものを気遣う。


 せめて、こいつだけでも。

 

 助けを求めようとしても、声が出なかった。


 このまま消えていく定めなのかと、そう諦めかけた時。


 人の気配がした。


 体は動かない。

 だから、そちらの方を向く事は出来なかった。


 視線もうごかせない。

 かすんで、人どころか風景も碌に見えなかった。


 けれど、まだ耳は機能していた。


「貴方っ、大丈夫!」


 心配げな声が耳をうち、あきらめかけていた体の中に再び活力をあたえた。


「……れか、たす……」


 人の気配はどんどん近づいて来きた。

 そして俺の手に何かが触れる。


「大丈夫、もう大丈夫よ。絶対に助けるから」


 優しい、慈愛に満ちた少女の声。

 その声を聞いた途端。

 俺は、自分でも驚くほど、今までいっしにつなぎ止めていた意識をあっけなく放り出した。



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